中国社会を批判する莫言さんが受賞して

 中国人作家の莫言氏(57)のノーベル文学賞受賞決定。喜ばしい。村上春樹さんはちょっと我慢して(笑)来年、取れば良い。
 中国政府は、莫言氏を「最も影響力のある文化人の一人」と位置づけ、今回のノーベル賞を国威発揚の弾みにするつもりだそうだが……内心、複雑だろう。
 服役中の民主活動家、劉暁波氏が2010年のノーベル平和賞を受賞した時、中国メディアは決定を非難する外務省報道局長の談話を中心に報じ、NHKの海外向け放送は、関連ニュースになると画面が真っ黒になるなど報道が厳しく制限された。(「共産党一党支配」の国は恐ろしい)
 あの時、中国当局は受賞決定直後から法的根拠を示さないまま妻、劉霞さんに対する自宅軟禁。これがまだ続く。劉暁波氏の釈放を求める国際社会の要求にも応じる姿勢はまるでない。
 莫言氏はギリギリのところで中国政府を批判しながら、上手に生きてきた作家だ。しかし、いつ、亡命するか? 微妙な立場だ、と聞いたこともある。
 農村を舞台に力強く生きる人々を描く作風。代表作「赤い高粱」は年配から若者世代まで広く愛読されていたと言われているが、国内より、海外で評価されている。
 改革・開放政策下の農村の崩壊、「一人っ子政策」の矛盾など、当局が嫌がるテーマを選んでいる。
 ノーベル賞受賞、そして、中国政府がこの受賞を喜んだ実績? で、彼は、中国社会の「暗部」とされる問題を堂々と世界に知らせることが出来る。
 喜ばしいことではないか?
 これも、また聞きであるが、何度か、来日した「知日派」らしい。
 中国版ツイッター「微博」では、劉氏の平和賞受賞との比較で「政府は「劉氏の時は中国への内政干渉と抗議していたのに……、皮肉だ」という書き込みが目立った。
 欧米中心の「ノーベル賞の世界」に反発しつつ、その中で、認められてしまった喜び。実に複雑だ。
 その結果、権力批判のノーベル賞作家の影響で、行く行く「共産党一党支配」が崩れるかも知れない。
 日本人は「莫言のノーベル文学賞受賞」を祝福しよう。これは、ノーベル賞の選考委員が「大本命の日本人作家を抑えて、中国人作家を選び、中国の民主化を進める」ことに傾いた結果、と僕は推測する。
 村上さんは間違いなく、来年受賞だ!
 (「一人っ子政策」の矛盾は10日毎日新聞夕刊「牧太郎の大きな声では言えないが」で書いているので読んでくれ!)
 さあ、週末は秋華賞。ウキウキする。でも、来週、京都に菊花賞観戦に行くので、秋華賞は程々の勝負にするつもり。

<何だか分からない今日の名文句>
政治は政治、文化は文化