編集長ヘッドライン日記 バックナンバー
2003.7月

7月30日(水) 暑中見舞いの季節

 東北の某市で野暮用と言うか、旧交を暖めて一泊。早朝、東京に戻る。

 ここ数日、暑中見舞いの葉書がドサッと来ている。暑中見舞いの季節って、7月終わ り、と決まっているのか。でも、ことしは涼しいぐらいで「厳しい暑さが続いておりま す」と言われと妙な気分になる。

 何故か、弁護士さんからの暑中見舞いの葉書が多い。業界の慣習なのか。それに、某 宗教団体の幹部の皆さん。いつもいただく。それに、右翼の方も多い。礼儀正しいのだ ろう。

 画家の水戸成幸さんの葉書はいつもうれしい。筆で書いてある。ことしは「やっと夏 が来ました……」を小さく書いてあった。彼の書体が大好きだ。

 永倉有子さんからの暑中見舞い。「永倉萬治がいなくなって3年が過ぎようとしてい ます。早いようで、短かったこの期間、ずっと書きつづけた、私たちの物語が、もうじ き本になります」

 もう3年も経つのか。通夜の晩、霊前の前で涙が止まらなかったことを思い出した。 あの夜はザーザー雨だった。

 有子さん著「万治クン」は10月、集英社から出るらしい。

 手紙も来た。「K」という人が「本を書いた」というお知らせ。K?誰だろう。記憶 がない。

 「大学教授は虚業家か 学園のいびつな素顔」(早稲田出版)。腰巻きに「象牙の塔 も虚実をあばく!金儲け主義の大学経営者、出世のために足を引っ張り合う大学人…… 」とある。誰が書いたのだろう。

 「著者略歴」に1937年福井県生まれ、京都大卒、毎日新聞入社、とある。「英文 毎日」編集長、編集委員を経て1992年早期退職。その年から大学の先生をしている らしい。筆者の顔写真があるが、思い出せない。

 夜、会合で久しぶりに会った、毎日新聞入社同期の評論家・嶌信彦に「アレ、誰だ? 」と聞くと「分からない。もしかしたら……」

 どうやら、毎日新聞入社の同期生らしい。が、二人とも確実に忘れてしまっている。 同期生が全国で17人しかいないのに、忘れてしまうなんて……。セクションが違うと 、これほど、疎遠になるのか。それにしても疎遠過ぎる。

 帰ってから、もう一度、Kさんの本を読み返してみる。体験的大学亡国論。興味のあ る方に一読を勧める。が……「ご批判、ご感想をいただきたい。厚かましいお願いのお 便りを突然、差し上げました失礼をご容赦下さい」という手紙には、唐突で、ちょっ と身勝手な感じもする。

 入社後、異動の知らせもなく、結婚の知らせもなく、退職の知らせもなく、もちろん 、年賀状の行き来もなく、没交渉である人物が「本を書いたから読め!」というのは、 ちょっと常識はずれではないのか。僕を含めた自戒だが、ジャーナリスト、大学教授に は「常識はずれ」が結構いる。

 嶌クンも参加した会合は、友人の取締役就任祝い。ホテルの寿司屋に六人集まった。

 某社の役員になった人物は人柄抜群。人情家で子沢山。サラリーマンとしての出世欲 はまるでない。この素晴らしい人柄に吸い付けられた5人が会を設けた。

 みんな、好き勝手なことを言い合い、主賓はただ、笑顔で聞いているだけ。試練続き の社業を笑顔で乗り越える彼は、僕の早稲田の後輩になるが「大人物」である。

 取締役になって当然だが、出世欲がないので、常々「もったいない」と思っていたが 、さらに中枢ポストに進んだのは同慶。楽しい楽しい一夜だった。

 もうじき8月。

 梅雨が開ければ……水面下で、きな臭いことが間違いなく進行する。

 小泉内閣は何をやったのか。冷静に考える季節。波乱の9月政局になだれ込む。

<何だか分からない今日の名文句>

大学に行くと馬鹿になる?

7月29日(火) 元和歌山市長の歳費?

 午前中、西台クリニックの検査が気になって、電話で検査データの読み方を詳しく聞 く。丁寧に説明してもらうと、別に深刻なものではないらしい。な〜んだ。ちょっと神 経質だったかな。やっと元気になる。

 人間、長いことしていれば、健康が万全と言うわけにはいかないのだろう。

 元和歌山市長・旅田卓宗さんが再逮捕された。市長だった平成12年、美人女将が経 営する割烹旅館を「市の迎賓館にする」と言って、19年間借り上げ、敷金、家賃併せ て4900万円支払っていた。背任容疑だ。

 美人女将も逮捕された。もちろん、市長と女将は男と女の関係だった。42歳の女将 、市長さんを手玉に取ったのだろう。

 実は、ことし6月20日、和歌山放送情報懇談会の講演に招かれた折に、現和歌山市 長の大橋君から「ここだけの話」を聞いた。

 大橋君は毎日新聞の整理記者だった。ところが、郷里の和歌山市の旅田市長が、この 美人女将と市役所近くの隠しマンションで週に1回、密会を続け、これが発覚した。そ こで昨年7月、旅田さんは辞任。一介の新聞記者だった大橋君が市長に祭り上げられた 。大橋さんのお父さんは、県知事を勤めた人物だったのだ。

 もっと記者生活を満喫したかったろうに、故郷のピンチで仕方なかった。

 この旅田さん、今年1月、収賄容疑で逮捕された。ところが、問題はその後だ。4月 、彼は市議選に獄中立候補して、見事、トップで当選してしまった。

 これには、大橋君、困った。歳費である。法律的には拘置所にいても、歳費を貰う権 利がある。しかし、事実上、議員活動をしていない。多くの市民が「歳費を払うべきで はない」と現市長を失調批判する。

 現市長は、旅田さんに「歳費を一時、返上しないか」と言ったらしい。しかし、元市 長は「僕は獄中日記を書いて、弁護士を通じて発表している。これが議員活動だ」と言 い張る。これには、大橋君、困った。

 今回の旅田さんの再逮捕が、この「和歌山・歳費事件」にどう影響するのか。ちょっ と、興味がある。

 午後、若干の取材。終わってから、野暮用で東京を離れる。

<何だか分からない今日の名文句>

盗人にも3分の理(利)

7月28日(月) 人体・動物実験のスクープ

 週刊誌は編集長の個性がもろに出る。売れる売れないは、編集長の腕に掛かっている 。同時に「売れなくても、これだけは記録しておきたい」と考えるのも編集長の個性で ある。

 サンデー毎日の広瀬金四郎編集長は、最近では、腕の良い編集長である。あまり話し たこともないが、いかにも週刊誌的人物で、多分、部数も増えているのだろう。

 その広瀬君が「今週は売れなくても良い」と覚悟したのだろう。「衝撃!人体・動物 実験が行われていた」というのを出した。茨城県神栖町の毒ガス事件。マスコミがあま り報道しないが、これは深刻だ。環境基準の450倍の有機ヒ素化合物が出た井戸。本 来なら、一面で報道されて良い、と思うような話だ。

 今週のサンデーは、この問題に詳しい葉上太郎さんという人の「毒ガス製造に携わっ た元海軍兵士の証言」を掲載している。スクープである。

 狂気の人体実験。これはキチッと記録して置かねばならない。さすが広瀬だ!と思う 。(出来れば、売り上げを無視して6〜8ページは使っても良い、と思う。出来れば「 キャンペーン」と打つべきで、4週は続けたらいい。失礼だが、葉上さんの文章は“商 品”としては、あまり上手ではない。やはり、本気でやるなら、編集部の参加が必要だ 。やり方一つでは「毒ガスのサンデー」と言った売り物にもなる、と思うのだが)

 西台クリニックの検査結果が届く。概ね、前回と変わらないが、ちょっと気になると ころもある。内科的なフォローが必要か。歳をとると、色々とガタがくる。

 夕方、呉服屋「吉田」さんのご主人がやって来た。「魁」で「柳橋物語」を書いてい たことを聞いた77歳の長老。「いつか会いたい、と思っていました」とのこと。あ りがたいことである。

 ある出版社から「柳橋物語」を本にしたら、というアドバイスもあって「魁」での連 載をストップしたままだが、こうした「情報提供者」が出ると、うれしい。

 吉田さん、仕事場のすじ向かいの通りに住んでいた、ということで、例えば甘味の「 にんきや」がこの横町にあったこと、島崎藤村の家があった場所、と新発見のことが幾 つもあった。ありがとうございました。

 吉田さんは府立一中(今の日比谷高校)出身。野球部の監督を勤めた人で、その方面 でも生き字引。おもしろい話が幾つもあった。

 一番、おもしろかったのは、府立1中では、軍部が禁止していた英語の授業が昭和2 0年まで行われていた。

 リベラルの校風。それが日比谷高校が戦後「頭の良い学校」になった秘密らしい。

 朝、夜、併せて1万歩の散歩。何しろ、血糖値を下げないと。

<何だか分からない今日の名文句>

たまには、売れない誇り

7月27日(日) うに染め?

 25日の金曜日は宮古に泊まった。久慈と違って宮古は活気のある町。家々が前の歩 道に花を咲かしている。

 駅から1キロの魚彩市場は新鮮で安い。3000円出すと、魚、貝、烏賊の大きい大 きい詰め合わせが買える。だからスーパーではなく、多くの市民は魚菜市場を使う。

 雨が降っているのに、人通りは絶えることがない。つられて、当方も雨の中を合羽で 歩く。100円ショップで買った合羽が寿命が来て、穴があいている。そこから滴が体 に染みる。

 午後になると、ジャージャー降り。仕方なく、奥浄土が浜行きのバスに乗り、浄土ヶ 浜パークホテルに早々とチェックインした。

 綺麗なホテルだった。それに経営に工夫がある。この夜は「生ビール祭り」を開催中 。宮古市民、それも大部分が女性、200人ほどが集まっていた。バイキングでビール 飲み放題。4000円が人気。

 昼間は日帰り風呂。なにしろ景色が良いので、地元の人にも喜ばれる。朝7時半ごろ に、羽田からの夜行ドリームバスがやってくる。これも工夫の一つ。社長が岩手県営バ スの社長だからの発想だろう。

 ロビーで「うに染め」を販売している女性に会う。「うに染め」を発案した田川宮子 さん。名物のうに。手にうにが着いたら、なかなか取れない。それがヒントになった。

 急速冷凍したうにの殻を火にかけて、染色液を作るのだそうだ。淡い、透明の色が「 うに染め」の魅力。結構、売れている。最近、男でもするスカーフを買う。(アトリエ 「ぐらん」TEL0193−63−7848)

 それに売店で血糖値が下がる「ダンタンそば」を買う。モンゴルの伝統食らしい。効 果は分からないが、168のうち158例に効果があった、と書いてある。

 まあ、しばらくやって見るか。(これはフリーダイヤル0120−25−5212小 川製菓と書いてあった)

 ともかく、このホテルには活気がある。一口に「東北は疲弊している」とは言えない 。夜、大地震。26日の朝飯を食べている時も床が上下震。6度強。びっくりした。 大雨と地震。早く帰るに限る。7時50分発の県北バスで2時間かけて盛岡へ。

 ところが、地震の余波で新幹線は動かない。

 仕方なく、と言うより、もっての幸い、と開催中の盛岡競馬へ。バスに乗って30分 。山の上にある競馬場で4戦2勝。夕方の新幹線に乗ったので、隅田川花火は終了寸前 。それに、我が仕事場では、音は威勢がいいが、花火は見えない。音だけの鑑賞? こ れはつまらない。

 27日の日曜日はTBSラジオで「東北の稲の作況、やや不良」といった話をする。 盛岡で聞いたのだが1993年の戦後2番目の冷害では。米が買い占めされた。その時 に似ているという。まだ、梅雨は明けない。

 昼間は野暮用。夜は東京競馬場で花火をみる。30分に3349発。見物人、6万人 を越す。花火を見て、やっと夏らしくなった気分だが、まだ肌寒い。

 花火大会の責任者でもある知人たちと、調布の「れんぽん」で一杯。美味。

 そろそろ、ガンの検査の結果が届く頃だ。

<何だか分からない今日の名文句>

音はすれども姿は見えぬ

ホンにお前は屁のようだ

7月24日(木) 雨に祟られたら……

 八戸市のホテルで起床。雨。かなり激しい雨。陸奥湊の朝市を見るつもりだったが、 これも出来ず、八戸駅から「うみねこ号」で陸中へ。

 八戸駅前の市場で活イカのお造り(1100円)を造って貰ってから、単線の八戸線 に乗り込んだ。

 雨に祟られた旅行は食い物で元を取る。それが牧流だ。

 昨夜(23日)はメル友の沢向さんのお店「ぱすたりあん」(八戸市南類家2丁目2 4−3・TEL0178−72−1717)で美味を満腹した。

 有機のトマトに蜂蜜をチョッピリたらしたジュース、イタリア風のさっぱり天ぷら、 イカと納豆の和風パスタ……実にうまかった。彼のお父さんは東京で指折りのイタリア ン調理師だった。16年前、故郷にもどって、イタリアン革命をこの地で展開している 。

 食材にこだわり、漁村を歩き回り、牧場を回る。その努力が実ってファンが多い。近 くに同じような店が出ると、お客さんは暫く浮気するが、必ず帰ってくると評判だ。本 当にうまい。

 だから、大雨の今日も美味で……と思い、八戸駅前の市場で生きている烏賊を刺身に して貰った。それが正解だった。

 何とも言えぬ甘さだ。車窓の海岸線とイカ刺しを肴にビールを見る。

 雨が降って残念だが、この幸福感は人に言えない。鮫、大蛇……と変わった名前の駅 を過ぎて、八戸線の旅は約2時間で終着・久慈駅に着いた。

 小さな町だ。「市」と言っても人口3万5000人。駅の前に信号機がない。歩く人 がいないのだ。

 激しく雨が降っているから、美味探検はままならない。寒いこともあって駅舎の中に ある立ちソバにする。実はJR久慈駅と三陸鉄道久慈駅が並んでいる。別々の建物で「 駅そば」もそれぞれの駅舎にある。どちらにするか。迷った。結局、平たい饂飩が見た 目に斬新なので三陸鉄道を選ぶ。それがまた大正解。とろろが入っていて腰があり、つ ゆは淡泊。大正解。

 時間が余ったので、合羽をかぶり商店街を歩いて散髪屋へ。旅の床屋も幸福感のうち 。さっぱりしたところで、三陸線で宮古方面に向かう。地元の人と談笑して「どこか らですか?」と聞かれ「こちとら江戸っ子……」と話す辺り、寅さんみたいだ。

 海岸が絶景と言われる「普代駅」で降りる。タクシーにのると「尋ね人」にチラシが 張っている。

 平成9年6月29日、普代村に住む金子理恵ちゃん、当時6歳がいなくなった。探し ても探しても、見つからない。神隠し? 何か、ヒントがないか、と地域全体が力を合 わせているが……。不思議なことがあるものだな

。  4時近くになって、霧が深くなった。

 どこへ行くか? まあ、後は……秘密ということにするか。

 週末は東京に戻るつもり。27日の日曜日は東京競馬場の花火大会を見に行くつもり だ。

<何だか分からない今日の名文句>

これを言いっちゃあ、お仕舞いだ

7月23日(水) 八戸華市場……キムタク

 新幹線で3時間。タクシーで20分。八戸市の隣、青森県福地村の家畜市場で今年、 はじめてのセリ市。

 知り合いになった生産者の精神的応援?を兼ね取材。

 今年は144頭が上場したが、売り上げ1憶205円。去年を7000万円も下回っ た。

 北海道のセリでは3億円の馬が出たが、実はこれは異常。この八戸が本当の相場を占 う。この模様は、来週のスポニチ「おけら街道」に書く。

 八戸で仕入れた話。

 海岸沿いは寒くて昨日までストーブを入れていた。日照時間が少なく、農家不況が心 配。八戸の銭湯はすべて温泉。料金350円。新しい青森県の知事は社台の会員。キ ムタクは海鳴りラインの海岸でお忍びサーフィン。十文字関の実家は、不成績に泣いて いる。等々。

 明日も天気にな〜れ!

<何だか分からない今日の名文句>

馬産地の悲鳴、海鳴りのごとく

7月22日(火) アメリカの名馬が……

 ちょっと取材が立て込んでいるので「たいとう診療所」に行けない。まあ、毎日の取 材活動がリハビリに役立つ、と考えよう。

 暇を見て「おけら街道」を書き直す。同業者を批判するような文章は書いたことはま るでなかった。何度か止めようかと思ったが、ジャーナリズムの身勝手が気になるので 書いてみた。自戒を込めたマスコミ批判。記者仲間から白い目で見られるかも知れない が、たまには、これも良いだろう。

 法政大学の五十嵐仁教授(政治学、労働問題)から新刊「戦後政治の実像」が贈られ てきた。彼は村山連立政権誕生の舞台裏に詳しい。

 個人ホームページ「五十嵐仁の転成仁語」が論文の元になっている。相当、加筆して いるので「書き下ろし」と言ってもいいだろうが、それにしても、ホームページが「初 出」というスタイルが増えるのだろう。

 出社後、打ち合わせ、2件。内容は秘密。

 夜、プレスセンターのアラスカで、気のおけぬ仲間と夕食。

 アメリカ競馬雑誌の特派女性ライター(もちろんアメリカ人)の話が痛くに気になっ た。アメリカから輸入された名馬のその後を取材したら、すでに死亡していた。経済的 理由で種付けが終わったアメリカの名馬が殺される。それが許せない、と女性記者は憤 慨する。金権の日本のシンボル? ここが経済動物の悲しさ。競馬の弱点である。

 千葉県には、引退名馬の面倒を見るグループがある。しかし、これは当然だが、限ら れた善意が実現させたものである。引退した種牡馬を一堂に集めた広場をつくろうじゃ ないか、という話になる。

 知恵を出せば、これは実現可能だ。9時頃まで、盛り上がる。

 明日は八戸華市場にセリ市の取材に行くので10時半には就寝。

 明日、天気にな〜れ!

<何だか分からない今日の名文句>

余生を平等に

7月21日(月) 渡辺恒雄さんの品格

 朝、タクシーに乗ると、当方が毎日の記者と知ってか、運転手さんが「読売の社長は 生意気だねぇ」と話しかけてきた。

 「野球でも、相撲でも、サッカーでも、何でも俺の言うようにしろ!と言っているん でしょう。あいつ。ケシカラン奴ですよ。俺、大嫌いだ」

 渡辺恒雄さんは最近、良く新聞に登場する。率直な意見をナベツネ流で話すので人気 者。だが、当然、嫌いな人もいるだろう。

 「たかだか新聞社の社長でしょう。新聞社って、そんなに偉いんですか?」

 「偉くないですよ」

 「そうですよね。新聞社の社長ごときが偉そうなことは言う。時代も変わりましたね 。あんな品の悪い人が人前に出るなって。もっとも、こちとら、タクシーの運ちゃんだ けど」と笑う。

 「……」

 「だいたい、品位がない。横綱のひん……ひん…そうそう品格、がどうのこうのと言 うけど、あいつの品格の方が問題だ。出来の悪い新聞を景品で売るつけるんでしょ。あ いつ?」

 「……新聞社って嫌だな。押し売りするんだもん。毎日さんもそうなんだ?」

 「……」

 「まあ、しょうがないけど……。俺たち、タクシーを押し売りしないもんな(運ちゃ ん、一人で大笑い)。あんた、押し売りのタクシー、見たこと有る?」

 「……」

 「ともかく、あの読売の社長、何とかしてよ。アレ、独裁者でしょう?」

 「……そう言えば、そうかな」

 「そうでしょ。分かるんだ、私には……何とか言うじゃない。そうそうキャンペーン とか言うじゃない。そのキャンペーンとかいう奴で、辞めさせてよ。独裁者はいけない んだから。不愉快だから」

 「……」

 「この間、読売の記者が乗ってきてね。社長の悪口してるんだ。度胸いいなと、思っ て。だからクーデターをすればいい、と言ってやったんだ。そんなこと出来ない、って 言うんだ。だったら、毎日さんとか、日経に、やってもらったら良い。やってよ。アレ 、野球をめちゃくちゃにするんだから……俺、巨人戦、見ないでいるんだけど……あい つ、辞めたら、見るね、見るよ」

 「……」

 「やらない? そうだろうよ。裏があるね。ある。だいたい、新聞社って程度悪いよ な。自分たちだけ料金を同じにしてサ、他の業界が同じ料金にすると談合だ、談合だっ て叩くじゃない。読売の社長が先頭になって、お前ら、談合しているんだよ。多分。そ うだろう。エッ、どうなんだい? お客さん」

 「そんなことはないけど……」

 「頑張ってくれよ。若けぇの! 堕落したらお仕舞いだよ……あんた。ハイ、着きま した。660円!」

 「若けぇの!」と言われたのは久しぶり。58歳の「若けぇの」。うれしいような、 悲しいような。でも、こんな運転手さんがいるから……明るくなる。

 新聞より、説得力がある。うれしいじゃないか。

<何だか分からない今日の名文句>

品格が品格を笑う

7月20日(日) 辻元元議員が逮捕なら……

 18日の金曜日。朝の散歩を早々にやめて、午前9時には仕事場に帰る。友人が好物 の「穴子の白焼き」を送ってくれると言うので待機。宅急便が来るのを、今か、今かと 待つ。しかし、なかなか来ない。

 本来なら夕食に日本酒と一緒に、と思っていたが、知人と外食の約束をしているので 、どうしても昼飯の時に食べたい。

 あと、どのくらい飯が喰えるのだろう。あと10年生きたとして、ザッと3650日 ×2・5回で10000回ぐらい。こんなにあるのか、と思うし、そのくらいしか食べ られないのか、とも思う。

 なるべく、一人で食べるのはよそう。出来れば、うまいモノを食べよう。善意の奢り は大切に味わおう。

 しかし「白焼き」はなかなか来ない。

 仕方なく出社。本人の書類送検で終わると言われていた辻元前議員の秘書給与流用事 件。数日前から逮捕があり得る、という情報が流れていた。午後7時ごろになって逮捕 となった。NHKの7時のニュースで「今、入りましたニュースです」と言わせるよう な時間設定である。

 日本は妙な国になった。

 「ヘンタイ列島」みたいな事件が続発するのも異常だが「捜査」も異常だ。

 事件現場に証拠がたくさん残っているから、今にも犯人が逮捕されるだろう、と思う と、そうでもない。その多くが迷宮入りの様相である。凶悪事件の逮捕率は目を覆うば かりである。

 その穴埋めか、あるいは全く別の意図があるのか、1年以上前に発覚した秘書給与流 用事件で前衆院議員を逮捕してみせる。名義を貸した人まで逮捕される。

 逃走の恐れがない(と言うより、1年以上も放置していたのだから逃走の恐れはない) と判断したハズが突如、逮捕する。妙だ。

 辻元議員は、はっきり言って好きではない。土井さんの秘書の五島さんは良く知らな い。あるいは、言われているように傲慢な人かもしれない。

 しかし、これは好き嫌いの問題ではない。「法の平等」の問題だ。この秘書給与流用 は、逮捕されて良い事柄である。重い犯罪だ。しかし、1年以上も捜査して、すでに犯 罪の筋は分かっている。国民の多くが犯罪の筋が分かっている。

 いくら「捜査に非協力だから……」と言っても、これほど長く放置していて、唐突 な逮捕は説得力が乏しい。

 日本国の「捜査」は実に妙だ。

 ちょっと前まで書類送検だったのに、逃走の恐れがないのに逮捕する。

 国政選挙があるから、という説明もある。社民党を一気につぶせ!という意図がある 、とも聞いた。

 そうかも知れない。しかし、現政権が気にしているのは別のところにあるように思う 。イラク戦争を支持した「大義」が失われつつある。現政権はそれが気になって仕方な い。「大量破壊兵器が存在するから」という開戦の理由が怪しくなった。この問題でイ ギリスでは現政権がピンチである。

 この騒ぎが日本に波及するのではないか。多分、小泉政権には怖いのだ、と思う。世 の中に「ヘンタイ列島」の事件が次々に起こればいいが、世間の関心が「ヘンタイ列島 」の犯罪に釘づけになっていればいいのだが……まかり間違って「イラク戦争」にもう 一度、焦点が移ると、大変なことになる。

 人気の小泉内閣でも一寸先は闇である。

 今や、日本国で「非戦」を言い続けるのは……と考えると、社民党を確実に潰したい 、と考えるのだろう。これは深読みではない。そう話す人もいる。

 辻元逮捕に反対!とは言う訳ではない。ある程度、政治的な捜査が存在しているし「 犯罪の事実」があれば、これに反対することは出来ない。

 しかし、である。法は平等である。最後の最後で、司法は「法の平等」を堅持しなけ れば存在意味がない。

 加藤紘一さんはどうなのか。宗男事件の本当の悪「某外務官僚」はどうなのか。真紀 子さんは「秘書に勤務実態がある」という理由でお咎めなし、という観測だが、それで 果たして法の平等なのか。共産党の組織的流用も、勤務実態があると言って、秘書が受 け取るものを党が流用して、よいモノなのか。

 法は平等でなければならない。

 以前、この日記でも言及したが「武富士事件」。奥深い「日本の黒い霧」が凝縮した 事件である。

 辻元逮捕と同時に、捜査情報を流した警視正が書類送検された。地方公務員法違反( 守秘義務違反)。重い犯罪だ。何故、警視正は逮捕されないのか。

 辻元事件の陰に隠れて「身内の犯罪」に、あまりに甘い「捜査」をする。あまりに「 法の平等」がないがしろにされている。

 週末は野暮用。お祭りを見る。でも、時々雨。梅雨は晴れない。

<何だか分からない今日の名文句>

悪法も法、ならば「平等」はもっと法

7月17日(木) シルクコジーンの安楽死

 朝一番で上野まで歩き、国立科学博物館の「江戸大博物館」へ。

 「モノづくり日本」のサブタイトルが付いているように、江戸のモノづくり達人を集 めた博覧会。世界最古のからくりをはじめ逸品が並ぶ。明治以降の近代化の下地は、江 戸時代にあることが良く分かる。

 人気上々。ちょうど、秋篠宮が見学されていた。

 夏休みになると、宿題のヒントに、と中学生がやってくるのだろう。(8月31日ま で。当日券1300円)

 午後、必死で原稿3本。来週、夏休みを取りたいので、書き溜めしたい。

 書き上げて、送信すると「行数がたりません」と指摘される。ああ、手抜き原稿発覚 。掲示板に訳の分からないやり取り。何だろう。何やら長屋の御仁の喧嘩沙汰?

 賢いはずの掲示板常連、あるいは元常連に、イライラ症候群があるみたい。社会性欠 如?ではございませんか。もし、子供(ガキ)の喧嘩なら外でやってくれ。

 掲示板は、どこにでもある。

 夜、送られてきたシルクホースクラブの会報を見て唖然。 愛馬・シルクコジーンが 安楽死していた。

 山田ステーブルで休養していたシルクコジーンは後ろ脚が思わしくなく、引退するこ とになり、手続きのため、浦河に向かう途中、馬運車の中で倒れ込んでしまった。かな り重い病気だったのだろう。やむなく安楽死したという報告だった。

 去年夏、山田ステーブルに会いに行ったときは、それこそ、名馬の仲間入りするので はないか、と思わせていたが……若干、厩舎の健康管理に問題があるようにも思う。残 念だ。

 シルクコジーン。父・Cozzene、母・バウンドトゥダンス、牡3歳。7戦1勝 3着1回。安らかに。

<何だか分からない今日の名文句>

喧嘩するほど暇はない

7月16日(水) グルコサミンって何?

 朝、体重計に上がると、67キロを越えている。減食に努めて一旦は64・5キロに したのだが。歩かなければ。ちょっと霧雨だったが、朝の散歩を決行。

 蔵前のデニーズで、減食メニュー。その間、携帯に電話2件。相談事ばかりで、みん な苦労している。

 町内の髪結いでシャンプー。オヤジが「小型根付けを作ったので」とプレゼントして くれた。例の携帯電話につける奴。確かに彼は器用だ。朱に色合いが何とも言えない。

 昼、内幸町プレスセンターでユニバーサルミュージックの関係者と昼飯。この業界に はトンと疎いので、この会社がCD売り上げ業界一位とは知らなかった。

 色々、勉強した。でも一番、興味を持ったのは、今巷で噂の「骨骨体操」。8月21 日に発売されるが、これ大化けするかも知れない。

 初対面の某雑誌編集長とJRA六本木事務所で面談。「秋の紙面刷新で、提言のよう なものを書いてくれないか」というお誘い。ありがたい。モノ書き、注文があってナ ンボ、読んで貰ってナンボ。

 ただ「提言」といったものは、色々のメディアで書いている。個人WEBの「二代目 魁」も、その一つ。それに提言的なものばかり書くと、小言幸兵衛みたいになってしま う。何か、新しいチャレンジがないと……生意気なようだが、辞退させてもらい、同 時に「こんなものだったら書きたい」と逆提案。生意気な奴と思われたかも知れないが 、乞うお許しを。

 新橋方面で野暮用。早稲田の先輩が長いこと社長を勤めた(今は相談役)「極洋」と いう会社。最近、栄養補助食品が話題になっている。

 たまたま、野暮用の最中に、その会社の幹部と出会った。捕鯨を中心にした名門水産 会社「極洋」がこの分野で手がけるのはカニ、エビの甲羅。そこに含まれているグルコ サミンという成分が軟骨を形成する役目を果たす。

 階段の上がり下がりが苦手な人には、グルサミンが是非とも必要だ。これを飲むと、 ひざ痛が治ると、健康雑誌に書いてある。

 鯨の捕鯨がお先真っ暗な水産会社が、知恵を出して栄養食品で生き返る。何しろ水産 会社だから原料が豊富で、コストが小さいから安いお値段で提供できる。これが知恵。 競争出来る。グルサミン様々。カニ、エビ様々。(興味のある方は「極洋」健食係03 −5545−0720)

 何故か、今日は骨、骨づくしだ。

 夕方、出社。エレベーターホールで健ちゃんにばったり。健ちゃんは事業担当の取締 役。奮闘している。

 彼が忙しくて、めったに会うことがない。「元気かい?」で始まって、20分ぐらい 立ち話。

 「まだ江戸大博覧会を見に行ってない? 不勉強な!」と叱られる。評判は聞いてい たが……。彼が今、一番力を入れているのが、この博覧会。明日にでも行かなければ。

<何だか分からない今日の名文句>

小さな苦労は愚痴が出る
大きな苦労は知恵が出る

7月15日(火) 「PET」の秘密

 朝から何も食べず、午前11時50分から東京都板橋区高島平の西台クリニックでP ET検査、超音波検査、MR検査。

 PETは空腹時にブドウ糖を血液に吸入し、ブドウ糖がどこに行くか、を映像で分析 する検査。ガン細胞はブドウ糖が大好きで、膀胱以外にブドウ糖が溜まるところにガン 細胞がある可能性が強い。この理屈を応用すれば、小さなガン細胞を発見することが出 来るという仕組み。

 ただ、このPETは国内に幾つもなく、この検査は保険が適用されない。すべて自費 。総合コース16万円強の検査費は馬鹿にならない。夏のボーナスが出たので、2年ぶ りの検査。それでも、前回より、利用者が多く、待合室は満員だった。

 健康は金になる。

 この検査予約が入っていたので、ガンで死んだ新山さんの最後のお別れに行くことが 出来なかった。皮肉にも、ガン検査室で冥福を祈る。

  帰りの都営地下鉄三田線で「こんにゃく祭り」なるものが、この日から開かれてい ることを知る。「春日駅」で途中下車。文京区小石川2−23−14・源覚寺の閻魔堂を 参拝した。

 宝暦(1751〜1764)、眼病に苦しむ老婆が、好物の「こんにゃく」を断って 、一心不乱に祈るのをみた閻魔大王、自らの右目をくり抜き、老婆に与えた。これが「 こんにゃく閻魔」の言い伝え。確かに閻魔の右目は潰れている。

 「こんにゃくを持っていけ!」と書いてあるので、賽銭を上げ、もらって帰る。

 この辺り、マンションラッシュ。狭いところに高層ビルが並ぶ。結構、金持ちが多い のか、肉屋、魚屋の値段は高い。格安の鰹の刺身500円を買い求める。これはうまか った。さすが名代。

 仕事場に帰ると、柳橋納涼盆おどりの団扇が届いていた。盆踊りは、例年通り18、 19、20日。

 「うえの夏まつり」は17日から。上野公園不忍池畔に植木市、骨董市が並び、水上 音楽堂ではジャス、和太鼓のコンサートが行われる。(8月10日まで)

 「こんにゃく閻魔」の源覚寺は7月19、20日はほうずき市。

 そのころには、梅雨も明けるかな。

<何だか分からない今日の名文句>

健康はいらんかね

7月14日(火) 新山記者、逝く

 早朝、野暮用から帰宅してメールを点検すると「編集委員の新山恒彦さんが11日朝 亡くなりました。55歳でした」という訃報。心配だったことが現実になった。

 真面目な男だった。青森弁をちょぴり気にしている男だった。僕とは違って、資料を 大切にする記者だった。オウム騒動の時、彼はオウムを信じる人々を徹底分析した。良 い仕事だった。

 5月からウェブサイト「毎日インタラクイェィブ」に連載していた「胆管がん放浪記 」は17回で終わる。

 告別式は15日午後1時半から千代田区麹町6の5の1、聖イグナチオ教会。

 佐藤健さんに続いて、また同僚が逝く。誰でも、必ず死ぬ。誰でも、いつか、覚悟す る。

 童謡「夕焼け小焼け」の気分だ。落日。西に浄土がある。故郷がある。おててつない で、みな帰ろう、か。

 「おけら街道」を書く。ボートピア浅草六区の誘致の話を書く。某参院委員の胡散臭 い話もあるが、それには触れず、まあ、こんな話もあるという程度にした。

 「ここだけの話」はイラク競馬の話。これは特ダネ?かな。

 午後4時から「船の科学館」で日本財団の定例記者会見。久しぶりに時間があったの で、顔を出した。会見の前に、曽野綾子会長に挨拶。「お元気で」と言われるが、彼女 の方がよっぽど元気だ。顔色がつやつやしている。

 毎日OBの歌さんにも会った。「一緒に海外旅行にいこうじゃないか」と誘ってくれ た。歌さん、世界を股に掛けている。笹川陽平さんには残念だが、会えなかった。

 記者会見で、はじめて「銃撃ビデオ」を見た。東シナ海での工作船銃撃戦を海上保安 庁の職員がビデオに納めたもの。途中で、映像が切れているのが、生々しさを強調して いる。工作船の男が「あっちへ行け!」と日本語で怒鳴っているのが分かる。

 工作船見学と記者懇談会は欠席して、夜、隣接県で野暮用1件を済ます。

 残念ながら、新山さんのお通夜に行けなかった。

<何だか分からない今日の名文句>

カラスと一緒に帰ろうよ

7月13日(日) 奇妙な理髪屋

 11日の金曜日。午前、東京大学病院眼科で検診。右目の白内障を受けてから3年。 左眼も何時かは手術する可能性があるが、視力は変わらない。

 夕方、野暮用で訪れた某地方都市で、妙な経験をする。

 駅から700メートルぐらい離れた商店街。その入り口にある古びた床屋。気温が3 0度を越えた分だけ、汗をかいたので、洗髪、ひげ剃りを頼む。お客は僕だけ。

 50がらみのオヤジが奥から出てきて「シャンプーと髭そり?はい、結構ですよ」。  世間話をしながら、頭を洗ってもらってたまでは、良かった。

 ところが、髭を剃り始めたからおかしくなった。オヤジが“揉み上げ”を剃ったら、 ジャリとした感触。何か、剃刀が錆び付いている感じ。オヤッと思っていたら「緊張し てしまって、剃れない」と言うのだ。幾分、青い顔をしている。「緊張しているんで」 を連発する。

 突然、こんなことを言われても……。

 そのうちに、電気バリカンを持ってきて、これで髭を剃る、と言い張るのだ。電気髭 剃り器の代わりに、電気バリカンである。

 びっくりした。このオヤジ、クスリでも飲んでいるのか。

 丁重に断ると「それなら髭剃りのお代は貰わない」という。「それで結構です」。長 居は出来ない気持ちである。

 料金の段になった。「2800円です」と平然と言う。頭を洗っただけで2800円 ? どういうことだ。地方都市では調髪、シャンプー、髭剃りで2000円以下のとこ ろもあるというのに。

 「触らぬ神に祟りなし」と思い、2800円を払って、店を出た。

 あえて、その都市の名前は伏せるが、帰りに、商店街の裏手にソープランドが林立し ているのに気づいた。この種の店の前に、ヤクザ屋さんの送迎用自動車が何台も止まっ ている。この土地柄に「奇妙な理髪屋」が関係するのか。奇妙な床屋体験。ああ、恐ろ しい。

 週末は野暮用。遊びと言えば、テレビで福島競馬を見るくらい。それも高校野 球の地区予選が始まったので、メインレースしか見れない。しかも馬券は3連復を狙っ たので、二日間、惜敗続き。

 まだ日曜は梅雨寒む。早く、天気にな〜れ!

<何だか分からない今日の名文句>

触らぬ髪に祟りなし

7月10日(木) 「不肖・宮嶋」の意地

 「不肖・宮嶋INイラク」が送られてきた。それこそ日本一の隠し撮りカメラマン・ 宮嶋茂樹さんのイラク戦争記録。「死んでもないのに、カメラを離してしまいました」 とサブタイトルがついている。

 40日の戦争は長かった、と書く彼は「シノギのためイラクにいる」とハッキリと自 分の立場を明確にしている。それが好きだ。

 プロの意地。ガキのカメラマン、大新聞のカメラマン(現場にいないという意味のカ メラマン)に「プロの仕事は、こういうモノだ」と誇らしげに作品を見せている。

 壮絶な写真集だ。テレビでは見られない光景が幾つもある。僕が一番「痛烈」を感じ たのは「最初の誤爆犠牲者」。バグダッドの西270キロのハイウェー沿いのドライブ イン。ブッシュ大統領の最後通告6時間前に電話中のヨルダン人の頭上に一発。そのま まぺちゃんこ……というコメントがついている。

 これは凄い写真だ。

 彼はあとがきで、毎日新聞カメラマンのアンマン爆発を皮肉っぽく書いている。「フ リーのカメラマンが同じことしたら、恩赦なんてなかったろう」という感想を述べてい る。フリーの人の正直な感想だろう。

 「こんなことはない」と言えないのは、僕が「現地」にいないからだろう。「現場」 は強い。ジャーナリスは現場にいないと何も言えない。

 平和ボケ記者は、この真理を学んで欲しい。

 午後、TBSで野暮用。それからJRA六本木事務所近くで、これも野暮用。

 夕方6時、文京区小日向の日輪禅寺で富士乃家の通夜。彼女が生前、新たに購入した 墓がある。

 ナベちゃんに聞くと、彼女、5月ごろ風邪をこじらせて入院。4週間で退院したが、 歩けなくなった。食欲もなく、無理矢理、ヨーグルトを流し込んでいたそうだ。

 同居人のナベちゃんが、9日未明、帰宅して「おむつを取るか?」というとこっくり 。いつもより、尿の量が多かったのが気になった。

 午前5時ごろ、ベットの隣で寝ていたナベちゃんが、目を覚ます。薄目を開いている いるように見えたが、身体をさわると、体温が異常に低い。

 あわてて、町医者を呼ぶと「ご臨終です」。

 あっけなかった。

 93歳。まあ、大往生だ。ナベちゃんも精一杯、尽くしたハズだ。

 毎日新聞の仲間も7人参列。花柳界などで女性の参列者が多かった。

<何だか分からない今日の名文句>

「現場」には負ける

7月9日(水) 富士乃家さんの一生

 朝一番で、ナベちゃんから訃報の電話。「富士乃家さんがなくなりました」。

 ナベちゃんは、かつてのサンデー毎日の仲間。今はIT関連部門の管理職をしている。 最近は彼が忙しくて、あまり会う機会もないが、ごくごく親しい間柄だ。

 彼が下宿している芸者置屋の富士乃家さんの女将が「朝起きたら冷たくなっていた」。93歳だった。

 彼女は長いこと、九段で芸者置屋を経営。同時に芸妓組合の経理をつい最近まで任されていた。

 そればかりではない。見所のある人物を下宿させる趣味?があって、緒形拳さん、なかにし礼さんを下宿させた。 3人目下宿人がナベちゃん。特別、気があったのか、親子同然の、というより「あばあちゃんと孫」のような生活を続けていた。

 そんな付き合いで、僕も脳卒中で倒れる前まで、夜遅くなると、竹橋の毎日新聞に近い「富士乃家」 に転がり込んで、泊めて貰ったことが何度もある。

 ナベちゃんも、僕も「芸者置屋から出勤!」などと誤解されたが、口うるさいおばあちゃんの 「下宿」から出勤していた、という訳。

 厄介になった。でも大往生。ナベちゃんを「優しい奴」と看破したのが、彼女の「晩年の幸せ」を約束した。 ナベちゃんは、最後まで、本当の親に対するように介護し、孝行した。

 これからは、彼、ライフワークの「聖徳太子研究」に全力を注げるだろう。

 午前中、東京専売病院で検診。血圧良好。前回、大山ドクターを「太りましたね」とからかった。 これが気になったのか「2キロ痩せた」と大山ドクター、胸を張る。当方は太るばかり。減食しなければ。

 と言いつつ、麻布十番で、てんこ盛りの中華定食。俺、食欲がありすぎる。

 JRA六本木事務所で若干の取材。

 仕事場に帰ってから、雑誌類の点検。「創8月号」がおもしろかった。「武富士『盗聴』疑惑と警察癒着」が おもしろかった。この事件の展開は?

 「信濃毎日新聞を辞めた記者」というのも、おもしろかったが、その元記者さんが言うほど、 信濃毎日は非民主的職場なのか?

 週刊現代7月19日号の「名物記者が退社。さらば朝日新聞!この会社は病んでいる」も同じような“退社もの”。 こちらも「本当なの?」という気もする。

 朝日の「ていたらく」は今始まったことではないが、あまりに官僚的すぎないか。 もし、本当なら、僕だって辞めたくなるだろう。毎日には、こんなことはない。

 しかし、である。この種の“退社もの”は一方的で、必ずしも、信頼が置けない。

 大体「名物記者」という見出しが嫌だ。新聞記者が抗議の退社をすれば、必ず「名物記者」になる。 女性が泥棒をすると「美人ドロ」と書かれるようなものだ。

 スクープ連発の記者なら「敏腕記者」と表現するが、それほどもないと週刊誌は「名物記者」と書く。 セクハラ退社で「問題記者」と書かれるのよりましだが「名物記者」となって見出しにあると、書いてあることが「?」

 首を傾げてしまう。

 早稲田の友人・鶴谷俊昭君から「江浄寺悲恋物語」のビデオが送られてきた。彼が住職を勤める清水江尻 「江浄寺」には、数々のエピソードが残っているが、それもその一つ。彼が悲恋物語を書き留め、それを舞台にした。 そのビデオ。「1本しかない」と言うので急いで見て、返送する。

 泣ける芝居だ。が、今の世相に合うか。微妙。彼は中央の劇団で芝居にしたいと言うのだが……。

 その後、特別のこともなく「競馬はロマン」を書き上げ、十時前に就寝。何か、穏やかな日だった。

<何だか分からない今日の名文句>

産みの親より、下宿の親

7月8日(火) 浮き世積もり哲学

 朝、隅田川沿い空き地に「りんどう」が咲いているのを発見した。亡くなった芥川賞作家・ 畑山博が、カラオケスナックに行くと、必ず「りんどう咲いて、恋を知る」と大声で歌ったのを思い出した。

 「おけら街道」「街角スケッチ」を書き上げてから、出社。

 メールボックスにボーナスの明細書が入っていた。いつも「うちの会社のボーナスは ……」と 愚痴が出るのだが、このご時世、ボーナスが出ない会社もあるから、感謝しなければならない。 経営者に感謝するというのではなく、少ない陣容で、目一杯、働く、ボーナスの原資を稼ぐ仲間に感謝する。

 毎日新聞の記者は恒常的に給与が安から、ごく普通の庶民感覚でものが書ける。これも感謝しなければ……。 高い給料で、お上の発表文を何の疑問もなく、記事にする奴とは大分違う。我々が一流のジャーナリストで いられるのは清貧だからだ。

 労働組合の機関誌「われら」が中高年アンケートを特集している。55歳から段階的に下がり始める賃金。 同じ仕事でも給料がカットされる中高年に冷たい現実。これをどう克服するか、 我が社だけでなく、労働組合共通の課題。ボーナスが高い安いの時代ではない。定年を迎えたキャリア・スタッフを、 出来るだけ平等に雇用するか、その辺に会社と組合の団結が必要だろう。

 「平等の清貧」を守るために。

 同僚から、ガンと闘っている同僚記者の近況を聞く。意識がない時があると言う。何の力にもなれないのが辛い。

 社内では数件の電話取材。

 夕方、切れた!電話の相手に怒りをぶつける。まあ、コミュニケーション不足が原因だが、 それにしても……切れた!10年に一度ぐらい、癇癪が起こる。これも仕方ない。ただただ、腹が立つ。

 治った積もりでも、治らないのが癇癪。

 こんな時、御府内八十八カ所七十四番 深川閻魔堂法乗院の「浮き世積もり哲学」を朗読する。

 高い積もりでも、低いのが教養

 低い積もりでも、高いのが気位

 厚い積もりでも、薄いのが人情

 薄い積もりでも、厚いのが面の皮

 強い積もりでも、弱いのが根性

 弱い積もりでも、強いのが自我

 なるほど、なるほど。これを朗読すると、思わず、吹き出してしまって、気分が収まる。

 まあ、俺の方が年かさだから、腹の立つのも、この位にするか。

 夜、たまちゃんに頼んだ、大井のジャパンダートダービー。ささやかにプラス。 腹が収まると、何故か、幸運が来る。

<何だか分からない今日の名文句>

多い積もりでも、少ないのが分別

7月7日(月) 清水〜港の名物は?

 清水入江・巴川柳橋畔の「リバーサイドイン玉川」で目を覚ます。このホテル、 日本料理「玉川楼」の経営。「玉川楼」はペルー来訪の幕末、江尻の宿、今の清水銀座で、 鰻やを始めた老舗で、稚児橋沿いの「楠楼」に次いで、清水で2番目に古い店である。

 朝飯をすまし(これはうまかった)、小雨の中、清水銀座を通りぬけJR清水駅まで散歩。 駅舎は出来たばかりのモダンな建物。エレベーターがあるので助かる。

 駅前で若者がハンドマイクで「民主党衆院選候補○○です。テレビ××の『タケシの △△』 にゲスト出演します。官僚批判をします」と、こればっかり、大声で喋る。実にうるさい。

 彼が配るビラを見るとテレビ番組の予告。東大卒、留学歴、大蔵省勤務の経歴が長々と書かれている。 具体的な政策はなくて、ただ「日本を元気にします!」と書いているだけ。

 マイクを握りしめ、タケシのあの品の悪い番組に出ることばかり宣伝する。品位の欠片もない。

 東大という権威、旧大蔵省という権威、テレビという権威。この程度の権威を「宝」と勘違いしている。 テレビに出れば国会議員になれる、とでも思っているのだろうか。

 政治家の「朝立ち」は、意味があると思う。しかし、これでは風俗のビラ配りと同じだ。

 あまりに五月蝿いので、つい「ご苦労様です。でも……」と批判めいたことを話すと、36歳の彼は 「えっ、政策ですか。今日はテレビ出演をPRするのが目的ですからね ……」と当方を見下したような顔だった。

 次郎長の町・清水には、自分のことより、他人のことを考える男が似合うのだが…… 。 次郎長は明治17年2月の博徒一斉摘発で逮捕されている。当時64歳。自由民権運動に博徒が加わるのを恐れた 警察が予防検挙したものである。ヤクザだって「自由」のために働く。

 テレビで顔を売るのが、政治家の務めでは断じてない。

 午後1時、早稲田の友人・鶴谷俊昭君が住職を勤める江浄寺で講演。住職は彼岸、盆の法要の時、 お経をあげる前に、色々な人物に法話をして貰う。春の彼岸は津軽三味線の白井勝文さんが勤めた。

 「大病を克服したお前さんの話を檀家に聞かせたい」と言ってくれたので、引き受けた。

 この寺には徳川家康の長男・岡崎三郎信康の墓がある。家康に殺された長男の墓。その物語は実におもしろい。

 檀家総代の山下家の奥さんが色々と説明してくれた。ちなみに奥さんはプロ野球の横浜ベイスターズ の監督・山下大輔さんのお母さんだ。「チームの不振で倅が苦しんでいる」とお母さん。心配は分かるが、 大輔さん、聞くところによると、お母さんが心配するほど、柔ではない。「応援します」と約束。

 雨が強く降っていたが、本堂いっぱいの檀家さんで大盛況。当方もつい力が入り、一時間がアッという間。 みなさん、熱心に聞いてくれた。ただ「坊主」「坊主」を連発したので、住職から「坊主は止めろ!」と抗議を受けた。ゴメン。

 住職の奥さんが「寝ないで、一晩中、牧さんの話を聞きたい」と最高級のお世辞を言ってくれた。 奥さんが出前を取ってくれた「末廣鮨」(清水江尻東2−5−28、TEL66−6083)の上寿司。 実にうまい。本当に、これはうまい。王さんが東京からやって来る。清水に行ったらここだ。

 東京へ帰って、約束の野暮用を済ます予定だったが、大学通信の社長さんが風邪で順延。仕事場に直行。 「ここだけの話」のゲラ直し。

 掲示板を見ると「二代目魁3周年、おめでとう」の書き込み多数。ありがとう。

<何だか分からない今日の名文句>

5周年まで、頑張るか。

7月6日(日) たなばた

 明日7日で「二代目日本魁新聞社」は創刊3周年を迎える。夢のようだ。

 3年前は一日のアクセスが精々、100件。それでも日記を書き続けた。長屋の面々、ありがとう。

 感謝の気持ちを込めて、 社説欄に「創刊3年、ありがとう」を書いた。今後の方針らしきものも書いた。

 この社説面は技術的に更新に手間が掛かるので、7日までに間に合うかどうか。 更新役のJr.&本間、頑張ってくれ。

 4日の金曜日、朝、プリンターのインキの黄色が切れたので、万世橋北詰めのLAOXに買いに行くと、 パチンコ屋に変わっていた。やはりITがらみは、すべからく景気が悪いのか。

 共産党の志位委員長が例の禁酒宣言を撤回した。ついこの間、本部党員に対し「自宅以外の飲酒禁止」 を徹底させたが、委員長さま、2日間考えた末「私の勘違い。セクハラと飲酒は別個の性質だった」 と話したらしい。当たり前だ。こんな馬鹿げた記者会見に付き合わされる記者連中も気の毒だなぁ。

 「ここだけの話」は政治家の妄言について書こうと思う。

 5日の土曜日は快晴。友人の「みのもんた」が、家業の水道屋の談合疑惑でピンチにたっている。

 別に彼の会社が嫌疑を掛けられて訳ではなく、大手4社の談合容疑を裏付けるための証拠集め。 家宅捜索があったから、スポーツ新聞が騒ぐことでもないだろう。もう少し推移を見なければ、これは分からない。

 有名人は良きにつけ悪しきにつけ、特別扱いされるから気の毒。

 6日夜。友人の求めで清水に行く。早稲田新聞学科の友人は、実家の寺を継いでいる。 7日のお盆の法要に、前座に講演をしてくれ、という注文。断れない。

 ちょうど、清水は4日〜7日まで七夕まつり。竹飾りのコンクールが賑やかだ。 銀座通りを歩くと「赤い靴」のきみちゃんのパネル展が行われている。清水はきみちゃんの故郷だった。

 方針転換。「ここだけの話」はきみちゃんのことにするか。

<何だか分からない今日の名文句>

一度の縁を大事に

7月3日(木) イナダイ、妄言また妄言

 共産党が本部党員に対し「自宅以外の飲酒」を禁止した。

 ああ、何という非人間的狼藉。有田さんが2日の日記で書いていたが、飲酒禁止は、その昔、 宮本顕治が下戸だったから生まれた基本的人権略奪行為。飲めにない人間がたまたま「王様」になったから、 日本共産党が禁酒国家になっただけのことである。

 今時、こんな古証文を持ち出すなんて、筆坂セクハラ事件をあくまでも「酒の上」のことに 矮小化させていのか。こすっ辛いインチキ党規キャンペーン。

 お聞きしますが、共産党員は酒を飲むと、即セクハラ予備軍になるのですか。

 僕が初めて酒を覚えたのは東京・文京区高田豊川町の「孔雀」。下宿の前にあった。

 お客の大半は日本共産党のメンバー。女将さんが党員だった。

 大酒を飲み、ただ議論する毎日。ケンカはあったが、セクハラなんてする人間はいなかった。 (僕は彼らから見ると「右翼」と思うのだろう、僕は議論には加わらなかった)

 共産党の若い女性、タケちゃんが2階に下宿していたが、とても恋愛にはほど遠い人だったのを 覚えている。革命戦士は恋にも、セクハラにも無縁で、ただ大酒を食らっていた。その辺が、 全共闘の奴らとは大分違っていた。民青は「歌って踊って恋をして」と言ってはいたが、 男女のことは不器用だった。まあ、少しぐらいはセクハラもあっただろうが、それも、ごく普通の レベルだった。酒を飲むと狼になるのは、いるにはいるが、それは主義主張と無縁。

 酒が飲めない政党なんて、北朝鮮より程度が悪い。

 このところ、政治家の妄言の数々。どうしたことだろう。太田、森、福田……集団レイプは健全、 挑発的な女が悪い……集団レイプは、いつの時代でも犯罪だ。女が挑発的なのは、いつの時代も同じだ。 俺なんて、挑発的な女どもの間を「ごめんなさい、ごめんなさい」とすり抜けて来たもんだ。(冗談)

 もてない政治家が「挑発的な女性」の手玉に取られたからと言って「まともな女性」まで 悪者にするなんて……情けないじゃありませんか。

 その昔、江戸っ子はルールに沿って女遊びをした。自分のカネで遊び、すべて合意のお遊び。それがルールだった。

 ところが、明治になって、薩長が東京へきてから、変なことになった。権力にすり寄る「挑発的な女性」 をどう扱うか分からず、そして薩長官僚の集団レイプが横行した。

 明治政府の要人、明治維新の英雄のような人までが、僕の生まれた柳橋で芸者を集団レイプした。 芸者なら何をしても良いという発想である。

 それを許した料亭が栄え、僕の実家のように「江戸っ子会」を作るような粋人の店は傾いていった。 何故か、ワイロを貰う薩長に庇護された店が生き延びた。

 薩長が、江戸の文化をめちゃくちゃにした。

 その「イナダイ」の発想が未だに「妄言」を生む。「イナダイ」は田舎代議士の略。自分のお金で飲まない、 自分のお金で遊ばない、その癖、威張っている代議士を、母は「イナダイ」と言い、嫌っていた。 (「イナダイ」は「地方出身の政治家」という意味ではない)

 その流れが「イナダイ」の流れが森さんであり、女癖の悪い中川さんであり、その典型が山拓さんである。

 勘違いしている人がいるので、言って置かなければならない。変態セックスが悪いのではない。 自分のカネで遊ぶのではなく、賄賂で女を抱くのがいけないのだ。

 自分のカネで飲め。自分のカネで遊べ。そうすれば「挑発的な女性の正体」が分かるというものだ。

 原稿の合間に、NHKの「お江戸でござる」を見る。杉浦日向子さんが良いことを言っていた。 「江戸時代はバツイチ、バツニはごく普通。4婚、5婚もあった」と解説していた。その通り。離婚の段取りが江戸にはあった。

 「貞女、二夫に交えず」と言う道徳を作ったのは、薩長である。軍拡の政策を取るには 「銃後の貞淑な妻」がどうしても必要だったからだ。

 セクハラ、集団暴行で露見した政治家たちの本音。

 薩長官僚主義の流れにある「人間蔑視」。賄賂に群がるイナダイ主義の「女性蔑視」。 これが日本を戦争の道に向けようとしている。

 暴言の背景には、好戦的ムードが隠されている。

<何だか分からない今日の名文句>

挑発女性は何でも知っている

7月2日(水) 石原さんのウルトラC?

 オウム裁判。この日で、サリン生成役・土谷正美被告に対する証拠調べが終わり、オ ウム事件は一審段階の審理がすべて終わった。何というスローモー。事件が風化している。

 恐ろしいことだが、土谷被告は相変わらず、麻原に対する「帰依」を強調した。アー レフと名前を変えただけで、オウムの実態は少しも変わらない。

 前々から聞いた話だが亜、反小泉勢力がだらしない中で「石原さんのウルトラC」が また囁かれている。

 盟友・亀井さんの「自爆テロ立候補」を勝手に走らせておいて、国民に閉息感が充満 した頃、慎太郎がこんどこそ「石原新党」を立ち上げる。

 衆議院が解散しなければ、石原さんが国政に加わることは出来ない。しかし、そこに ウルトラCが隠されている。

 その秘策は「10月26日の一括国政補選」にある。

 東京8区の石原伸晃が、突然、辞任して、父・慎太郎が東京8区の補選に立候補する 。そして圧勝する。親子鷹選挙?

 「石原新党」はその数は少ないが、とにかく誕生する。同時に国民に解散を求める雰 囲気が生まれる。そして解散。自民惨敗。慎太郎、伸晃はともに当選して「石原新党」 圧勝。それから先は……小泉+菅民主党、石原+鳩山民主+小沢自由……どんな形であ っても政界再編。そして……。

 とても信じられないシナリオだが、何が起こっても、不思議でないのが政界だ。まし て、石原は「国難に立ち向かう」と言っている。

 東京都知事選に立候補を決めた時、野中、亀井と相談した時、小泉さんは「知事にな っても、総理大臣になれる」という感触、可能性を持った。だから、このウルトラCを 馬鹿にしては出来ない。

 出社前に、深川閻魔堂で母を墓参。銀座松屋で中元の手配。このデパートでは7月6 日までに注文すれば、ビールはかなり安くなる。

 出社すると、同僚記者の転院の話。病状が悪いのかしら。心配。

 社会部の若い記者にレクチャーすることが出来たので、仕事場に来て貰う。ビールを 飲みながら午後10時まで。

 その後、苦悶する「痴呆グループホームレポ」の原稿に取りかかるが、なかなか進まない。

 テレビを見たり、CDを掛けたり……競馬欄を見たり……宝塚記念は松井大活躍の後 、背番号55にあやかって5−5の大穴。今週はベッカムの背番号23で、横連動の2 −3−×の3連復で行くか、なんて考えながら寝る。

 明日になれば、また、筆が進むだろう。

<何だか分からない今日の名文句>

石原もケントク穴馬券

7月1日(火) 橋本派は四分裂?

 6月26日、石原慎太郎が首相官邸を訪ねた時「(秋の総裁選は)純ちゃんに決まっ ているじゃないか」と話した。これで、小泉再選のシナリオが出来た、と思うのが、大 方なのだろう。会う人、会う人、「反小泉勢力のとん挫」を指摘する。

 6月18日のキャピタル東急で開かれた反小泉四派連合の出席者があまりに少なすぎた。

 現在の反小泉連合は、亀井静香によれば「橋本派+江藤・亀井派+堀内派+河野グル ープ」。単純に計算すれば、所属議員は220人を越える。それなのに、キャピタル東急 の決起大会の出席者は30人足らずだった。橋本派からは竹下亘だけが出席している。

 反小泉4派の温度差はあまりに大きすぎる。

 しかし、問題は「四派」の別に「四派」が存在することだ。「橋本派内部の4派」である。

 橋本派は4派に分裂している。(1)橋本龍太郎一派(2)野中・古賀(堀内派)連 合(3)青木率いる竹下譜代組(4)村岡率いる「建設族」グループ。100人いる橋 本派は、いまやバラバラ。これを見ている小泉は強気なのだ。

 この「橋本派の四派」が一致団結しなければ、本当の反小泉勢力は生まれない。総裁 選候補の一人、堀内さんは「『運』という字は軍をはこぶ、と書く」と言っている。「 軍」がなければ「運」がこない。

 夜、仕事場で競馬サークルの長老を囲む会。そこでも、ちらっと政治向きの話も出て 「橋本派が一本にならなくては」という観測になってしまった。

 政策に疎く、そこで丸投げ。支離滅裂な、矛盾だらけの「精神論」を言い続ける裸の 王様・小泉さん。「裸の王様」と、バラバラになった「元王様」の喧嘩にならない喧嘩 をチラリと横目に見ながら官僚たちは、ほくそ笑んでいる。着々と地盤を再構築している。

 彼らは「裸の王様」の味方をするフリをしなから、内心「構造改革なんてやらせない !」とあざ笑っている。

 農水省の人事異動を見ろ!

 狂牛病騒ぎで更迭された人々が、そろいもそろって返り 咲いている。これを、どう見るのか。財務省は小泉政権になってから、やりたい放題だ。

 「裸の王様」は官僚に舐められている。王様を支持している国民は、結果的に騙されるだろう。  言っておくが、だから、現時点の「反小泉」が、国民を騙さない、という保証なんて 全くない。それが、悲しむべき日本の現実。

 スポニチ「おけら街道」を書き上げ、深夜、遊びに来たセガレと一杯。奴の人間観察 力に舌を巻く。どんなヤツでも成長するんだ、と安心する。

<何だか分からない今日の名文句>

騙し騙され、振り振られ

6月30日(月) いかさま!金融庁

 週刊現代(7月5日号)に「生保予定利率引き上げ・金融庁の陰謀バラす」というシ ョッキングな記事が載っている。

 「なんと現役の金融審議会委員が立ち上がった」とサブタイトルがついている。審議 会は政府の言いなり、という常識を破った行動だ、というのだ。

 実は「現役の金融審査会委員」は知り合いの高橋伸子さん。生活経済ジャーナリスト である。

 彼女が力説するのは「保険業法の一部を改正する法律案」の“いかさま”である。

 この法案は「保険会社は一定の手続き後、当初約束した予定利率(保証利回り)を3 %まで引き下げることが出来る、という法案だ。何回か、この法案のいい加減さ、を指 摘しているが、高橋さんも「政府・金融庁は契約者保護のための選択肢を増やす、と説 明するが、これは金融庁の責任逃れで、まったく、国民、契約者は保護されない」と、 そのカラクリを詳しく述べている。

 週刊現代に悪いので、中身は書くのは、はばかれるが、彼女が言うには「生保の3利 源(生保本業の利益、死差益、利差益)」が情報開示されずに、法案が作られている。 銀行の不良債権額を情報開示することなく、結局、公的資金をぶち込む、あのやり方と同じだ。

 そして、政府の無理矢理の利率引き下げ→優良契約者の離反→生保の破産→アメリカ の保険業界制圧。このいかさま。是非、読んで貰いたい。

 小泉さんの経済音痴を良いことに、官僚のやりたい放題。高橋さんはもう我慢できな いだろう。覚悟の上で、政府に盾をつく。もしかすると、この記事が原因で、今後、彼 女の商売に影響が出るのではないか、と気が気ではないが、高橋さんは、あえて「金融 庁のいかさま」を勇気を出して批判している。

 気がつけば、ここはアメリカ合衆国、ということが、銀行だけでなく、保険でも、土地でも、起こる。

 官僚は「脳天気小泉」の傘の中で、やりたい放題。マスメディアは力不足で、適切な 批判勢力になり得ない。これが、日本国の不運。僕を含め、軟弱だ。

 午後、JRAで「宝塚記念で2億円ゲットおじさん」を取材する。これはスポニチ「おけら街道」で書くつもり。

 夜、プレスセンターで競馬仲間と夕食会。楽しかった。

<何だか分からない今日の名文句>

審議会は隠れ蓑ではない