編集長ヘッドライン日記 バックナンバー
2006.4月

4月20日(木) 中国に「宗教の自由」はないのか

 ホワイトハウスでブッシュ大統領と胡錦濤中国国家主席の米中首脳会談。世界の2人の最高権力者がサシで話し合うのだから、日本の新 聞も、もう少し紙面を割いて良いと思うのだが、それほどでもない。

 ひょっとすると、日本のメディアは「ロシアに代って中国が西側にとって最大の脅威になったこと」を認めていないのかも知れない。 BSSなどは、かなりの時間を掛けて、首脳会談の模様を報道。2人をハッキリ「2人の最高権力者」と呼んでいる。

 大日本は未だに「中国と同等」と思っているようだが、世界の認識は大分違う。日本は「アメリカの言いなりの国」と思われているのだ。 日本の意向はアメリカ次第、と舐められている。

 2人は、取りあえず「戦略的利益を共有している」と話したようだが、短期的には、摩擦が高まる経済分野で、胡主席が人民元の改革 継続を表明したから、まだまだギクシャクするだろう。しかし、である。昔のニクソンを思い出して欲しい。両国が突然、握手して世界を 分割統治することだってありうる。

 胡主席は米国内の「中国脅威論」に配慮して「中国は平和的発展の道に強く関与している」と強調し、ブッシュ大統領は会談後の記者会 見で「我々は台湾の独立を支持しない」。将来を見据え、お互いにサービス? したんだろう。いずれにしても、日本にとって、中国との 距離感は複雑になるだろう。

 それより、問題は「自由」がない、という事実である。日本のメディアは殆ど無視しているようだが、会見後の記者会見に紛れ込んだ、 ある女性が「中国には宗教の自由はないのか!」と叫び、法輪功弾圧の実態を暴いた。BSSなどはかなり詳しく伝えている。

 法輪功は、90年代初頭に中国で起こった精神的活動。創設者の李洪志という人物は気功師で「気」といわれる霊的なエネルギーを利用 し、また制御することによって健康増進をはかるという「教え」である。下腹部に「気」の霊的なエネルギーと威力を注ぐと「霊的な旋転 する輪」を植え付けられると説明する。

 現在、世界60ヶ国、一億人以上の愛好者がいると言われ、中国国内には7千万人が法輪功愛好者。その数は中国共産党員総数を上回っ ている。これは共産党に取って潜在的脅威なのだろう。

 96年、李という人物は中国を離れ、ヨーロッパやアジア、オーストラリアに向かい、その後、ニューヨークへと移住した。しかし、 中国では信者は増え続け、中国政府は法輪功の法的立場を剥奪し、書籍などの出版を禁止、99年には「迷信的で悪辣な誤謬を広めた」 として、李という人物を国際手配した。(アメリカは国際手配を無視している)

 その間、信者によれば、中国の国家テロリズムで、法輪功を愛好しているというだけで1692人が殺されたいうのだ。(2005年 4月現在)。

 もし、それが事実なら、21世紀最大・最悪の迫害だろう。米中首脳会談の場で、この女性は、その迫害を世界へ発信した。外国メディ アの中では、江沢民に取っては実に不愉快なことだった、と報じている。

 4月15日のことだ。国会裏の歩道で、法輪功の日本人メンバーが「弾圧の実態」を訴えた。が、殆ど、報道されたなかった。たまたま、 別の取材で、第一議員会館に向かう途中、この訴えを聞いたが、そこに展示された写真をみると、あまりに惨たらしいもので、見ることが 出来なかった。

 このグループがカルトであるかどうか、分からない。しかし、宗教(に類する活動)に加わっただけで、国家権力に殺されるなんて‥‥ 全体主義国家には、まだ恐ろしい側面が残されている。日本人はその実態を知るべきである。

 20日は、旅先の京都で「青い空 白い雲」を書き上げ、夜はそぞろ歩き。急激に寒くなった。4月の陽気は信じられない。

 週末から「連休前」ということもあって原稿ラッシュ。一日にコラムを2本は書かなければならない。とても日記を書く時間的余裕が ないので、ちょっと休載とする。ごめんなさい。(毎日新聞「大きな声では言えないが」サンデー毎日「青き空 白い雲」スポニチ 「おけら街道 トキの声」などは普通通り掲載するので読んでくれ。日記再開は5月8日更新です)素晴らしいゴールデンウイークを!
<何だか分からない今日の名文句

守るべきは「自由の海」



4月19日(水) 武豊とフナ寿し

 4時、栗東トレセンの競馬会館で起床。何か、鼻がまだヘンだ。前夜、橋田満(調教師会関西支部長)松永幹夫(前騎手クラブ関西支部 長)武豊騎手らと夕食をしたのだが、終わり頃、司会者が「武さんがフナ寿しが好きなので用意しました」と見たことのないものを紹介し た。

 フナ寿し?

 聞いたような気もするが、どんなものか分からない。豊がおいしそうに食べている。「大丈夫ですか?」と隣の人が聞いてきたが、何が 大丈夫なのか、トンと分からない。取り合えず「エエ、大丈夫です」と口に入れたら、臭い。臭すぎる。豊はニコニコ食べている。

 すしの起源は、塩漬けから始まる漬物(発酵保存食)だったと聞いたような気もするが、気のせいか、朝起きても、まだ臭ささを感じる。 豊って凄い、というと「近江の人は全員、食べる」そうだ。

 5時45分、競馬会館出発、5時55分、調教スタンド。6時から調教が始まった。8番ゼッケンをしたディープインパクトの天皇 賞一週間前調教。豊が乗った。全然、他の馬とは違う。前夜、豊と「ハーツクライと海外で対決」の話をしたが、国内では敵なし、 だろう。

 坂路調教を見てから朝飯。9時から厩舎見学。運営委員の中村均さんの馬房を見せて貰う。期待のコスモマーベラスは22日の土曜福島 のメイン「福島牝馬S」で走るという。本命になるらしい。買わなくちゃ。

 その後、池江さんの厩舎でインパクトを見る。報道陣がとうまきにしている。無理にお願いして、倅さんの厩舎で、愛馬ロックスピ リッツを見せてもらう。まだ、イライラしていたが、脚が戻っているので、続けて走らせることが出来るらしい。まだ、子供という感じは するけれど。

 診療所、乗馬施設など駆け足で視察して、午後1時、京都駅で解散。野暮用があるので僕は京都で一泊。

 例によって、知恩院前の新橋通り「清水」で、美味いものを食べたら、ここでも「フナ寿しはどうでしょう?」とオヤジに勧められ、 また臭さを思い出した。

<何だか分からない今日の名文句

湯浅のなれ寿し、近江のフナ寿し 津軽のハタハタ寿し

日本三大腐り寿し



4月18日(火) 「多様化」というペテン言葉

 スポーツ新聞を読むと、衆院千葉7区の補欠選挙が話題になっている。でも、誰が立候補しているのか、まるで分からない。「候補者の 訴え」なんて、誰も気にせず「お祭り騒ぎ」。共産党を始め、他の候補は当然ながら埋没する。

 自民、民主の対立軸が分からないと言うなら、どっちが勝っても大差ない。そう考えれば、他の候補にも、同じような「テレビの露出」 が与えるべきではないのか。それがクリアな選挙戦だ。

 今日は小沢VS小泉、昨日は幹事長対決、明日は女の闘い‥‥政策なんて無視した小沢小屋と小泉小屋の顔見世興行。有権者に「考えさ せない癖」をつけるための選挙である。まあ、今となっては、この風潮も仕方ないのだが「18歳の美人浪人生をホテルに連れ込んで、 酒を飲ませて××した議員」が、この選挙応援で一番人気があった、と聞かされると‥‥この国の行く末に哀れを感じてしまう。

 昨日に続いて、ホワイトカラー・エグゼンプションのことについて若干、書いておきたい。4月12日付けの日本経済新聞に「雇用多様 化へ法整備」という記事が載っていた。労使間の労働条件を決める「労働契約法」の制定に向け、労働政策審議会の労働条件分科会(厚生 労働相の諮問機関)が本格的な協議を始めた、という記事である。

 労働ルールを明確化することは当然のことだから「この本格的な協議は前向きの動き」と判断しても文句はない。問題は協議された主要 部分が「労働時間規制の除外」。つまりホワイトカラー・エグゼンプション導入なのだ。

 社員が自分の都合に合わせて、自らの労働時間を自由に設定できる。そうならば週40時間の労働時間にとらわれない。これぞ「雇用の 多様化」だ、と記事は評価する。しかし、そうだろうか。

 労働時間の設定はそれほど簡単なものではない。「嫌なら辞めてもらっても良い」という資本側と「仕事を失ったら、それこそ家庭崩壊」 というサラリーマン。その両者の力関係の中で「サラリーマンが自分で労働時間を決める」なんて夢のようなことが実現できるのか。

 世間知らずのマスコミ人は「本来、サラリーマンはその成果で評価されるもので、時間数の多寡で評価されるものではない」なんて言う が、それは建前だろう。この建前を前提に「雇用の多様化」という正論を展開するのは全く意味がない。そんな“正論”がサラリーマン社 会で通用するハズはない。

 「雇用の多様化」はペテン言葉だ。郵政民営化と同じようなペテン言葉だ。「多様化」と言いながら、高賃金(と言っても年収400万 円以上)のホワイトカラーのサービス残業を合法化し、まったく割り増し給与を払わないための「雇用の多様化」だ。

 選挙で何も考えない市民は、多分、この問題でも、何も考えず、資本側の言いなりになってしまうのか。日経という新聞は財界の言いな り新聞だ。そこをよ〜く考えて欲しい。

 午前中「おけら街道」を書き上げ、午後から新幹線で京都を経由して栗東トレセンへ。国道1号線沿いはまだ桜満開。綺麗だ。

 競馬運営委員のトレセン視察。委員8人に橋田満(調教師会関西支部長)松永幹夫(前騎手クラブ関西支部長)の両調教師、現騎手クラ ブ関西支部長の武豊騎手が加わって夕食。明日(19日)朝6時から調教を見学する予定。

<何だか分からない今日の名文句

○○化は「振り込め詐欺」ごとく也



4月17日(月) サービス残業を合法化する奴ら

 この日記の読者から、時々、気になるメールを貰う。山口市のTさんから「どうしても潰したい法律があります」というメール。気にな った。

 まず、書き出しの「牧さんはサンデー毎日の編集長時代、勤務時間が終了したらサッサと帰るような部下にはいい思いはしなかったと 思います」というクダリ。これはTさんの勘違いである。

 僕は「サッサと帰る記者」を高く評価した。サッサと帰る記者の方が一般的に「力量」がある。余裕がある。サッサと帰る記者なら 「遊ぶ感性」を持ち合わせるから、可能性が膨らむ。事実、僕も「サッサと帰る記者」だったと思う。(もちろん、ここぞと、という時は 一ヶ月も家に帰らなかったこともあったけど)Tさんのご指摘は大いなる誤解である。誤まってもらいたいぐらいだ(笑)。

 まあ、その誤解は脇に置くとして、Tさんが「潰したい」と思う「ホワイトカラー・イグゼンプション制度」は確かに危険な法改正で ある。これまで、日記で取り上げては居なかったが、Tさん同様、僕も腹を立てている。これは「悪しきアメリカ」の物まねである。

 この制度、簡単にいうと「一定の要件にあてはまる労働者(イグゼンプト)については、何時間働かせても、使用者は割増賃金を支払う 必要がない」という仕組み。資本側(権力側)に都合の良い制度である。

 すでにアメリカで実施されている。アメリカの場合、例えば、部下を2人以上管理している労働者で、年収が280万円程度以上であれ ば「イグゼンプト」とされる。アメリカの労働者の割がこれに当たる。「マクドナルドの副店長」が典型的なものとされるが、ハンバーガ ーを作ったり、接客をするという定型業務がほとんどであっても、アルバイトを管理監督していれば「イグゼンプト」になってしまう。 マクドナルドの副店長に割増賃金は払われない。

 経団連は、このアメリカの制度を日本にも導入しようと動き出したのが、多分、3年ほど前だったように思う。現在の公然と行われてい る「サービス残業」を合法化して、いくら長時間労働をさせても、コストが増えないカラクリ。権力側は通常国会での成立を目指している とも言われている。

 どうやら「年収400万円以上」というラインを考えているようだが、これでは、サラリーマンの3割が該当するだろう。Tさんが 「我慢ならない」と思うのは当然である。過労死、過労自殺の問題に苦しむ日本が何故、アメリカの真似をするのか。何度も、書いている が、日本は「合衆国51番目の州」になろうとしている。この問題は、時に触れて、書き続けるつもりである。

 (アメリカでは、集団訴訟が認められており、使用者が違法に残業代を払わないで裁判になるケースも続出している。これも勉強するつ もり)

 毎日新聞火曜夕刊の新コラム「大きな声では言えないが‥‥」に読者から幾つか手紙を貰った。好意的なものばかりでうれしい。中に は「似顔絵が似ていない」とか「鼻が大きいのですね」という感想もあった。そこで3回目は「鼻」について書いてみた。読んでくれ。

<何だか分からない今日の名文句

搾取するつもりが(外資に)搾取され



4月16日(日) アイフルの「言い訳」に大笑い

 14日は金曜日なのに珍しく多忙。午前中に原稿を書き上げ、午後、衆院議員会館で河村たかし議員。議員の民営化について意見交換。 「日本は平安貴族政治だ」と河村さんは決め付ける。面白い人物だ。一時間以内に終えようとしたが、彼の方が熱心で4時過ぎまで。

 いったん、仕事場に戻って、旅支度に変えてから、銀座「福臨門」で、信託銀行の会長さんの紹介で「アート引越しセンター」の寺田千 代乃社長と会食。千代乃さんは憧れの? 女性経営者。ディアタキオン、ディアチャレンジの馬主で、肩のこらない競馬話。結構、際どい 悪徳馬主批判も飛び出すが、その会話の中に、女性らしい感性を感じる。たまちゃんが加わって、盛り上がったところで、僕だけ退出。 東京駅から新幹線で、野暮用の小旅行。結構、忙しい。

 この日、金融庁が消費者金融大手のアイフルの国内約1900の全店舗に新規の貸し出しなど、一部業務の停止命令を出す。度を過ぎた 「取立て」が問題になったのだろう。まるでヤクザのような言動。「野放しで良いのか」という話は以前からあった。サラ金大手は3月 17日にテレビCMの一部自粛をして、お上のご機嫌を取ったが、ついに業務停止になった。摘発が遅れたのは、高金利のサラ金に財務官 僚が天下りしているからである。許して良いのか。週刊誌の報道に期待する。

 それにしても、アイフルの社長さんは「社員の指導が徹底しなかった」と言い訳。本当かしら。社員に「必ず取り立てろ!」と指導を徹 底したから、こんなことになったのに。笑わせるな! 高利貸しは大嫌いだ。

 土曜日は原稿。合間を見て、愛馬ロックスピリットを応援したが惨敗。日曜日は朝からTBSラジオ。皐月賞の話をする。大本命アドマ イヤムードに不安あり(結果は4着)と話したのは良かったが「それなら牧さんの馬券は?」と聞かれ、正直に「ショウナンタキオンで流 しました」と話してしまう。雨が降ればチャンスあり、と思ったのだが、良馬場のままでスタート。タキオン17着。恥をかく。

<何だか分からない今日の名文句

天下り、どうする、アイフル



4月13日(金) 朝日の拝金主義を笑う

 午前中、たいとう診療所。療法士(この名称も変わるらしいが)の大木さんから、4月からの医療費改訂に関しての若干の説明を受ける。 医療と介護の新たな“線引き”なのだろうが、ご多分に漏れず、かなりの患者の負担増になるような感じ。高齢者に年金収入のあることが 大前提。それでも間に合わなければ「タンス預金」を吐き出させる。そんなアコギなやり方? である。台東区には、年金を貰っていない 韓国の人も多いから、厳しい負担増になるだろう。

 日本人だって苦しんでいる。ちょっと前の朝日新聞は「治療代未払い急増 248公立病院で1.5倍」と報じていた。貯蓄残高ゼロの 所帯が昨年は23・8%。3年間に7%も増えている。生活保護受給所帯は105万所帯。まともに医療費なんて払えない日本人が多いの だ。小泉さんの格差社会主義は間違いなく日本を潰す。

 朝日新聞もようやく「格差社会問題」を批判するようになった。結構なことだ。何でもカネの社会を批判している。結構なことだ。

 ところが、である。ソコソコに良質な朝日新聞に、とても理解できないことが起こった。将棋名人戦の主催権をカネの力で毎日新聞から 横取りすると言うのだ。僕が毎日新聞で禄を食むから、朝日に文句を言っているのではない。あまりに紙面とかけ離れた「拝金主義」にあ きれ返って、大笑いしているのだ。

 ことの経過はこうだ。3月29日、突然、日本将棋連盟から毎日新聞社に対し「来年度以降の名人戦の契約を解消する」という通知書が 送られてきた。31日には中原誠永世名人ら連盟の幹部が毎日を訪れ「毎日さんに何も瑕疵はないけれど、朝日さんから、強い要請があり、 契約を解除したい」というのだ。

 名人戦は将棋界で最古の伝統、最高の権威を持つイベント。1935年に毎日新聞社が創設したものだ。一時、朝日新聞社の主催に移っ た時期もあったが、77年からは再び毎日新聞社の主催に戻り、将棋連盟と協力して運営してきた。これは毎日新聞の読者の誇りである。

 なぜ解消なのか。中原永久名人によれば、朝日新聞が高額の契約金や協力金を示し、名人戦を朝日新聞にもってくるよう強く要請した、 と言うのだ。その高い契約金については、週刊誌などで報じているが、ハッキリした金額は知らない。ただ、連盟が「これまでの付き合い」 を反故にしても良い、という数字なのだろう。

 30年前、朝日新聞と連盟の契約交渉が決裂した時、毎日新聞は、連盟が決裂を公表した後、復帰交渉に入った。その時も、朝日新聞に 通告したうえで、連盟と契約した。毎日はいつも紳士でありたい。(まあ、それが「お人良し」と言われる原因だけど)

 札束で名人戦を奪おうとする朝日。その朝日が、善人ぶった紙面を作るなって、お笑い草だ。

 この種の契約が解除されるのは、立ち上げたイベントが予想以上に大規模になり、その主催団体には荷が重くなった時。あるいは主催 団体に何らかの落ち度があった時だろう。そんなことは、今回の名人戦に関しては、まったくない。

 もちろん、企業が戦略的に、現在のスポンサー企業を上回る金額を提示するなどして、どうしても奪っていくケースもある。が、朝日に は、立派な将棋イベントがあるじゃないか。それで我慢すれば良いのだが‥‥名人戦が毎日と連盟の協力で「日本一」になっているのが、 我慢出来ないのだろう。

 毎日に代って、名人戦の対局棋譜を独占掲載するために、恥も捨て、30年間、毎日と連盟が努力・工夫した名人戦を1億、2億のハシ タ金で奪うなんて‥‥まあ、それほど、朝日新聞に「売り物」がない、ということか。嗚呼、情けない。

 午後「青い空 白い雲」を書き、夜はまた「寅さん映画」を見る。

<何だか分からない今日の名文句

新聞の品格ゼロ



4月12日(水) 偶然?に感謝する

 国際医療福祉病院三田で大山ドクターの検診。血圧126−60。すこぶる順調。

 待合室の前に座った人がサンデー毎日の「青い空 白い雲」を読んでいる。こんな偶然? なんてない。

 大体、待合室で新聞、週刊誌の類を読んでいる人は何人もいない。しかも、サンデーは文春、新潮の比べると残念ながら部数が少ない。 (その影響力は多大なものはあるが、部数は少ない)しかも、今週は235ページだから118分の1の確立で、僕の書いたコラムを読ん でいる。そんな場面にぶつかるなんて‥‥この1年半で「青い空 白い雲」を読んでいるところを目撃したのは総武線の中と、今回の2回 である。(不特定多数の人がいるところでは、という意味で2回。特定多数の場所では、数人の人が奪い合うように見ていた時もあったが) とにかく、これは偶然である。

 読んでいる人に「これ、僕のエッセイです。読んでくれてありがとうございます」と感謝の言葉を掛けるべきではないか。それが仁義で はあるまいか。饅頭を買ってくれた人間に「ありがとう」と頭を下げるのが、饅頭屋の仁義である。

 しかし、待てよ。それは饅頭の価値と経済的価値が饅頭屋と消費者の間で交換された時、行われるものであり、饅頭が消費者の口に入っ た時に、言う言葉ではない。

 悩む。第一、気持ちよく、読んでいる人にスットプを掛けることになったら、それこそ、マイナスである。当方の締りのない顔を見て 「こんなチンケな奴が書いているのか」なんてガッカリされたら‥‥とりあえず、読んでくれている人物を観察することにする。

 横顔を見ると、極めて知的である。50歳前後か。品がすこぶる良い。ゆっくり、ゆっくり、視線がページの上をなぞっている。丁度、 真ん中ぐらいだ。ここまで行けば、多分、最後まで読んでくれるだろう。安堵する。

 その途端である。彼がスクッと立ち上がった。名前を呼ばれ、彼は医療費を清算するためにカウンターに向かった。どうしよう。筆者の 僕が声を掛けるのは躊躇しているのに‥‥何も撚りによって、あの女、彼の名前を呼ぶなんて‥‥けしからん。

 僕が一生懸命、書いた作品なのに。消費者が饅頭を口に入れた途端、あらぬところから声が掛かり、慌てた消費者が饅頭を地上に落とし てしまったような「妨害」を感じる。もし、このまま「青い空 白い雲」を読むことを止めたら、どうしてくれるんだ。いつも「美人だな あ」と思っていたカウンターの女子スタッフを睨み付けた。

 清算が終った。かの人物は今後、どうするのか。目で追う。どうしたことか、彼は待合室の最後尾に向かった。そして、突然、立ち止ま った。どうするのか。僕は立ち上がって、彼の近くに直行した。すると‥‥彼は必死にサンデーのページを捲っている。そして、探し当て た「青い空 白い雲」を再び、読みだしたのだ。しかも、立ち読みである。涙が出そうだった。僕は、何も言わず、この人物に深々と頭を 下げた。

 毎週、毎週、どのくらいの人が俺のコラムを読んでいるか、不安でたまらない。この日記なら、毎日2000前後のアクセスがある。た まにだが、5000ぐらいに膨れたこともある。数字がそれを証明している。けして、大きい数字ではないが、確実に読んでいる人がいる。 それに引き換え、新聞、雑誌の「僕の読者」はいるのだろうか。どのぐらいいるのか、分からない。時々、誰も読んでいないのでは‥‥ 不安に思ったりする。でも、確実に一人、愛読者が居た。万歳! 何故か、ウキウキする。

 昼、例の表参道の街ダネ取材。八重洲口の床屋に行ってから、午後6時、六本木の洒落たイタリア料理で、年に一度の大山ドクター一家 と夕食会。明るい奥さまは美味い店を知っている。僕は恐れ多くも日本の医療を批判、センセイはマスコミ批判。痛いところ、よく知って いる。笑いながら、怒りながら、日付が変わる頃まで。例によって割り勘。友達付き合いの範疇に入った感じ。これも幸せではないか。

 ここ数日では温かい夜。越後の高田公園の桜が開花。「高田に一緒に行きませんか」と誘ってくれた床屋のT嬢は、里心がついたのか、 今時分、最終の新幹線と夜行を乗り継いで直江津に向かっているらしい。

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ついた餅より心持ち



4月11日(火) まり子と淳之介と「もう一人の女性」

 午後、衆院第一議員会館の廊下で「牧ちゃんじゃないかい?」と声を掛けられた。気がつくと、小粒のエネルギッシュ男・道新のナベ ちゃんじゃないか。20数年振りである。懐かしそうに「自民党本部が焼き討ちされた時、一番先に二人で逃げ出したよな」とナベチャン。 そんなこともあったけ。

 気が会った同士で、暇なときは自民党クラブの隅で競馬の話を良くしていたものだ。道新とは特別、抜いた抜かれた、のライバル意識が なかったから、どんなに親しくなっても、誰からも文句が出ない。だから、いつも笑いこけていた。

 そのうちに、僕が外務省担当になり、彼は札幌の本社に移って、音信が途絶えた。まあ、その程度の親しさだったが、どうして、ナベ ちゃん、ここに居るの?

 名刺を貰ってビックリした。彼、北海道新聞の常務になっていたのだ。「偉くなったんだ」と言えば「例の再販の問題で議員さんのとこ ろを門並み歩いているんだ」

 自民党の独禁法調査会が午後から党本部で開かれていた。議題は新聞の再販問題。新聞の宅配制度や同一紙で全国一律の価格を支えてい る「特殊指定」の見直しが大問題になっている。新聞業界に取っては死活問題。そこで、各地の議員に「ご理解」を得るために陳情してい るのだろう。ナベちゃんのような経営者には大事な仕事なのだ。

 幸せと言おうか、不幸と言おうか、大病が原因で、当方、サラリーマン的にはまったく出世しなかった。だから、この種の苦労とは無関 係。朝日の秋山クンも大変なのだろう。当方、一記者として、勝手に書き続けている。圧力もないではないが、仲間の支援で「自由な言論」 もほぼ確保している。幸せだ。ナベちゃんの苦労を垣間見て、思わず「筆一本の喜び」を感じてしまう。

 「こんど札幌に来たら、一杯飲もう」と言ってくれた。多分、出世したナベちゃんのおごりだろう。それも、また幸せではないか。

 国会からJRA。それから表参道。夕方、社に戻って、各所で雑談。仕事場に戻ると、水口義朗さんの「記憶するシュレッダー‥‥私の 愛した昭和の文士たち」が送られてきていた。

 水口さんは敏腕編集者(文藝記者というべきか)で「週刊公論」「婦人公論」「中央公論」「小説中央公論」で一時代を築いた人である。 渡辺淳一先生の「藪の会」で仲良くなった。(何故「藪の会」なのか、それは渡辺先生はお医者さんだから)何しろ、水口さんは人脈が豊 富で、強引に作家先生から「原稿」を持って来てしまう人だった。

 その編集者人生で、懇意になった作家先生の「秘密」を一挙、大公開、と言った感じの本である。一気に読む。面白い。例えば第一話 「吉行淳之介さんを巡る“おんなたち”」では、宮城まり子さんを初め「おんなたち」が次々に登場する。

 8時、NHK・BSで「噂の寅次郎」を見る。何度、見ても名作だ。大原麗子が離婚届を出す場面。これは墨田区役所の前でロケをして いるが、この辺り、日大一中の頃、隣の両国中の相撲取りの卵と喧嘩していた。懐かしいな。今は高層のホテルになっているので、この 場面、懐かしくて仕方ない。

 終って、窓の外を見るとかなり強い雨。また水口本を開く。実に面白い。

 今日のスクープ。読売新聞が上海領事館員自殺事件で、平成16年7月、内閣情報調査室は「わが国の機密情報が漏れた恐れがある」と 調査結果を上げていたが、当時の官房副長官(事務)が、小泉さんに上げていなかった。役人同士が「隠した方が良い」と隠蔽したのだろ う。これは大スクープ。でも、大手新聞、テレビは追いかけていない。何故だろう。

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多情多恨だから作家センセイ



4月10日(月) 「国のために死ね!」が宗教か?

 小沢さんが毎日新聞のインタビューで、靖国神社へのA級戦犯合祀(ごうし)について「そもそもあそこに祭られるべき筋合いではな かった」と明言した。小沢さんらしい喧嘩作法。対立軸を明らかにしたようだが、まともな意見だろう。

 自民党は、この発言にかなり神経質で、安倍さんが早くも「合祀、分祀は宗教法人・靖国神社が決めることだ」と反発した。

 しかし、安倍ちゃん、それが間違っている。どう言い逃れをしようが、靖国神社は断じて「宗教」ではない。靖国は国家機関だ。

 靖国神社は1869(明治2)年、戊辰(ぼしん)戦争の戦死者慰霊のために創設された東京招魂社が前身。79年に靖国神社に改称し た後、陸・海軍省直轄で、第二次世界大戦の戦没者ら「国事殉難者」を祭る神社として軍国主義の精神的支柱になっていた。簡単に言え ば「国のために死ね!」「戦死したら靖国で会おう」という“教え”である。それが証拠に、大空襲や原爆の被害者たち「戦争の犠牲者」 は一人として祀られていない。靖国は「国のための機関」であることは間違いない。

 宗教とは何だろうか。憲法第二十条・信教の自由には「信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特 権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない」とある。宗教を信仰する自由(信仰をしない自由)を保障し、国家権力の干渉を禁ず る、と日本国は宣言した。

 この条文は「国家権力の干渉」を避けるために作られた条文である。(キリスト教の布教のため、占領軍が主張した、という説もあるが、 それは別の機会で書くつもりだが)ともかく、国家権力がある宗教を後押ししたり、ある宗教を弾圧したりすることは出来ない。それにも 関わらず、靖国は特別な扱いを受ける。「国のために死ね!」という靖国の主張は、国家権力の最大の干渉である。これを“宗教の教え” と主張したとしても「宗教を信仰する自由」と対峙する“ヘンな教え”である。

 「宗教上の信仰」とは、絶対的存在(神、造物主、仏、宇宙創造者など)の教えを無条件に容認する人間の精神的行動を言う。国の意向 を無条件容認する事とは、明らかに違う。

 ところが、戦後、連合国軍総司令部(GHQ)は政教分離指令(神道指令)を出す。やむなく靖国は「宗教法人」に改組された。ことの 発端は全てここにある。

 宗教の仮面を被った靖国の曖昧さ。国家主義の杜の靖国なら「国のため死ね!」と命じたA級戦犯を祀るのは、理論的には至極当然のこ とである。しかし、それは、靖国に祀られた人々に取っては、あまりに理不尽な処置である。A級戦犯とされた人々は(戦争犯罪人である かどうかは意見が分かれることはあるが)間違いなく300万人以上の犠牲者を出した「戦争責任者」である。僕の友人の何人かは、父親 が戦死し、靖国に参拝していたが、A級戦犯が合祀されてから靖国神社参拝をやめた。

 小沢さんは「分祀は合祀を前提にしている言葉だ」と否定的な考えを示した上で、合祀問題の解決策として「事実上、合祀状態をなくせ ばいい」と話したらしい。つまり、合祀されている戦没者の氏名を記した「霊璽(れいじ)簿」からA級戦犯の氏名を削除するやり方なの だろう。

 それも一つの考えではあるが、僕はそれだけでなく、靖国が宗教法人に相応しいかどうか、これを議論しなければならないと思う。この ままでは、この問題は尾を引き、その度に、諸国から「内政干渉」とおぼしき攻撃を受ける。そんなことがないように、するのがリーダー ではないのか。

 靖国を全否定しているわけではない。全ての戦争の犠牲者が「銃を持つ、待たない」に関わらず、全員祀られ、国家主義を放棄する社に なることを願いたい。

 そうそう、初めに「小沢さんの喧嘩作法」と書いたが、小沢さんの本当の狙いは、靖国問題を持ち出して自民党と公明党の間にクサビを 打つことだろう。公明党は首相の靖国参拝を苦々しく見ていたのだから。本音を言えば、小沢さんは「靖国で公明党を引き戻す作戦」。 二大政党なんて言うけれど、残念ながら、公明党がキャステイングボートを握っているのだから。

 大きな声では言えないが、小沢さんは自民党から流れた○○の実態をよくご存知だから、攻め易いのかも知れない。

 午前中コラム「大きな声では‥‥」に「日本で最も美しい村連合」を話を書く。雨が降ってきたので、午後は仕事場に籠り、資料集め。

<何だか分からない今日の名文句

平和のリトルバーズ



4月9日(日) ブッシュの敗北

 フセイン政権崩壊から3年。新聞は「イラクは戦時下としかいえない状況」と書いているが、ハッキリ言って「ブッシュの敗北」である。

 今年に入って、殺害されたイラク人は1月に約600人、2月に700人、3月には900人に達している。米兵も3ヶ月で150人 ぐらい殺されている。内戦である。

 この日記で、何度か「ベトナムの二の舞になる」と書いたが、もはや「ブッシュの敗北」と言って良いだろう。

 ブッシュが言う「統一された国軍」とか「挙国一致内閣」なんて幻想である。アメリカには「内閣が出来なければ撤退する」と圧力を 掛けろ、という世論が強くなっている。ブッシュの敗北である。そんな事態になって(もちろん、アメリカにはイラク増強論もあるが) 日本はどうするのか。一度として、日本の意志で物事を決めたことのない「イラク対応」。そのツケがやって来ている。小泉さんはこれを 隠している。

 メディアは、特に民放各社は「イラクと小泉」を取り上げようとしない。刺客の小泉劇場は面白い、面白い、と報じ、ホリエモンは面白 い、と伝えるけれど、イラクのことについて、何も報じない。

 小泉さんは○投げ男だ。外交はアメリカに○投げ、経済は竹中(=アメリカ)に○投げ、世論操作は飯島に○投げ‥‥全て○投げである。 イラクは○投げされ、真実は常に報道されない。

 でも、中途半端のマスメディアだけが頼りではない。草の芽の反戦運動は続いている。例えば映画「リトルバーズ イラク戦火の家族た ち」の自主上映。日本のメディアが引き上げた後、イラクに残り、イラクの真実を写し続けた綿井健陽さんのドキュメント。123時間の 映像の中から、102分にまとめられた映画は、日本の各地で上映され「非戦の仲間」を増やしている。(DVDも出来たらしい)

 民主党の新代表・小沢さん「小泉さんは、戦争責任者を祀っている靖国に行くべきではない」と話したらしいが、問題はアメリカとの 距離感である。小泉さんよりアメリカ寄り、という見方もあるから‥‥。

 週末はゆっくり。桜花賞は格好の穴馬を探し出した。単騎の逃げ馬。一枠。初めて400キロ台に絞り、人気は9番人気。これぞ、穴馬 中の穴馬とウキウキして馬券を買ったのだが‥‥ゴール手前5メートルで力尽きた。でも、久しぶりに興奮。

 今週は皐月賞。今度こそ! やっぱり競馬は面白い。

<何だか分からない今日の名文句

平和のリトルバーズ



4月6日(木) 昔の名前の民主党

 民主党はどう見ても、一時代前の自民党。予想通り、お互い立候補宣言してから「降りろ!」「降りない!」の駆け引き。俺も黄門に なりたいとでも、思ったのか、羽田孜元首相が会談設定に現れたのには、思わず笑ってしまった。

 僕から見れば代表選の風物詩・河村たけしの方がまともだ。この辺りのことを「青い空 白い雲」で書く。

 夜、仲間とJR浅草橋駅近くの蕎麦屋。それから、浅草の「たんぽぽ」(「ひまわり」の姉妹店)。ママに納まっているジュンちゃんは、 このところ、男断ち、酒断ち。すこし、痩せたようだ。

 親友の一人、六本木のニコニコ野郎は韓国人ホステスさんとダンスをしてご機嫌。新しく知り合いになったミカチャン(男性)は礼儀正 しい好青年。脚を崩すこともなく、河合なお子の素晴らしさを強調する。また、良い友達が出来た。

 深夜は原稿。朝まで。そろそろ、民主党の立候補締め切りか、とテレビをつけると、テレビ朝日が「八戸せんべい汁が全国展開される」 と報じている。僕もせんべい汁大使の一人。協力しなければ。

<何だか分からない今日の名文句

口化粧は美徳



4月5日(水) クリントンと小泉さんの「余生」

 朝からTBSラジオの準備をして、午後2時収録。帰りに六本木事務所。4日、小倉競馬場長が散歩中に倒れて急死した。 開催が終わり、ホッとして散歩している最中だったらしい。JRAの柱になる人。残念だ。JRAの社葬?になったので、 目ぼしい幹部は小倉へ。同期の東京競馬副場長らも、小倉に向かった。

 だから、JRA六本木事務所は閑散。話し相手が居ないから、という訳でもないのだが、 たまたま時間が空いた高橋さんとホンの少し世間話。ソフトバンクの孫さんが、どういう風に競馬と関わりを持っていくのか。 この辺りが二人の共通の関心事だった。

 その後、出社。サンデー毎日の「青い空 白い雲」の担当デスクが隈さんから中根サンに変わった。 で、ご挨拶。中根サンは昔、タマちゃんの下で大学班の仕事をしていた若者。奴がもうデスクに出世したのか?

 感無量。時間の経つのは早いものだ。

 サンデーのコラム欄は今週号から、なかにし礼、村松友視、池田晶子が加わった。強力な布陣。 よく集めたものだ。山本編集長の力量?

 まあ、僕とは守備範囲が違うので、別段、負担にはならない。

 仕事場に帰れば、テレビは民主党代表選一色。小沢さんは話すのがヘタだから、選挙になると不利である。

 一つだけ、コツをお教えしよう。「ただ」という言葉を使いすぎだ。「選挙でも良い。ただ、話し合いを悪く言うのは間違い。 話し合いは民主主義の最大のルールだから」と強調した。「ただ」がまずい。 それを言うなら「選挙は避けられませんが、民主主義の大原則の話し合いに全力をつくします」と言えば良いのだ。

 「後よし言葉」というテクニックがある。「全力を尽くしていますが、納期には間に合いません」と言うより 「納期に間に合いませんが、全力を尽くしています」と話したほうがベーターなのだ。常に前向きで、言葉を終える。

 「ただ」という言葉には「言い訳」のニュアンスが滲み出る。(優秀な)政治家が使う言葉ではない。 小沢さんは堂々と「話し合い」で決めようと思ったのだから(それは誰の目にも明らかなんだから) 「話し合いは善」を至極、当然のように話すべきだ。どうせ、人間社会、話し合いで決着するのだから。

 もし、小沢さんが負けるとすれば、その原因は‥‥小泉さん、菅さんに比べ、 あまりに彼が口下手であることだろう。

 深夜、CBSを見る。クリントンの特集。クリントンはエイズ撲滅で全世界を駆け回っている。 ブッシュの親父と組んで、ハリケーンや津波でも人道支援の先頭に立っている。大統領を終えても、 ライフワークをハッキリと表明して、影響力を持ち続ける。エイズの治療薬の値下げをインドの製薬会社に申し入れた。 大統領を辞めても、米大統領は「僕だから出来る仕事」を持ち続ける。

 それに引き換え、日本の政治家は‥‥細川さんは今、何しているのか。海部さんは何しているのか。 総理大臣を辞めてから、一定の影響力を持っているのは中曽根さんぐらい。

 政治にロマンを持ち続けることが、日本の首相経験者には出来ないのだ。政治ではなく、魑魅朦朧の世界で、 疲れ切った奴ばかり。ただ、飽き飽きとして、引退するだけである。

 小泉さん、戦後3番目の長期政権。在職1807日。(因みに、僕は「中曽根政権1806日」という本を書いたから、 何か、自分の記録が破られたような感じ)

 昨今、小泉さんも「サッと引くのが良い」と言っているようだが‥‥。

 今日のガセ風?特ダネ。週刊新潮「危篤、自殺未遂説まで流れる小池環境相の病名」。発売より一日早く手に入れたが、 ああ、騙された。

<何だか分からない今日の名文句

口化粧は美徳



4月4日(火) 所有か、使用か

 仕事場の壁にくっついている本棚がギシギシ言い出した。ヤバイ!(「カッコいい」というのではない。「危険」という意味だ)

 本が入りすぎている。捨てなくてはいけないのだが‥‥思い切りが悪く、捨てられない。プレゼントされ、ペラペラと読み「後で 暇があったら読もう」と思っているのが、そのままになっている。多分、読まないだろう。

 どうしてもコレは読みたいと思って、本屋で買ってきた場合「何だ、つまらない」と直ぐ捨てるケースが多い。か「流石に、これは名著 だ」と思ったリすれば本箱の長期滞在者になる。そして、本箱は崩れようとしている。どうしたら良いんだ。

 午前中、300冊ぐらい捨てた。でも、これ以上、捨てるのは‥‥躊躇する。ああ、俺って駄目だなぁ。

 時代は「所有」ではない。「使用の時代」だ。デジタル技術、インターネット。持たないのが“強み”の時代なのに。生活空間は、いた るところに、ネット接続の情報端末がある。ものを持っている必要はない。捨てなければならない。「所有」ではなく、使えば良いのだ。

 でも、それが出来ない。所有することの安心感。「ネットはいつか故障する。それでも良いのか?」と思ったりする。

 時代遅れの人間なのだ。

 午前中に設計士の青年が、隣のビルの境界に関する資料を持ってきてくれた。役所の書類はまだ、ネット化されていない。だから書類は 残さなければならない、と思ったりすると、また窮屈なスペースが嫌になる。

 午後「競馬はロマン・GT編」を書く。デスクのたまちゃんは「4月から、毎週毎週、書く必要はありません」と言っていたが、春のG Tシリーズが始まっているので、何ら変わらない。

 夜、競馬仲間と一杯。例によって西新橋→観音裏。徳さんは歌がこんなに上手なのか。驚かされる。

 深夜、雑誌点検。月刊現代に魚住昭さんの「追及!耐震偽装問題」が載っている。本当の悪者は誰なのか。ヒューザーと木村建設は被害 者ではないか、という視点。実に面白い。

<何だか分からない今日の名文句

会うは別れの初め



4月3日(月) 「大きな声では‥‥」スタート

 出社。新年度で、何処も彼処も緊張している。若い奴に冗談が言えない雰囲気。やはり、人事異動は必要なんだろう。

 僕に関して言えば、4日付け夕刊から「大きな声では言えないが」というコラムが始まる。「ここだけの話」「キレ珠」の路線は変わら ず、権力が隠していることを、ズバッと書きたい。通称「実は大声」。いつものように、圧力じみたこともあるだろうから、結構、しんど いけれど、堂々と書き続けたい。

 第1回は「粋な人の迷セリフ」。書き出しに名画「カサブランカ」の名セリフを使いたいので、格安DVD(500円)を購入して、 記憶を確かめてみた。学生時代に見て、覚えておこうと思った、あのセリフ。間違いなかった。いつか、使ってみたいな、と思っていた が、やっぱり、そんな場面はなかった。俺って、モテないんだ(笑)

 「カサブランカ」並みのセリフで「平気のヘイ」で権力者が逃げよとするのに、マキ流でイチャモンをつけた。読んでくれ。

 今度のコラムから筆者の似顔絵が出る。「全員、そうするんですから」と言われ、渋々、OKした。こんなに「不細工な顔」だとは思わ なかった。ああ、恥ずかしい。

 夕方、ことしは、まだ花を見ていなかったので強風の中、深川・高橋と上野の山の桜を見にいく。三日月にピンクの花びらが舞う。散り 行く桜は大好きだ。倅が昇進したという知らせ。不忍池の近くの居酒屋で寒ぶりの刺身で、一人で一杯。春だなぁ。

<何だか分からない今日の名文句

4月の桜褪め



4月2日(日) 「負け街」が問題なのだ

 3日昼、風邪をこじらした知人の病気見舞いで、日本海側の某市へ。駅を降りて愕然とした。ひとっこ一人、いない。立派な商店街があ るのだがシャッターが閉まって、開いているのは約200メートルの間に、和菓子屋、薬屋、それに中ぐらいのスーパーだけ。街が死んで いる。

 もう一度、駅に戻って客待ちしているタクシーの運転手に「この町の繁華街は何処?」と聞くと「この辺り」だと言う。商店街を歩くし かない。約10分の間に、人間を見たのは一人だけ。自動車ゼロ。

 地方に行くと、必ず床屋に行くのが趣味? なので、薬屋に入って「床屋は?」と聞くと店番の老人が「ヘッ、床屋? この街には床屋 は‥‥かなり離れているところにはあるけれど‥‥。月の第一週は日曜、月曜が連休だからやっていない」。仕方なく、スーパーの1階 (と言っても2階はないが)の美容院に入る。「ごめん下さい!」と大声を二度出して、しばらくして店員が出てきて「シャンプー? 良 いですよ」

 ともかく、人々に活気がない。どうしたんだろう。30年前に来た時には活気があった。「レストランはある?」と聞くと、これも同じ 一階にラーメン屋があるだけだという。「‥‥だったら、みんな、何処に行くんですか?」と聞くと「道の駅ですよ」。国道沿いの「道の 駅」が唯一の繁華街なのだ。

 静かに静かに過疎が進んで、気がつくと(地元の人の認識は分からないが、僕から見れば)街は瀕死の重態。時代に乗り遅れ、死を待っ ているようだ。JRの列車だって、未だに手でドアを開けるんだ。

 地域格差がひどい。この市が中心になって、去年、町村合併が行われた。新しく生まれた市のハズレの方は、どうなっているんだろう。 合併で「小さな町の中だけの更なる過疎」が始まっている。無理やり合併させられた村は徹底的に過疎化される。もちろん、平成の大合併 は国、自治体の経費削減が目的だから、カネはさらに流通しなくなる。地方切捨て! でしかない。行政の垂れ流し、政治の怠慢が地方 イジメで、帳尻をあわす。

 政治家は、地域を「票田」としか考えない。小泉流の、アメリカ流の民営化で、東京だけが豊になり、しかも、その東京の中心地がすで に外資のモノになっている。大都会の「勝ち組・負け組」の問題より「勝ち街」「負け街」の地域格差が問題なのだ。それを指摘するべき 野党が、この体たらく。

 石原慎太郎さんが3月31日、大東京マラソン構想を発表した。もともと新聞社主催のマラソンに違和感を感じていたらしく、東京都 (つまり「お上」)が中心になってやりたいらしい。これまでの2月の東京国際マラソンと5月の東京シティロードレースを統一して、 参加者3万人の市民マラソンにする。コースは都庁→皇居→東京タワー→品川→東京駅→両国→浅草→銀座。要するに東京名所マラソン。 名所ごとにイベントをするお祭りマラソン。話題になる。

 しかし、首都圏には「青梅マラソン」という誇るべき市民マラソンがある。「青梅」が市民マラソンをここまで育てた。三多摩の活性化 の源でもある。この「青梅マラソン」は来年、この「大東京マラソン」と日程が重なり、泣く泣く2月4日に変更された。

 何でも「東京」が良いのか。石原さんは「新聞社のマラソンは大嫌い」のようだが、清貧の新聞社・毎日新聞社は「別府大分マラソン」 など地方の歴史あるマラソンを守り通している。(他の新聞社はどうか分からないが)商売ではなく、地域の核になるスポーツを守らなけ れば、新聞社の存在意味がない、というのが毎日精神である。その精神を無くすと、日本列島、なんでもかんでも「東京一極集中」になっ てしまう。その「東京」はすでにアメリカに蹂躙されているのだ。

 東京マラソンは来年の2月18日。そして、その頃、都知事選が話題になっているはずである(4月22日、石原さんの任期満了)。 まさか、東京マラソンは「慎太郎再選シナリオ」の一環ではないと思うのだが‥‥アメリカにNO! と言える政治家と期待した人もいる が、慎太郎さんもアメリカの尻馬に乗ったのかしら。

<何だか分からない今日の名文句

アリバイ合併より「地域ごころ」の団結