お袋の夢を見て、王子の蕎麦屋に

 6日朝、お袋の夢をみた。美味しそうに、そばを食べている。
 働き詰のお袋。旅行も行ったこともなく……趣味らしいことは?と言えば「きっちゃてん(喫茶店)で珈琲を飲むこと」。
 それに月に一度は、王子のお稲荷さんに出かけた。帰りに、必ず「王子の蕎麦屋」に寄って、セイロをお土産に、持ってきてくれた。
 独特の平たい蕎麦が「東京で一番好きだ!」と言っていた。東京は広いのに……そう思っていた。
 あの「王子の蕎麦」を思い出した。急に食べたくなった。
 お袋が亡くなってから 多分、20年ぐらい食べていない。しかも、その店の屋号も忘れたし……。
 でも、あの「王子稲荷の蕎麦」をもう一度、食べてみたい!
 そんな、メチャクチャな衝動に駆られ、ネットで調べて見た。
 稲荷に近い店と言えば……「越後屋」という店ではないか?
 野暮用先から、車に乗せてもらい、午後、王子本町の「越後屋」を探した。
 見つけた! しっかりした「昭和のビル」の一階。
 屋号に「無識庵越後屋」とあった。
 あの独特な「平たい蕎麦」だった。
 お袋は、一人で、奥の席に座って「花まき」(焼き海苔をもんでそばにふりかけたもの)を食べ、用意した「重箱」を出して「セイロを、いつものように三人前!」と注文したんだろう。
 優しいお袋だった。

<何だか分からない今日の名文句>
蕎麦のように、細く長~く生きよう!