今週は「集団的自衛権」を考えよう

 朝日新聞が11日、首相の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)の報告書の内容を報じている。
 政府に集団的自衛権の行使にあたっては「六つの条件」を設けるよう提言。具体的に、米艦船の防護やミサイルの迎撃といった「集団的自衛権行使が必要だ」とする10以上の具体的な事例も挙げている。
 集団的自衛権の憲法解釈変更は急ピッチ?
 一方、毎日新聞は「集団的自衛権 歯止めなくなる懸念」という「まっとうな解説」を書いている。反対意見も盛り上がりを見せる。
 さらに、その一方で、御用新聞の「読売新聞」の政治部長は、9日夜、ヨーロッパから帰国したばかりの安倍さんと「焼肉屋」で何やら密談した。
 どうやら、今週は「集団的自衛権のヤマ場」になる気配だ。
 でも、一般の国民は、それほど「集団的自衛権」に強い関心を示していない。
 何故か?
 それは、このテーマは難しすぎるからだろう。
 で、僕なりに整理してみた。
 国家は、自国の生存を守るため、自衛する権利(自衛権)を持っている。
 個別的自衛権は、自国に対する攻撃に対抗する権利。憲法の前文に「全世界の国民が平和のうちに生存する権利を有する」とあるから、平和憲法の下でも、認められる。
 問題は集団的自衛権。国会答弁での定義では「自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもつて阻止する権利」とされている。
 この定義をそのまま(正直に)解釈すれば、集団的自衛権は「外国への攻撃を阻止する権利」であって、これは「自衛の権利」ではない。
 憲法は第9条で「戦争を放棄し、戦力の保持を禁止」している。
 同盟国が「助けてくれ!」と言っても、この憲法の下では「同盟国自衛のため」と理屈をつけても「戦争」は出来ない。
 1973年、政府は国会答弁で「自衛権発動3要件」を示している。
 ①わが国に対する急迫不正の侵害がある②これを排除するために他に適当な手段がない③必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと。
 この3要件を政府は現在に至るまで、自衛権の発動として武力行使する際の要件にしてきている。「集団的自衛権」を明確に否定している。
 当然である。
 しかし、安倍さんは違う。安倍内閣の考え方は③の「必要最小限度」に重点を置くことで、①の「わが国に対する急迫不正の侵害がある」という条件がなくても、「必要最小限度」であれば集団的自衛権も行使できる、と解釈したいのだ。
 ことを難しくしているのは、日米安保条約の存在である。
 「集団的自衛権」は本質的に「相互主義」に基づかなければ行われない。
 NATOや旧ワルシャワ条約機構の例を取れば、NATOを組織するための北大西洋条約は「いずれかの国が攻撃された場合、共同で応戦・参戦する事」を定めている。
 これが典型的な集団的自衛権である。
 加盟国は、防衛される権利を得るかわりに、当然の事として、他の加盟国を防衛する義務を課されている。
 日米安保はこの「相互主義」にあるのか?
 はっきり言って、日米安保はそうではない。「片務的条約」である。
 アメリカは日本を守る義務があるが、日本には「戦力でアメリカを助ける義務」はない。(基地を提供しているが)
 つまり、集団的自衛権に相応しくない「不平等な状況」なのだ。
 安倍政権が進める集団的自衛権の解釈変更の本質は、日米安保を、実質的に集団的自衛権本来の「相互主義的な形」に変えることにある。
 朝っぱらから、長々と書いたが、今週は「集団的自衛権の週」。
 安倍さんは、アメリカと同等の「戦争が出来る国」になりたい。
 それが正しいのか?
 世界で一番、進歩的な平和憲法が正しいのか?
 今週、日本の行方が決まるような気がする。

<何だか分からない今日の名文句>
ご存知!「私的」諮問機関のカラクリ