編集長ヘッドライン日記 バックナンバー
2004.12月

12月27日(月) 「人間」を大事にする、良いお年を!

 終日、原稿。競馬記者クラブの総会は残念ながら欠席。明日は御用納め。

 スリランカ巨大地震。津波で1万5000人弱、死ぬ。「災」の極み。いくら「神への挑戦」のような発明が続いても、自然の前ではお 手上げ。

 放火が続くドンキホーテ。環八世田谷店の放火を新聞各紙は模倣犯と見ているようだ。多分、警察がそう見ているのだろうが、もしかす ると、同一犯人ということもあり得る。となると、狙いは? 恨み、脅迫。店舗を人質にする新種の「誘拐」ということも考えられる。も ちろん、この場合、裏取引が存在することになるのだが。

 株価に注目。さいたま市の放火の前には6500円だったドンキホーテの株価は5000円を切った。20%以上の暴落。カラ売りして いた人物が居るとすると、大儲けだ。

 今年は金、カネ、カネの一年だった。プロ野球もカネ紛れになって、沈没寸前。ダイエーも、西武も、カネで身売りする。合併、身売り、 理由はつけるが、カネで「勝ち組」「負け組」がはっきりする。カネが敵の年の暮れ。

 年金、増税‥‥庶民の負担はさらに増え、拉致被害者も水面下でカネが纏わり付いている。カネ、カネ、カネ。

 そんなに大事なお金と比べて、人間の命は随分と軽くなった。イラクで何人死んだのだろうか。平気で、何人も惨殺する奴ら。日本人の 自殺は3万人を超えたままだ。

 命を粗末にする風潮を如何するのか。

 「人間」を大事にしよう。新しい年は、生き物の命を大事にする年にしたい。共生主義の年にしたい。せめて、人間を殺すな! 人間主 義の年にしたい。

 日記は、今年は今日で終わり。1月4日更新の「1月3日の日記」から再開するつもり。

 皆さん、良いお年を。

<何だか分からない今日の名文句>

目指すは「超〜にんげん主義」

12月26日(日) 大つごもり

 クリスマスイブ。サンデー毎日の忘年会に顔を出す。中堅の契約記者のN君が退社するので、送別会を兼ねてたものになった。N君は達 者な書き手。毎日新聞の正社員を目指して、入社試験を何度も受けたが、残念ながら、受からない。実績を上げた契約記者を優先的に入社 させても良いじゃないか。痺れを切らしたN君、ライブドアの入社試験を受けたら、一発で合格。退社することになった。

 残念だ。経営の判断は分らないではないが、僕だったら、柔軟に対応するのだが、残念である。江川詔子さんら執筆陣も参加して、楽し い宴になったが‥‥。

 25日のクリスマス。野暮用先から東京に戻って、六本木の麻布区民センター新派「大つごもり」鑑賞。水谷八重子が新派の当たり狂言 を朗読し、若手が演じる。

 この作品、樋口一葉が23歳の時(明治27年12月)「文学界」に発表した作品で、昭和に入って、久保田万太郎が新派のために脚色 した。

 「大つごもり」は大晦日のこと。今と違って、米や味噌を「付け」で買っていた時代。その年の勘定を一年の最後、大晦日にまとめて払 う。取り立てる方も、この日に回収しないと、次の年の大晦日まで、待たなければならない。

 そんな明治のシステムで、ドラマが始まる。道楽息子の洒落た人助け。明治の心、良いものだ。

 26日は有馬記念。愛する? コスモバルクの必勝を祈って4時前に起きる。TBSラジオで例によって予想。ゼンノロブロイが圧倒的 に強い。でも、心情馬券はバルク。「1、2着は無理だが、3着ならシルクフェイマス」と話す。

 結果は‥‥スポニチの観戦記を読んでくれ。そこでは、書かなかったが、7レースで穴馬券を的中。三連複11万馬券を300円持って いたので、久々の大満足。有馬記念も、バルクが負けて、がっくりしたが、フェイマスが予想通り、3着に来たので、収支はプラマイゼロ。

 夜、馬場詰めの「打ち上げ」に参加して、気の合う仲間と、寿司屋。朝4時から活動していたので、途中で眠くなり、一足先に仕事場へ帰る。

<何だか分からない今日の名文句>

時代は人情話で分る

12月23日(木) 面白いぞ、今年の有馬

 終日、年末の野暮用。午前中、水天宮から甘酒横丁。午後、日本橋三越。結構、盛況だ。 ボーナスが出揃ったか。

 喫茶店で見た某雑誌に「他人の給料袋」といったような企画が載っていた。つい、読んでしまった。

 どんな業種が高賃金なのか。この雑誌の調べでは第一位フジテレビ。次は日本テレビ。 上位を平均年収1300万円台のテレビ局が並んでいる。一時、給料が高いのは銀行員と言われたが、 銀行はそれほどでもない。構造不況産業に入りつつある感じがする。

 同業は? と新聞各社の年収を見ると、朝日、日経が1200万円台に並んでいる。 こんなに貰っているのか。我が毎日新聞は850万円。この雑誌は「毎日は名門の誇りで記事を書いているが、 給料の差が激しく、仕事のできる記者が朝日に移っている」と解説している。

 何に言ってやがる。確かに、1人、2人、朝日に行った同僚もいるが、給与に転んだ訳ではないだろう。 社風が毎日に合わず、退社する記者が居るのはごく普通だ。他の新聞社から逆に毎日に移籍してくる奴もいる。

 確かに毎日の給料は同業他社と比べて安い。仕事振りから見て、もう少し上がってもいいと思う。 が、中小を含めてサラリーマン全体の給与水準から見れば、丁度、中間に位置している。

 新聞を取ってもらっているお客さんに対して、かけ離れた高給を貰っては申し分けない。第一、平均1200万円の給料を貰って、 庶民の痛みが分るか。リストラにあったサラリーマンの痛さが分るか。嘘を書く小説家なら、庶民の苦しみを嘘で書けば良いが、 新聞記者は「事実」で書かねばならない。

 10数年前、サンデー毎日で「銀行員の給料は高過ぎる!」という特集をやって、話題になったが、正直なところ、 今では、報道関係、特にテレビ局の給料は高すぎる。正社員だけが高給を取り、下請けの社員が泣くテレビ界。おかしいじゃないか。

 まあ、他人の給料はどうでも良いや。それより、26日は有馬記念。菊花賞→JC→有馬記念の ローテーションの3歳馬は疲れが出て、苦戦するが、それを承知で、コスモバルクから入りたい。 こんなにハンデをものともしない頑張り屋を応援して、何が悪い。ケガのない分、安心して、買える。 バルク、頑張れ!

 ぺリエに負けるな。

 今年の有馬は面白いぞ。当日はスポニチに観戦記を書くつもり。

<何だか分からない今日の名文句>

無事これ名馬

12月22日(水) これは別件逮捕?

 東京専売病院で定期検査。前回の血液検査の結果は殆どの数値で合格。大山ドクターは「問題ない」と言ってくれたが、血糖値は相変わらず、正常値より幾分、高い。少し 歩く量が減り、体重が増えたのだろう。減食、減食の年末年始にしよう。

 大山ドクターにちょっとばかり時間があるようなので、混合診療のことで意見を聞く。彼も導入に疑問を持っているようだ。

 帰りに東麻布の例の美容院で散髪。イギリスに留学中の娘さんがクリスマス休暇で帰国中。オヤジ、すこぶる、ご機嫌。どちらかと言うと、無口なオヤジだが、ベラベラ話 す。目に入れても痛くない娘さん。確かに美人だ。「どちらに似てる?」としきりに聞くが、断然、奥さん似だ。

 オヤジの店に、最近、僕のファンが現れた、と言う。その女性、いつか会えるかも、と毎日新聞社あたりを散歩しているという。本当かしら。そんなこと、あり得ない。

 「で、色紙を貰ってやる、と約束した」と言う。冗談じゃない。色紙なんて書いたことはない。「嫌だ」と言うと「今まで、どんな有名人がお客さんに来ても、色紙を貰う ことなんてなかった。でも、今回は、あまりに健気なので、つい、約束した」と言う。本当かしら。

 年末のかき入れ時。「書け!」「書かない!」で押し問答。結局、奥さんまでが「書け!」と命令するので、恥ずかしいが「青い空 白い雲」と書いた。この間、初対面の 読売OBの方から「青い空 白い雲は絶妙のタイトルだ。天真爛漫という意味でしょう」と言われた。色紙なんて書いたことがないので、良く分らないが、一番、好きな言葉 を書くのがエチケットだろう。ファンという女性、下手な字でゴメンなさい。

 オヤジと押し問答している最中、奥さんが「菅原文太さんにも、色紙を頼んだこともない」と言ったので、文太さんがこの店の常連だったことを始めて知った。

 「何だ、パーマ屋、角刈りもするの?」と聞くと「職人だから」。ヤクザ映画、撮影中は、一週間に一度は切らないと、イメージが変わるので、大変だったらしい。

 ついでに、JRA六本木事務所へ。世間話の最大のテーマは「海老さまは、何時、辞める?」。タイミングを誤まった海老沢さんは、ますます、苦しくなるのだろう。側近 が悪いのだろう。折角、19日の特番「NHKに言いたい」で、辞任表明の舞台を作ったのに‥‥。

 夕刊特集のデスクと、一杯やろうと誘うと「今夜は、夕刊特集の忘年会」とのこと。今夜あたり、どこも彼処も、忘年会。やむなく、仕事場に帰り、資料の整理。サンデー 毎日のグラビアで、初めて「防衛庁官舎住居侵入事件」に判決が出たことを知った。いつも、テレビのニュースを見て、一応、新聞を見ているのだが、この「無罪判決」は 見落としていた。

 「立川自衛隊監視テント村」のメンバーが「自衛隊、イラク派遣反対!」のビラを防衛庁官舎の新聞受けに入れ、住居侵入容疑で逮捕された事件。住居侵入の構成要件には あたるが、無罪。当然だろう。いかがわしい商業ビラは刑事責任を問わず、まるで放置しているのに、イラク派遣反対なら、御用!

   たまらない世の中になったものよ。これでは庶民は何も言えない。

 逆に「自衛隊派遣大賛成!」のビラなら放置されただろう。警察権力の横暴。弾圧。戦前と同じことが行われている。

 裁判の結果なんかどうでも良い。要するに、派遣反対組織の実態を調べるために拘束したのだろう。別件逮捕のようなものだ。

 覚悟して、我々は言論を守らなければならない。それにしても、こんな大きなニュースを見落とした失態。反省しきり。

 深夜まで書き溜め原稿執筆。大分、元気になった。

<何だか分からない今日の名文句>

物言えば、唇寒くても 我、行かん

12月21日(火) 謎の来訪者?

 寒い。江戸通りを浅草の方に向かうと、北風と押しくら饅頭をしているような感じで、顔が冷たくなる。例年並の寒さが来るのか。冬至。 マフラーを忘れたことに腹が立つ。俺って、何をしても間抜けだ。

 蔵前デニーズで朝食。午前中は原稿。「ここだけの話」はイラクものを書き続けていたので、今回は気分を変えて、コスモバルクの話を 書いた。「ここだけの話」では、競馬のことは書かないつもりだったが、バルクは社会現象になるような気がして。スポニチの「おけら街 道」も「頑張れ! バルク」にした。

 毎日夕刊の「競馬はロマン」は、今回のテンポイントで「名馬と時代シリーズ」が終わる。新年からは「競馬ロマン大学」というタイト ルで行こうと、たまちゃんと相談。「競馬はロマン」のコラムはひとまず止めようと思っていたのだが、仕事に追われた方が精神的に楽で はないかと思ったし‥‥もう少し頑張るか。

 「テンポイント」を書いている最中、仕事場に突然の来訪者。初対面の男性である。

 「ここが、深川亭があったところですか?」と質問する。仕事場に入ってもらい、事情を聞く。来訪者は中村高等女学校の創設者・中村 清蔵さんの一族で、鎌倉に住んでいる人物である。以前は東京・深川に住んでいたが、戦災で家をなくしたらしい。由緒ある家の歴史を記 録した写真、資料も焼けてしまった。ところが、北海道に嫁いだ妹さんの元に、父親の結婚式の写真が残っていることが分った。

 その写真に「明治41年、深川亭で」という文字が入っていた。当時、結婚式は自宅で行うのが普通。結婚式場もなかった。どんなとこ ろで、式を上げたのか、興味を持ち、今年6月、仕事をリタイアした、この人物は「深川亭探し」を始めた。

 墨田区の図書館で「深川亭」がどこにあったのか、調べたが、どうしても分らない。司書に相談したが、分らない。

 10日ぐらい経ってから、その司書の方から「毎日新聞の人が何かに、書いていることが分った。深川亭は深川ではなく柳橋にあった。 薩長の役人は店に入れない、と書いてあった記憶がある」というのだ。

 そこで、捜し歩いて、やっとここを見つけた、というのだ。

 「確かに、明治41年には、ここで営業していたようです」と答えると、来訪者、うれしそうだった。しばらく、雑談。深川の歴史を研 究されている様子で、イロイロなことを教えてもらった。

 例えば「下り米」‥‥待てよ、これから先は、原稿のネタになりそうなので残しておこう。良い知り合いが出来た。

 ちょっと、落ち込んでいたが、来訪者のお陰で楽になった。

<何だか分からない今日の名文句>

過去探しは自分探し

12月20日(月) 無題

 年に1、2度、自分とい自分が、嫌で嫌で‥‥どうしようもなくなる。頭を壁に打ち付けたくなる。その衝動が収まると、終日ボサーッ。 原稿が書けない。

 夜、誘われて、西新橋の「はなわ」の「ブリの会」に出かける。お客さんに北陸の人がいて、この季節、ブリを一匹、送ってくれるらし い。そのブリを刺身にして、焼き、ブリ大根に料理する。

 集まったのは30人ほど。エリート官僚、エリートサラリーマンが目立つ。僕は新参。上手く、話の輪に入れない。

 「はなわ」の女将、一級栄養管理士? に合格したらしい。おめでとう。

 帰りに4、5ヶ月ぶりに「ひまわり」に寄る。満員。下町の職人風がカラオケ合戦。いつもと同じ「ひまわり」。

 帰って本棚から「構音訓練のためのドリルブック」を引っ張り出し、朗読の練習。もう一度、自立の努力をしようと思う。

 人間って弱い。せめて、中身だけはしっかりしなければ‥‥。

<何だか分からない今日の名文句>

頭巾と見せて頬かぶり

12月19日(日) 新星・徳重聡

 野暮用先で、年末の“書きため”。寸暇を惜しんで、高村薫原作の映画「レディージョーカー」を見る。よく出来上がっている。

 <レディ・ジョーカー>と名乗る5人。川崎競馬場で知り合い、親しくなった5人は小さな薬店の老店主、中年のトラック運転手、韓国人 の信用金庫職員、町工場の若い旋盤工、下積みのノンキャリア刑事。トラック運転手には、重度の障害をもったレディという12歳の娘が いた。

 薬屋の老店主(渡哲也)の兄が、昭和20年代後半、差別部落出身者であることを理由に最大ビール会社を解雇された。月日は流れ、平 成16年、今度は老店主の孫が、このビール会社社長の姪と恋仲になったところから、物語が始まる。差別部落出身の理由に交際をやめさ せられた孫は駆落ちしようとして、オートバイ事故で死ぬ。理不尽な差別‥‥。恵まれぬ境遇を生きる5人が、それぞれ異なった動機で犯 行に参画し、最大手のビール会社社長を誘拐する。社会的強者と弱者、理不尽な差別、「岡田組」という裏社会‥‥。 「人間であること、 政治的でないこと 極端に貧しいこと」と言う言葉が何度も出てくる。この共通点で結ばれた<レディジョーカー>である。

 この作品は実際に起こった「グリコ・森永事件」を下敷きに、高村さんがサンデー毎日に連載したものだ。その後、大ベストセラーにな った。サンデー毎日で、この原作を担当したには広岩君。毎日新聞大阪本社の辣腕事件記者だった彼がサンデーにやってこなかったら、< レディージョーカー>は生まれなかっただろう。彼の経験が随所に生きている。犯行側の心情と動き、被害者企業内部の混乱、捜査陣の執 念、警察機構の組織的矛盾を絡み合せて見せてくれるが、収穫は“執念のデカ”を演じた徳重聡である。どんな役者なのか、分らないが、 新人なのだろう。素晴らしい演技だ。個性派でありながら、どこか「優しさ」を持っている。ひょっとすると、スターになるかも。

 ドラマは川崎競馬場の「クリスマス・ステークス」が終わり、夕方、カネに困った中年男がレディジョーカーを捨てるところで終わる。 競馬場に雪が舞う。どうやら5人は手にした20億円をまったく使わなかった‥‥。

 そうそう、今週は有馬記念だ。

<何だか分からない今日の名文句>

飢餓海峡

12月16日(木) 戦争を知る人、知らぬ人

 親戚の不幸。告別式にも出るので、深谷駅前のホテルで朝を迎える。前の晩、通夜が終わってチェックイン。街で一杯、と思って、駅の 周辺(ここが一番の繁華街と聞いたが)を歩くが、閑散としている。居酒屋を覗くと客がいない。まったくいない。ちょっと、不気味で次 の店を探す。50メートル先に赤提灯が見える。そこも覗くと、ここもガラガラ‥‥という具合で、どこに行っても、寂しいのだ。

 店に入る勇気がなく、駅前のローソンで弁当を買う。何か、冷え切っている感じ。別にここだけではなく、地方都市の夜の街は、どこも、 火が消えている。景気が良い、というのは嘘ではないのか。東京だけで、全体を語ることは出来ない。

 告別式は隣の町・籠原の寺。籠原地区は区画整理が行われ、畑がベットタウンになっていた。この寺の檀家が、160軒から400軒に 増えた。だから立派な会館が出来ている。住職の稼ぎで会館が出来た。今、駐車場にしているところが墓になると、また坊主丸儲け(失礼) と言うことになるのか。

 ともかく、昼間の街には活気がある。ちょっと離れただけで、地域の隆盛・沈滞が違うような気もする。

 故人は大正、昭和、平成を生きた92歳の女性。大往生だった。故人が通った三ヶ尻小学校を見に行った。彼女の家から約1・5キロ。 あたり一面、畑だったところが新興住宅地になっている。生徒が急増し、校舎はものすごく立派になっていた。道路を越えて隣の中学校の 敷地は周囲800メートル。ちょっとした短大のスケール。野球場もある。

 小学校の裏手に、八幡神社の森がある。近くに空軍の飛行場があったので、第二次大戦ではB29がやって来て爆撃を繰り返した。

 葬儀に参加した約3分1は「B29が来ると小学校から裏山に非難した」経験がある。戦争が終わると駐留軍がやってきて、村は変貌す る。そんな話をして、告別式を待つが戦争を知る人と、知らない人の価値観は大分、違う。

 この辺りでは「町内」のことを「郭」とか「組合」とか言うらしい。式の終わった後、「組合の長老」の司会で返杯。長老は現在停止中 の「掲示板」の常連だった「老兵さん」。彼にそそのかされて、短いスピーチをした。

 夜、仕事場に戻ると「妻・節子がなくなって気持ちの整理が出来ないまま、四ヶ月がすぎました」と田原総一郎さんから、喪中のはがき。 「2005年は戦後の還暦。新しい時代への決意を二人で示めそうといっていたのですが、それが出来なくなりました」とあった。

 深夜、グーと冷え込む。

<何だか分からない今日の名文句>

戦争は死生観を変える

12月15日(水) ハックション!大魔王

 朝起きると、十回ぐらいハクションをする。水鼻が出る。ああ、情けない。一種のアレルギーなのか。ちょっと、気温が変わったとこ ろに入ると、ハクション、ハクション! 頻繁に鼻をかむのて、鼻の頭が赤くなる。ああ、情けない。

 一日中、必死で、それこそ鼻水紛れで? 原稿。

 親戚に不幸があったので、夕方、熊谷へ。92歳の大往生。通夜の後、そのまま、深谷駅前で一泊。

<何だか分からない今日の名文句>

いつの間にか、冠婚葬祭だけの「親戚」

12月14日(火) NEET勘当術?

 午前中、たいとう診療所でリハビリ。月2回のリハビリ。次回の28日は野暮用があるので、今回が少し早いが、ことし最後。「良いお 年を!」と挨拶する。年の瀬だ。

 キッチン・ジローでオムハヤシ。若い時、この店の濃い味噌のトン汁が好きだったが、年齢的にちょっと重い感じで、殆ど行かなかった。 突然、気が向いたのは原稿が溜まって、エネルギー不足を感じたからか。

 このまま出社する。社会部の労働・環境担当のベテラン編集委員に会ったら「来春、退社して、大学の先生になる」とのこと。わが社に は痛手だが、学究肌の人物だけに、あるいは適任かもしれない。

 出版局に顔を出す。このところ、サンデー毎日の売り上げが少し上がっているらしい。同慶。廊下で、早稲田の新聞学科の同級生にバッ タリ会う。十年以上前に大手出版会社から独立、編集プロダクションのような会社を作っているらしい。「企画を持ってきたところ」と言 う。「毎日新聞の損をさせる企画じゃないのか?」と冗談を言いながら、しばらく雑談。

 「セガレがNEETで困ってるんだ」と彼、真剣にこぼす。仕事もしない、学校にも行かない。目的がない。「何もしないので、家から 出て行ってもらったが、アパートのライフラインはオヤジ持ちなんだよ」という。

 何という、だらしないオヤジだ! と思うが、この種の若者は数多いのだろう。

 「NEET勘当術」という本を出したらどうだ、と提案する僕。「なるほど」と彼、本気で検討すると言う。

 競馬仲間が病院からお許しが出て、久しぶりに飲めるというので、一緒に、と思ったが、原稿がつまり断念。仕事場で、ビールをちびち び飲みながら、懸命に書く。

<何だか分からない今日の名文句>

「瓢箪から駒」の出版社

12月13日(月) 問題は長寿?

 月刊誌「DECIDE」に面白いレポートが載っている。日本大学教授・小川直宏さんの人口問題論。「人口問題の基幹は少子高齢化で はなく、長寿高齢化だ」というのだ。

 日本は10年1日のように「少子高齢化社会」を嘆いていたが、もはや、少子化は行くところまで来て、これ以上、進むことはない。

 それに引き換え、長寿化は2005年から2010年に掛けて飛躍的に進む、というのだ。少子化で高齢化社会の弱さが進むのではなく、 長寿によって、社会のシステムが変わる。

 年金ひとつ取っても、支える子供たちが少なくなって破綻するのではなく、みんな、死なないから破綻するのだ。なるほど、なるほど。 100歳前後の人がうじゃうじゃいる。そして死なない。長寿問題は21世紀最大の課題だ。

 ユニークな「DECIDE」は83年創刊の会員誌。創刊のころ、頼まれて、政治ものをこの雑誌に書いていたのが縁で、毎号、送って くれる。最近は、お得意の中国もの以外にも、面白いネタが多くなった。

 「ここだけの話」はもう一度、イラク問題を書きたかった。書かねばならぬ、と思った。夜中、何度も、書き直し、書き直し、未明に脱 稿。ストレートに本音を書いた。また、一部に批判が来るかも知らないが、きちっと書いておかねばならない。新聞は時代をデッサンする 勤めがある。

 少し寝て、午後2時半、島倉千代子さんと会って、その後、JRA六本木事務所。例の薬物混入事件を15分で取材。その後、イラクで 壮絶な死をむかえた橋田信介さんの未亡人・幸子さんをインタビュー。夜、みなみこうせつさんのコンサートに誘われていたのだが、橋田 未亡人のインタビューがとても興味が深く長引き、間に合わなかった。こうせつさん、ごめんなさい。

 その間、携帯、Faxで原稿依頼2件。ちょっと忙しい一日だった。

<何だか分からない今日の名文句>

貧乏ヒマなし

12月12日(日) 「運命の人」

 10日金曜日、文藝春秋を朝一で購入。一月号から連載を始めた山崎豊子「運命の人」を読みたくて‥‥前作「沈まぬ太陽」から5年、 「大地の子」から13年目の大作である。

 「運命の人」の主人公・毎朝新聞政治部記者・弓成亮太にはモデルがいる。昭和46年ごろ、毎日新聞外務省キャップだった西山太吉記 者である。

 西山先輩は、外務省人脈に独自の人脈を持ち、特ダネを書きまくる敏腕記者。沖縄返還の取材合戦で圧勝した人だが、ある日、外務省女 性事務官と共に国家機密漏洩罪に問われ逮捕される。女性事務官から、極秘メモを入手して記事を書いた疑いだった。

 沖縄返還の影に隠れた疑惑を追っていた西山先輩が逮捕され、毎日新聞社は「言論弾圧」と紙面で抗議するが、当局は二人の関係を「情 を通じ」と発表した。騒ぎは、一転して「言論弾圧」ではなく、不倫騒動にスリ替った。

 毎日新聞は世論の標的になり、苦悩する。その頃、新潟支局から東京本社に異動したばかりの僕は、ただ、何が起こったのか、ドキドキ、 ワクワクしていた。

 やがて、毎日新聞の不買運動も、一部地域で行われ、それだけが原因ではないが、毎日新聞は事実上、倒産する。ボーナスが8万円しか 出なかった。

 若い、20代の僕は、権力に立ち向かうことの恐ろしさを実感した。西山先輩は社を去った。

 山崎豊子さんはこの「外務省秘密漏洩事件」を徹底取材して書き始めた。なかなか、読みでがある。この人は大平さんのことだ‥‥と言 った調子で、登場人物を探すのが面白い。

 山崎さんは元毎日新聞学芸部記者。出世作「白い巨塔」はサンデー毎日で連載した。Oさんという記者がデータを集めたので形になった。 ライターと記者の共同作業。今回は、誰が、取材の核になったのか、興味がある。

 彼女は「国家権力と闘った新聞記者の悲劇と静かな怒りを込めて書いていきます」と話しているそうだ。

 週末は野暮用を兼て、オヤジの墓参り。ついでに、ちょっとした取材。レースウイングの阪神のレースはテレビ中継に映らなかったので、 何着になったのかも不明。残念。

 来年3月まで走れるのか。フェザーレイも休養に入ったので、2歳馬・ロックスピリットのデビューが待たれる。

<何だか分からない今日の名文句>

「第4の権力」は脆い

12月9日(木) 「らいおんは〜と」は嘘つきハート

 イラク自衛隊派遣延長問題。多くの人が無関心、あるいは無関心を装っているが、これを放置するわけには行かない。朝のテレビは予想 されたように北朝鮮拉致問題一色。これも大事なことではあるが、それは「途中経過」と考えることも出来る。自衛隊派遣延長は、待った なしの選択である。

 朝から、机にかじり付いてサンデー毎日の「青い空 白い雲」を執筆。愚鈍と思われても、イラク派遣の「嘘」を書く。

 小泉内閣メールマガジン167号。小泉さんはイラクについて、今、どう書いているのか。覗いてみる。例の「らいおんは〜と 小泉の メッセージ」。今回は北京のリンゴの話だった。

 青森の農家が国内のリンゴ価格暴落で、仕方なく中国に輸出したら、北京のデパートで2000円で売れている、という話。ピンチをチ ャンスにーーという結構な話である。(中国人の経済力? そんなに豊かな中国に、これ以上、ODAを続けるべきなのか。国内の農産物 市場は、今、どうなっているのか‥‥と、もっと幅広く言及するべきではあるが)テーマとして、なかなか読ませる一文である。これはこ れで価値がある。

 しかし、この時期、12月14日の自衛隊派遣延長の期に、イラクについて首相が言及しないのは、やはりおかしい。(「防衛庁長官の 視察」が載っているが)最高責任者の決意が乗っていないのは、おかしい。

 これは「嘘」である。触れないことが、犯罪ではないか、とまで思う。

 それにしても、民主党はどうしているのか。社民党はどうしてしまったのか。みんな他人事だ。

 夕方、来訪一組。例のジャパンカップの新聞広告になったメジロマックイーンのパネルが、届いたので、来訪者につるしてもらう。今井 おばさんの作品。素晴らしい。

 社台からお知らせが来た。牝馬は「6歳3月」まで走れる、という話。1999年生まれのレースウイングは、来年3月まで走れること になる。12日の阪神で出走を予定しているが、どうやら、これが引退レースにはならない様子。3着までに入ってくれ。3連複で勝負す るから。

 疲れたので、早寝したら、脚がつって目が覚める。寒くなったのだろう。日記を書いて、またベットに潜る。

<何だか分からない今日の名文句>

今、沈黙は犯罪

12月8日(水) 北朝鮮で「イラク」を隠す

 午前中、銀座へ。鳩居堂で手帳を買う。315円。片手が不自由なので、ポシェットをポケット代わりにしているのだが、実は、ちょっと 薄手のものを買った。その方がカッコがいいと思ったのだ。しかし、財布、その他こまごまとしたものを入れると、毎日新聞社から支給さ れた手帳は厚すぎて、ポシェットに入らない。カッコか、実用か。悩む。

 そこで、仕方なく一番薄い手帳を買い求めた。毎日手帳は「日本一の手帳」なのだが‥‥(実は「毎日手帳」は一般に販売しても、ヒット 商品になると思っているぐらいなのだ)

 「かねまつ」で、正月に配る「干支の手ぬぐい」を買う。来年の干支は酉。絵柄が一種類だけだが、可愛い。これ、毎年、好評。何とな く、暮れの慌しさが出てきた。

 三越で弁当を買いながら、若干の街ダネ取材。記者クラブに所属してないから、街歩きが僕の記者クラブだ。

 午後、原稿。5時半からTBSラジオ。6時半からJRA六本木事務所。ジャパンカップで、JRAが出した新聞広告。2面ぶち抜きで、 芦毛の馬の写真だけを大きく写したのものが大好評だった。「競走馬はこんなに美しいのか」と驚く人もあった。「この写真、部屋に飾っ ておきたいぐらいだ」と言っていたら、JRAは改めてポスターにしたらしい。

 競馬はスポーツでもあるし、ギャンブルでもあるし、国庫納付金を収めるボランティアでもある。が「競走馬の美しさ」がすべての動機 だ。前提だ。それが競輪、オートとは違う。競馬は美。それを訴えた広告。僕なら「広告大賞」を出したい気持ち。事実、ジャパンカップ の売り上げは前年を大きく上回った。

 自衛隊派遣延長問題。ウソで固めたイラク支援。突然、防衛大臣、与党幹事長が「行き先」を公表してサマワ入りした非常識。多国籍軍 は怒り心頭だ。テロに襲ってくれと言っているも同然である。何を考えているんだ。

 アリバイ視察で「安全は確保された」と言う防衛庁長官。世界中で「サマワは非戦闘地域」なんて惚けたことを言ってるのは日本だけだ。 ああ、何と言う恥さらし。国民を欺くための茶番を見せらつけられた世界は陰で何と言うだろう。

 政府は今日(12月8日)になって、北朝鮮が「拉致被害者・めぐみさんの遺骨」として提供したものが別人だったと、ついに明らかに した。別人説は一部週刊誌が9日発売の号で用意しているという噂もあって、かなり前から「鑑定結果」が出ていたと聞いた。

 何故、この時期に「別人」と発表したのか、幾分、疑問に思う。

 めぐみさんが生きていることは、初めから推測された。だから「生きている」と書き続けていた。(11月15日の日記「食糧12・5 トン」などを読んでくれ)それが科学的に証明されたことは確かに前進である。うれしい。経済制裁など実効のある手段が選べる。

 しかし、何故、今、発表なのか。世論が北朝鮮一色になることを読んでの発表? その一方で、イラク自衛隊派遣延長問題が最終段階に 入る。派遣延長に疑問を持つ当方から見ると「遺骨別人」発表はイラク論争を避ける世論操作のようにも見えるのだ。多分、9日のワイド ショーは北朝鮮一色だろう。「北」カードを「イラク」隠しに使っているような気もする。

 「ここだけの話・嘘つき大賞」(7日夕刊)を読んでくれた読者から、数通の激励あり。痛烈な風刺なので、読者の反応が気になってい たが、多くの人に読んでもらって、うれしい。ありがとう。僕の用語に関する厳密な意見も頂戴した。ありがとう。

 ウソの品位? まで地に落ちた風潮に負けず、書き続けたい。

<何だか分からない今日の名文句>

嘘つき野郎の常識、世界の非常識

12月7日(火) 大掃除

 今週の「名馬と時代」はメイヂヒカリ。馬主さんの新田新作さんのことを書こうと、資料を探すが、どうしても出てこない。本箱、部屋 の隅に重ねてあるダンボール箱、押入れ‥‥大掃除になってしまった。

 イロイロなものが出てきた。30年以上も前の「芸能界裏の裏」で使ったビューティペアの写真。リクルート事件の膨大な資料、それに 手紙の類。中には、恋文のようなものもあるが、名前に記憶がない。どんな人なのか。

 サンデー毎日編集長のころの書類。数字が所狭しと印刷されている。

 編集長になった1989年下期の営業成績。収入合計17億9168万円、直接経費14億9490万円。差し引き利益2億9677万 円。

 一回平均発行部数38万5944部、売上部数28万5712部。売上率74.03%。前年同期比4万2590部増。自慢できる数字 だ。多分、あの頃は週刊誌不況で、どこも苦戦していたのだから、自慢できる。

 あの頃は負けず嫌いだった、とシミジミ思う。編集部に「目標実売35万部」と張り出し、十分、可能だ、と思ったものだが‥‥睡眠 4時間。結局、倒れてしまって、同人に迷惑を掛けてしまった。もし、現在、サンデーが部数で苦戦しているとすれば、僕にも責任がある。 迷惑をかけづに、何か手助けは出来ないか、と思うのだが、当方に「力」はないだろう。

 大掃除で古本が出たので、仕事場のビル一階に「ご自由にお持ちください」と書いて、持って行ってもらうことにする。どんな種類の本 が最初になくなるか、見ていると、若者の嗜好が分るものだ。

 夕方、関西方面から知人がやってきて、新橋で夕食。「ここだけの話・嘘つき大賞」が面白かった、と言ってくれた。

 9時半から「赤坂もんた会」。友人のみのもんたの会。彼の仕事が終わるのが9時半だったので遅い開会。同い年のみのさん、無理をす るなよ。

 みのさん「テレビのコメンテーターをやったら」としきりに誘ってくれた。ありがとう。うれしいことだが、やっぱいり筆一本で行きた い。貧乏が極限になったら、改めてお願いする‥‥赤坂の夜は、去年より、華々しくなったようだが‥‥イラク派遣延長は秒読みになって いる。

<何だか分からない今日の名文句>

書いてナンボ、読まれてナンボ

12月6日(月) 記者イロイロ

 東京周辺で、綺麗な富士山が見える。風が吹けば、空が澄み渡る。初冬は良い。太平洋側は良い。でも、日本海側はどんよりとして、雪 になる。

 アイツ、どうしているんだろう。東北、北陸の知り合いの顔を次々に頭に浮かべて、つい天候の格差を思ってしまう。初任地の新潟で4 年。始めは、見る知らずの土地で楽しかったが、終わりの方は「早く雪国から脱出したい」と思ったりした。

 雪深い東北・北陸を転々としている奴が気の毒な気もする。(もちろん、東北が良い、という人も多いが)自己主張旺盛な奴が人事異動 で得をする。自己出張が少ない人が損をする。最近は「××分野はしたくない。××がしたい」と平気で仕事を選り好みする。平気で社を 辞める。自分だけ良ければ‥‥という若者も多い。(大体、辞めてもらって助かるケースが大半だが‥‥)

 青森のしゅんちゃんからリンゴが届いた。立派なフジ。艶々している。早速、食べる。純朴な彼、携帯で恥ずかしそうに「来春1月に内 輪だけの式を挙げる」と話してたが、人生の中で一番、楽しい、幸せの冬なんだろう。

 夕方、社で後輩の相談事に付き合う。自己主張が苦手な、超真面目な人物なので、つい考え込んでしまうことが多い。「それほど、気に 病むな」と励ます。「近く飲もう」ということになる。愚痴を聞くのが最大の治療法?

 「馬小屋」(競馬欄)に顔を出すと、たまちゃんが「これ、読みました?」と某紙のコラムを見せてくれた。「長い挨拶は怪しからん!  国際感覚を疑う」といった趣旨のコラムである。ジャパンカップの歓迎パーティで、JRA理事長の挨拶が通訳の時間を入れて30分もあ った、という指摘だ。そう言えば、少々、長かったような気もしたが‥‥「腹が減った」と隣のご婦人に言って笑った記憶があるから長か ったのだろう。WEBを使ったノミ行為を絶滅したい、という各国共通の願いを正確に話すには時間が掛かったのだろう。

 挨拶は短い方が良いに決まっている。が、それほどイチャモンをつけるほどなのかしら。筆者は? と確かめると、いつも心配している 元毎日の可愛い(失礼)後輩記者である。自信満々。筆捌きに磨きがかかっているのはうれしいが、彼、記者会見で自分の主張を長々と述 べ、何を質問しているのか分らない、と陰口を叩かれている。だから、つい笑ってしまった。

 でも、将来のある人物。血気盛んな記者を暖かく見守って欲しい。

<何だか分からない今日の名文句>

僕も昔はそうだった

12月5日(日) 卒中後14年目に入った

 1991年12月4日午後7時半頃だろう。社の近くのパレスホテルで、ある出版記念会で挨拶した直後、脳卒中で倒れた。気の早い奴 は葬式の準備をしてくれたが、3日3晩で意識が戻った。

 右半身マヒ、失語症‥‥人生が一変した。だから12月4日を「脳卒中記念日」と呼んでいる。倒れる前が「卒中前」倒れた後が「卒中 後」。出来るだけ「卒中前」の肉体に戻ろうと努力し「卒中後」の僕に、与えられた人々の好意に日々感謝する。そんな決意を忘れないよ うに「心の中だけの記念日」。

 4日は野暮用先の商業施設で開かれていたコンサートを覗く。「星に願いを」をうつらうつらしながら聴く。何か平和だ。最近はゆった りした気持ちになれるから嬉しい。

 でも夜から突風。冬の嵐は劇的に変わり、晴れると、空は七変化。美しい。

 自衛隊派遣延長の「段取り」が進んでいる。政治家たちのアリバイ視察が終われば、延長発表。小泉さんにブッシュさんから「お褒めの 言葉」が返ってくる。イラクの戦火はまだ続く。

 日本国内は平和だ。が、何時崩れるか分らない。不安がジワジワと近づいている。

 派遣延長の流れは、今となっては、致し方ないように思う。小泉さんに対決する人がいない。延長反対なら自民党を離党すべきだ、と書 いたが‥‥政治家は力ない。延長反対の国民運動は盛り上がらない。

 ジャーナリストだけは、この期に「立場」を鮮明にすべきだ。行く行く「責任」を取る決意がなければいけないと思う。

 僕は幸せなことに、小さいながら「発表の場」を貰っている。はっきり「派遣反対!」が言える。若干の圧力めいたこともないではない が、自由に書ける。自由に書いている。 今週の「ここだけの話」は僕流の表現で、今の権力者を目一杯風刺することで、反対の意志表示 するつもりだ。

 その場その場で、マスコミ人は、それこそ神に誓って、本当の気持ちを意志表示すべきだ。政治家は自分の選挙のことばかり考えて、本 当のことを言わない。政治家は最大の言論家なのに何も言えない。言論不自由人。言論マヒ。脳卒中以上に完治しない失語症だ。だから、 市民一人一人が、この問題で意思表示する。その機会を作るのが、リーダーの使命だ、と信じる。まだ、時間はある! 劇的に政治は変わ るものだが。

<何だか分からない今日の名文句>

いま「沈黙」はクズ鉄

12月2日(木) イラク派遣を打ち切る勇気

 毎日新聞朝刊に「自衛隊のイラク派遣を打ち切るよう求めます」の意見広告が載った。どんな組織が出したものか良く分らないが、勇気 のある「非戦」の表明である。個人の名前を公表することも勇気のいることだと思う。最近は「兵隊さん、ありがとう」的な賛美が意識的 に行われて、軍備の増強、法制化が進んでいる。その中で、公務員などは名前を公表して「イラク派遣反対!」というには、あるいは覚悟 がいるのかも知れない。

 その広告の中で、注目されるのは、サマワに置ける自衛隊の浄水処理能力についてのデータである。自衛隊の1日の浄水能力は約80ト ン。その約49%を自衛隊とオランダ軍が使っている。外務省の無償資金援助を受けてサマワ南部で給水活動を行っているフランスのNG Oアクテッドの給水量は600〜700トンだという。

 その点だけ見ても、イラク支援はアメリカ義理立てアリバイ支援であることが分かる。

 自衛隊派遣の期限は12月14日。政府は延長が当たり前、という姿勢だ。

 なぜか、究極の政治判断が求められる問題について、指導者たちは黙して語らぬままだ。政治家は臆病だ。昨年のイラク派遣でも「本当 は反対だが‥‥」と後で話していた人物が何人かいた。そして、その後も何も言わない。マスコミも臆病だ。

 朝から「青い空 白い雲」を書く。イラク問題は来週の方が良いかなと思って「ヨウ様騒動」と「女性天皇」を書いてみた。

 執筆中に知り合いの銀行員がカレンダーを持ってきてくれ、雑談。「近くに来たので、顔を見に来た」という次男。それやコレやで、締 め切り30分遅れ。編集長さまと意見が合わない原稿だから、気分を害したかと、思ったが、その応対、そうでもなかった。

 夕方、散歩。浅草橋界隈はクリスマス用品が歩道にあふれている。

<何だか分からない今日の名文句>

無発言の無責任

12月1日(水) 中越地震で儲ける奴

 午前中「名馬と時代」を書き上げ、午後は野暮用。仕事場のテレビの映りが悪いので、 ビル管理会社に頼んでおいたのだが、何故か“復旧”した。時々、こんなことがあるらしい。 しかし、東京だけは、次々に大型ビルが建ち、電波障害が次々に出ている。

 夕方、八重洲口の床屋。新潟県豊浦(今は新発田市に合併されている)の床屋の娘。 東京に修行にきているが「お正月、故郷に帰れるか、心配なんです」と話しかけてきた。

 中越地震で不通になっている新幹線は、12月28日に復旧するらしいが、 大丈夫なのか、それが心配らしい。

 毎年、大晦日の仕事が終わると、最終の新幹線に乗り込み、新潟駅に迎えに来る友人の車に 乗って故郷に帰る。すぐ、友人が集まって徹夜で酒盛り。そして、午前7時、家族そろって、 お雑煮を食べる。初詣は護国神社だそうだ。

 「でも‥‥新幹線、大丈夫でしょうか?」

 トンネル内の被害が少ないというので、大丈夫だとは思うのだが‥‥元旦に飛行機で行くか、 池袋発の深夜バスにするか‥‥ともかく「困った、困った」である。

 地震の被害は3兆円にも達するという。三位一体で「地方への財源委譲」が3兆円弱。 それほど、巨額な被害が出ている。そして、まだ出るだろう。政府が本腰を入れなければならない のに‥‥被害を放置しているのではないのか。このままでは、ホテルは潰れる。 ゴルフ場もつぶれる。

 仮設住宅の苦闘も、もちろんだが、周辺の経済マヒをどうするのか。これが問題だろう。 新幹線の復旧は国の威信を掛けて進めるものだ。JRは民間だから‥‥なんてことではない。

 そんな中で‥‥中越地震復旧特需目柄がもてはやされているらしい。 例えば、金沢市のビルド会社の株は連続ストップ高で、二倍になった。 仮設住宅のリース会社も軒並み、値を飛ばしている。やがてこの種の「思惑買い」 は収まるものだが、確実に儲けた人もいる。

 何か、複雑。

 夜、競馬仲間3人と清澄通りの「どじょう屋」で一杯。その後、久しぶりに (多分、6年ぶりに)四谷荒木町近くのバー「紗枝」。場所を忘れてしまって、 やっとのことで探し当てる。「あら、太郎ちゃん!」とママとアッちゃんが歓迎してくれた。 世界遺産のような古びたカラオケで一曲づつ歌う。

 この辺り、銀座のホステスさんが独立すると、店を出すケースが多かったが、 今でも、結構、繁盛している。12月、そろそろ忘年会の季節だ。

<何だか分からない今日の名文句>

相場“新”格言 火事は買い、地震も買い

11月30日(火) 「〜なんだろう」

 橋本さん「1億円の小切手は、私が受け取って、渡したことは事実なんだろう」と答えた。良くもまあ、抜け抜けと。事実なんだろう?  よく言うよ。

 もっと上手に嘘がつけないのか。嘘にも品格がなければ‥‥日本語が分らない総理大臣に一時でも治められた日本国。ああ、情けない。

 こんな男に、倫理、倫理なんて言っても仕方ない。最低な男じゃないか。これ以上の追及は無駄なことだ。この国には、もっと重要なこ とが幾つもある。ああ茶番。

 夕方、気分直しに、渋谷へ。若者の街にクリスマスツリー。気分が晴れる。セガレと落ち合い、目黒。日の出学園裏の「花亭」で河豚。

<何だか分からない今日の名文句>

倫理審査会は「うそつき野郎」の駆け込み寺