深作欣二監督の「小道具」

 10日午後5時頃、仕事場のある「東京・台東区」は一時間に100ミリの豪雨。雷が立て続け。
 ちょっと恐ろしくなった。
 外に出られず「急用が出来たので、今夜はダメだ!」とウソを言って、一杯やる約束をキャンセルした。
 嘘ついちゃって、城!ゴメン!俺、最近、臆病なんだ。
 若い頃は、槍が降っても、深夜まで、安い飲み屋にいたものだが……寄る年波、ということか。
 そう言えば、 同い年のみのさんから「古希のお祝い」の案内状が来た。みのさんなら、70歳でも、こんな日にも、銀座に行っているんだろう(笑)
 昨日、一晩で、読んだ「映画の奈落 北陸代理戦争」を、また読んだ。
 これは、名著だ。何度も読みたくなる。
 例えば、ココが良い。
 万谷 にじり寄り、かかえこむ様に、きねの足を抱く
 きね、思わず、ふりほどそうとする。だが、力まかせに巨体でのしかかる万谷 きねの胸許に顔を埋める
 きね あきらめた様に 力を抜き、目を閉じる
 高田宏治は脚本にこう書いたが、この本は、深作欣二監督は、このシナリオを以下のように直したという。
 万谷(ハナ肇)がにじり寄り、きぬ(野川由美子)は逃れる。その拍子に、ベットサイドの「星影のワルツ」のレコードがカーペットに落ちる。
 万谷が力まかせに、きぬにのしかかると、きぬの下敷きになった「星影のワルツ」のレコードが割れる。
 きね、はっとなり、割れたドーナツ盤をひしと抱きしめる。
 深作欣二は、レコードを小道具に使い、そこにはいない「川田」(松方弘樹。「北陸の帝王」と言われたヤクザ。きぬの昔の恋人。「星影のワルツ」が大好き)への“思い”を表現した……
 深作流の「女」の描写?それにしても、珍しい加筆である。
 この本は、こんな小さなことを、大事に大事に記録している。素晴らしい本だ。
 二日続けて、しかも、徹夜で、同じ本を読んでしまうなんて……

<何だか分からない今日の名文句>
ヤクザの一生も花火 映画人もまた花火