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第10巻埋字しりとり1句目 2003.008.12
猫帰り少し寂しき萩の月
<青い鳥>
俳句は短い詩型ですから、喜怒哀楽など、作者の感情はあまり表に出さないほうがいい、そう言いつづけてきましたが、この句は「寂しき」がいいですね。そして下5に「萩の月」、こう季語を据えると、抜群にいい。原句は、「猫帰り少し寂しき秋の月」で、下5は「秋の月」ですが、ここを「萩の月」として、とることにしました。「少し」というところに、自分の猫ではないけれど、帰ってしまった淋しさと、そしてちょっぴり安堵した気持ちが、実によく出ています。
母いつかをんなに帰り後の月 <寒太>
【寒太俳句噺(49)】
「俳句指導者講座」で講演したことは、すでに投句板に書きましたが、続きを少し。講演が終わった後の、懇親会のこと。ひとりの小学校の先生が近寄ってきて、こう言われました。「楸邨先生に、亡くなる前年に来ていただいて、俳句のお話をうかがったことがあります。87歳でした。いいお話が終わり、車椅子の先生を拍手で送り出しましたが、しばらくすると、また先生がひょっこり戻ってこられました。皆、あれ!!! 、とあっけにとられ注目していると、たったひと言、「みなさん、ほめてあげて下さいね」そう言い残し、また帰っていかれました・・・」
この話には感激しました。集いは、学校の先生方が、俳句に関心のある生徒に教えるための実作指導講座です。いい俳句があったら、うんとほめて、いいところを伸ばしてあげて欲しい・・・、そんな楸邨の願いでした。そのひとことを伝えたくて、わざわざ車椅子で戻ってきたのです。楸邨って、そういう人です。
さて、第10巻1句目「帰」の選考経過です。
最終選考に残った句には★、ほかに◎、○、無印、の4種で、予選結果を掲げます。
1)帰り来よ風たちし村の夏の野辺 <悠>
2)サラリーマン直行直帰今何処 <Chojiro〜>
○3)目くはせの帰る頃合ひ独活の花 <千絵>
4)手を合わす墓参の帰郷老いし母 <三和奴>
○5)星月夜帰らざる日に何故と問ふ <山法師>
6)夕焼けの小径帰りし兄妹 <釣人>
7)澄明な絵描きでありし南回帰線 <悠>
8)帰省子に山近づきてダルマさん転んだ <他石>
9)帰省子も今年は居らず老いふたり <DORA>
10)冬瓜や金帰日来サラリーマン <ルナ>
○11)北帰行父母眠りたる臥牛山 <遊俳夢>
○12)あさがほの蕾数えて母帰る <真砂>
○13)帰り道ひときわ赤き星があり <ゆらぎ>
○14)野分立ち追いつ追われつ帰り人 <章文駄>
15)迎え火や声姿なく父母帰る <風太>
16)送り盆帰去来だと子が帰り <sikinodesi>
○17)君帰る茄子の馬の蹄音 <TOPPO>
18)朝顔やほのぼの帰る真砂の句 <かっちゃん>
○19)父祖の地の星ふる里へ帰りけり <ゆらぎ>
20)退屈な帰燕のあとの駅ホーム <萌>
21)炎気あげ夕陽帰るや日本海 <ガス灯>
○22)花野より犬と子汚れ帰りけり <瑞葉>
○23)帰りたい帰れない故郷の青山河 <あや>
○24)海に生れ海に帰するや野分波 <美加>
○25)道に出で帰り待つ母の夕焼けて <かほと>
26)初秋の風の匂ひや帰り船 <ナガチャン>
27)野分過ぎ我がパソコンも帰り来る <DORA>
○28)帰り来ぬ母を待つ子や稲の花 <かめ>
29)CDを一枚持って帰省子よ <尚々>
30)ポンポンと西瓜たたいて帰り道 <七梟>
31)終戦日重荷下ろせし父帰る <おけら道人>
○32)少年に帰る日多し花カンナ <康ちゃん>
33)帰郷庭三百六十度の木槿 <寿々女>
34)帰り道しゃがむ女の手苧殻焚く <稚笑>
35)ケンカして帰る家路や長い影 <ぱろぱろ>
36)畦道を辿り帰るや桔梗かな <保母保>
○37)遠花火ポストまで行きただ帰る <たまご>
○38)行き帰りおなもみをまた二つ三つ <飯吻>
39)川幅を広ぐるがごと鮭帰る <弓人>
◎40)遠花火帰らぬ人の桐の下駄 <せつ>
41)枝豆をひとつ噛んでは帰宅待ち <四度>
42)病む友を見舞ふ齢の帰省かな <卑弥呼 >
★43)猫帰り少し寂しき萩の月 <青い鳥>
*原句は「猫帰り少し寂しき秋の月」。
44)蜩の鳴きて帰りの支度かな <emio>
45)送り火やジェットに乗りて父帰る <青空>
46)慰霊碑の枯れたる菊を換えに帰し <木果>
以上、選出句は46句でした。
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