タクシー立ち往生。凍える恐怖?

 14日の大雪。タクシーが立ち往生して、エラい目にあった。
 午後1時すぎ、東京駅からタクシーを拾った。この時、積雪は4センチぐらいだった。
 「スノータイヤにしているから、当分は大丈夫。それにしても、こんなに降るなんて」と運転手さん。
 休日なので、タクシーを拾うのが難しいという。「早く、帰宅したのは正解だった」と思っていた。
 両国橋西詰めに来て、様相が一変した。大渋滞である。両国橋に向かうクルマのタイヤが空回りして、次々に立ち往生している。
 当方は両国に向かう訳ではない。柳橋に向かえば良い。
 なんとか、渋滞をくぐり抜け、柳橋に向かう「狭い道路」に入った。すぐ、左に回ったら柳橋である。
 ところが……大変なことが起こっていた。
 一車線を占有したトラックがスリップして、動かないでいたのだ。
 4人掛かりで押しているが……ビクともしない。
 タクシーの運転手さん。バックしようとしたが、間一髪、間に合わず、後続のクルマが入って来て、万事休す。
 回り一車線にクルマ5台が立ち往生することになった。
 問題のトラックが動かなければ……どうなるのか?
 隅田川と神田川の合流地点である。風も強い。
 5分経ち、10分経ち……雪は激しく降り積もる。
 タクシーのメーターは1000円、2000円……。
 困った。本当に困った。
 仕事場には直線距離にして約250メートル。普通の健常者であればクルマを降り、スタスタ歩いて行けば良いのだが……右半身麻痺の当方、この雪では、歩けない。
 家人に電話したのだが、仕事場の前の道路で、当方の帰りを待っていたのだろう。繋がらない。
 連絡がつけば、車椅子を持って来てもらうおう、と思ったが、冗談じゃない、この雪では、車椅子は全く機能しないだろう。
 20分経つ。
 健常者には、とても想像出来ないと思うが、当方、タクシーごと雪に埋れてしまうのではないか?と思った。恐怖感で、理解力がズタズタになっている。
 仕事場の隣の吉田さんに電話をして、家人に「緊急事態」を知らせようとしたが、携帯は全く通じない。同じような緊急事態で、回線がパンクしているのだろう。
 僕は決断した。
 「250メートル先に、家人が立っている。それを連れて来てくれ!」
 「トラックが動き出したら、私のタクシーが邪魔になる」と運転手さん。
 「嫌、当分、動かない!これは掛けだ。いずれにしても、カネがないから、このままでは払えないぞ」
 「わかりました」
 運転手さんはタクシーをそのままにして、家人を探しに行ってくれた。
 約8分、運転手さんが家人を連れて帰って来てくれた。
 「さて、どうするか?」
 「浅草橋駅で別のタクシーを拾い、トラックの前まで来てもらい、お客さんを4、5人ぐらいで、背中に背負って、運んだらどうだろう」と言う意見もあったが……。
 「俺は歩く!運転手さん、俺の右の腕を持ってくれ!」
 雪がフワフワしていれば、倒れても大きな怪我にならない!と思った。
 この頃になると、運転手さんはタクシーのことなどすっかり忘れてしまったように「男気」を見せてくれた。
 怖かった。何度も、転びそうになった。でも、いざるように……20センチぐらいの歩幅で、慎重に慎重に歩いた。
 20分ぐらい掛かって、無事帰還!
 万歳!万歳!ちょっと、涙ぐんだ。
 健常者には分からないが……身体が不自由だと「最悪の事態」を考える。
 歩きながら「ここへ大地震がやって来たら」……なんて考えていた。
 大和タクシーの運転手さん、ありがとう!
 雪に弱い都民の皆さん、お気をつけてください。

<何だか分からない今日の名文句>
どこにも「道」はある