早房先輩の「宰相と新聞記者の関係」を読む

 暖かくなった、と言うより、急に暑くなった。
 18日午後、サンデー毎日の「牧太郎の青い空白い雲」を書き上げてから、長野県のリゾート地へ。こちらは涼しい。
 新本、雑誌の類をリュックに詰めて、数日、滞在するつもり。
 ホテルについて、真夜中、ウイスキーの水割りを飲みながら「日本記者クラブ会報」を読む。
 届くと、必ず読むことにしている「書いた話 書かなかった話」。今月号は朝日のOB「早房長治」という方の「宰相と新聞記者の関係ーーわが懺悔録」
 経済部が長かった方のようで、1961年に朝日に入社しているから、5年以上先輩記者である。
 大平正芳、宮沢喜一、細川護煕の3人の総理大臣との交遊があったらしい。
 その早房さんの一文。「大臣クラスの政治家は、夜回りの時は平気でウソをつくが、朝駆けで朝飯を一緒に食べると、不思議なほど、素直に本当のことを話してくれる」とある。
 彼は100回以上、大平邸で、朝飯を食べたと言う。
 100回以上?凄い。僕なんて……そんな「努力」はしなかった。
 初めて「夜討ち朝駆け」した相手の「河本敏夫経企庁長官」は笑わん殿下で、ウソも言わないが、ほとんど、話さなかった。一度だけ「総裁選に出る!」と言ってくれたので、スクープしたが……ほとんどが「禅問答」に終わった。
 早房さんに、大平さんは「欧州の付加価値税を知っているだろう。日本に一般消費税として導入しようと考えている。君の意見はどうだ?」と話したと言う。
 凄い。本音を一記者に吐露する。そこまで、親しくならなければ番記者ではないのだろう。これが「本当の朝駆け」ではないか。
 彼は消費税反対だったが、大平さんは「消費税は命」と考えていたのだろう。導入を宣言。大平さんは選挙に負けた。
 その裏話が、猛烈、面白い。
 最後に、早房さんは「宰相に接近する新聞記者はフィクサーを目指す人も、単に特ダネを狙う人もいる。どちらでも構わない。しかし、権力との緊張関係をいささかなりとも失ってはいけない」と書いている。
 権力との緊張関係?それが、新聞記者という稼業の一番、難しいことなんだろう。
 この「書いた話、書かなかった話」の欄は、実に勉強になる。一冊の本になったら良いのに。
 日本記者クラブ会報は24ページの小冊だが、隅から隅まで読んでいたら、朝になってしまった。
 今、リゾート地の19日午前5時。これから「毎日フォーラム」の原稿に取り掛かるが、締め切りに間に合うかな(笑)

<何だか分からない今日の名文句>
逆に言えば
「夜討ち朝駆け」は権力者の世論操作?