編集長ヘッドライン日記 バックナンバー
2003.12月

12月24日(水) 史上初「28日の有馬」

 暖かいクリスマス・イブ。朝、掲示板の常連の一人から「新鮮野菜」の宅急便が届く 。メインは深谷ネギ。太い。山芋は黒々と色つやが良い。大好物だ。

 神戸の知人から名物クッキーも届いた。「花屋の親父」のシクラメンに始まって、今 週は思いもよらぬプレゼントラッシュ。こんなことあるんだろうか。

 昼、以前、仕事場のあるビルにいた知人が「イカそうめん」を持参してやって来た。 僕の好物を覚えていた。

 リタイヤしてから、毎朝、通学路の交通整理をしているらしい。元気だ。「牧さんに 会うのが楽しみで」と言ってくれた。

 暮れの野暮用は続く。まだまだ続く。暇を見つけて、愛子、竜生、優之介にやる「お 年玉」を準備する。今年も、あと一週間か。

 出社。たまちゃんから「逆襲のVライン・3」の特製本を頂戴した。例の必殺本のシ リーズ第3弾。すでに発売中の実物は貰っているが、僕には特装本がプレゼントされる 。

半型サイズ 天地208ミリ位×小口142ミリ

様式 上製丸背、繰出し無線綴じ、三方金付け(本      金箔)

花布 山羊革(ゴート)エンジ色、手揉み仕上げ、

   芯ボール(PCC28号)三方面取り

箔押し 背(本金箔)

見返し 輸入マーブル紙(フランス)

    表紙の色と調和、巻見返し(裏打ち寒冷      紗)

グラシン紙 厚口31kg

   これが、改装仕様の内訳である。こんな立派な本を出す人は流行作家でもまずいない 。競馬必勝本の製本に、これだけの誠意が込められているのは理由がある。たまちゃ んの親友に大口兄弟がいる。大口製本印刷KKの社長と専務。彼らは義に厚い、たまち ゃんを信望している。この厚い絆が「サンデー毎日・イエスの箱船 大スクープ」を生 んだのだが、これ以上は取材源の秘匿で書けない。が、ともかく、たまちゃんは信ずる に足る「男の中の男」である。

 そして、数少ない特装本が僕にプレゼントされるのは、この必勝法を僕が「Vライン 」と命名したからだろう。

 さて、28日は有馬記念。実は「28日の有馬」は史上初である。農水省は地方競馬 の開催を考えて「12月28日以降に最終日曜日が来れば、中央競馬はその前の日曜日 に開催すること」と指導(実は命令)していた。

 これは、2点で間違っている。規制緩和に逆行している。そして紅白歌合戦のよう な「暮れの風物詩」が22日では、あまりに大晦日と時期が離れ「暮れの風物詩」とは 言い辛い。

 2年前の競馬運営委員会で、僕はそう主張し、一度「28日の有馬」をやってみよう 、と呼びかけ賛成を得た。「規制緩和に逆行」という言葉が効き、農水省は「28日有 馬」を認めた。JRAの幹部は「運営委員会が農水を動かしたのは、これまで記憶にな い」と言ってくれたが、それが実現した。

 もちろん、28日では故郷に帰ってしまうので……という反対意見もあるが、有馬は 「歳時記」として、国民に定着されるべきだ、と僕は確信する。

 売り上げが、その時々の天候、メンバー、それに景気に左右される。仕方がないこと だが、ちょっと気になる。

 皆さん、競馬に無縁の方も、馬券を一枚(100円。宝くじより安い)買って、年の 瀬を楽しんでくれ。

 もちろん、馬券を買わない人には「十番勝負」がある。今回は激戦、有馬記念だけ でも参加できる。ちなみに毎日新聞競馬班室長のたまちゃんは、現在、5位にいる。ち なみに、僕は0勝9敗。(実は一回、勝ち馬を投票したはずなのだが、「十 番勝負」を管理しているJr.が「投票した形跡なし」と言うので、涙を飲んでいる)

 有馬で大穴が出れば、はじめて投票した人でも優勝出来る。全員、参加せよ。

<何だか分からない今日の名文句>

暮れには暮れの夢がある

12月23日(火) ああ、忙しい

 クリスマス・イブ。雲一つない。朝、TBSラジオで相手を勤めてくれている江 口ともみさんからメリークリスマスの花。ありがとう。

 何となく、ウキウキした気分だが、野暮用山積。ああ、忙しい。

 日記を書く暇なし。

 簡単に記録しておきたいことを列挙する。安倍晋三さんが中曽根さんに会った。(2 2日)安倍ちゃん「参院選、よろしく」と頭を下げる。その意味は行く行く分かるはず 。

 ドイツの「海外派兵承認法の簡略化」。ドイツは各党に通知して7日以内に5%の反 対がなければ、議会で採択せずに派兵出来る。8000人の派兵のドイツ。文民統制形 骸化。ドイツも好戦国になるのか。

 韓国はアメリカの要望で、追加派遣6000人? しかも人道支援ではなく。治安維 持に参加させられる。

 次は日本。当然「治安維持軍」になる道筋が用意されている。それを小泉さんは、口 が裂けてもいわないだろう。

 夕方、福島の友から珍しい高原ビール、競馬サークルの長老から、いつもの牡蠣。関 西の病院長からタラバ蟹。忙しいけど、宅急便がくる度に、歓声をあげる。

 友達が宝。平和が宝。この平和を守ろう、と韓国の学生は立ち上がっているのに。

<何だか分からない今日の名文句>

いつか、来た道

12月21日(日) 自衛隊員が遺書を書く

 神崎さんがイラクで会見。「限られた範囲の視察だが……」と言いつつも“安全宣言 ”。これで公明党の理解を得た、と小泉さんは言うのか。

 僕が聞く限りでは、クウェートの日本人のマスコミは外に出て取材することが出来ず にいるという。本当だろうか。NHKの現地中継の背景を見れば、彼らがどこで中継放 送しているのか良く分かる、と情報通は言う。ホテルの奥深い部屋で、現地スタッフの 情報を集めて放送しているのだという。内戦状態のような緊迫。

 サムワはテロが移動する時、連絡を取り合う都市で「とても安全なんて言えない」と 言う人もいるのだが……。いずれにしても、外務省は的確な情報を持っていないのだろ う。情報のない外務省がただ「ここで派遣をやめれば、アメリカは……」と官邸を脅し ているのだろう。

 彼らは「アメリカ合衆国国務省日本支部」なのだから。

 世論調査では「派遣反対」が少なくなっているが、自衛隊員の中では遺書を書いてい る人もいるという。その温度差。自衛隊員はただただ政治に翻弄されている。

 毎日新聞は22日付けから「道路国家・第一部改革の裏側」を始める。小泉改革は、 手練手管の「官」と「族」に負けた。「丸投げ」が、どんなに無責任だかよく分かる。 なかなかの力作になるらしい。読んでくれ。

 今週は有馬記念ウイーク。秋の十番勝負の争いは熾烈だ。1位ヒロシ4770ポイン ト。2位グランバ3760、3位木ノ端3500、4位たま3420、5位元調教師。 誰にも逆転のチャンスがある。

 5000円以上の大穴になれば、僕のような、現在下位でもトップになれる 。有馬は荒れる。

 ロマン掲示板で、みなさんの推理を聞かせて欲しい。

<何だか分からない今日の名文句>

「人道」という名の押しつけ

12月18日(木) 月55本の特ダネ

 今朝、「ゆうLUCKペン第26集」が送られきた。毎日新聞記者OBが中心になっ ている同人誌。僕はまだ現役だが、会員の隅に名を連ねている。行く行くOBになって 、モノを書く場がなくなったら、ここを発信地にしよう……と先輩に誘われた10年ほ ど前に会員になった。まだ、インターネットなどない時代だった。

 同人ではないので、原稿を書いたことはない。ただ、会費を払って、先輩の思い出を 読ませて貰うだけで十分。勉強になるのだ。

 今回の特集は「全舷上陸」。これは海軍用語。「そろって休める日」という意味であ る。

 軍艦は行く先々の港に寄港しても、任務の特殊性から、乗組員全員が一度に上陸する ことが出来ない。そこで半数ごと上陸する。左舷上陸。右舷上陸。ところがたまに左舷 、右舷とも下船して全員で英気を養う。その日のことを「全舷上陸」と言う。新聞記者 が全員、休める日。我々はその日、一泊旅行をして大宴会をする。その「全舷上陸」の 思い出が今回の特集である。

 今回初出場の牧内節夫先輩(元スポニチ社長)が「昭和38年5月4日の社会部全舷 」について書いている。

 この日、彼は佐々木デスクから「これから狭山へ行ってくれんか。殺しだ」と言われ る。のちに冤罪事件となる「佐山事件」の始まりだった。楽しみにしていた熱海の全舷 はフイになった。

 後にロッキード事件を指揮した名物社会部長の牧内先輩は、この報道合戦で見事、勝 利するのだが、おもしろいことは、この原稿で、牧内さんは「佐々木デスク」のことを 褒め称えているのだ。

 「佐々木デスク」は佐々木武惟さんのこと。渾名はブーさん。一世を風靡したNHK ドラマ「事件記者」の「イナちゃん」のモデルである。

 実は社会部時代、先輩から「ブーさんと牧内さんは犬猿の仲」と聞かされていた。二 人とも、ずば抜けた特ダネ記者だが、どうもソリが会わない、と聞かされていた。事実 、二人が仲良く話している場面など見たこともない。

 実は、佐々木さんは僕の高校の恩師、数学教師の義兄で、入社の際「身元引受人」に なってもらっていた。と同時に、牧内さんには、ロッキード事件の頃、ことのほか可愛 がって貰った。何か、複雑な思いで、牧内先輩に「佐々木さんは僕の身元引受人」なん て言えなかった。

 その牧内さんが、佐々木さんのことを誉めている。

 「戦後の事件記者として彼の右に出るものはいない」とまで書いているのだ。

 「夜討ち朝駆けの穴場づくりがうまかった。あるデカさんの家を訪ねた。一升瓶をぶ ら下げていったが、受け取らなかった。するといきなり玄関先にその一升瓶をたたきつ けた。『俺の酒が飲めないというんだな』と捨てぜりふを残して引き上げた。それが縁 でその後は仲良くなった」とエピソードを書いている。

 ブーさんの伝説は色々、聞かされたが、その話ははじめてである。牧内さんは「佐々 木さんが一ヶ月に55本特ダネを書いたのは事実だ」と証言している。凄い。とても叶 わない。神業だ。

 「ゆうLUCKペン」はこんな話がごまんと載っている。新聞研究者には必読の同人 誌である。(編集発行人「ゆうLUCKペン」刊行委員会。株式会社・毎日新聞東京セ ンター気付。TEL03−3216−5489)

 今日は大安。午前中にJR浅草橋駅東口の宝くじ売場の列に並び、ジャンボくじを2 0枚買う。大変な列。

 昼、某女性都議が仕事場にやってきた。ダム建設の件で力を貸してくれ、という話。 勉強する、と約束。

 出社後、夜、大阪から上京中の経済人と会食。もちろん、イラクの話になる。

 情報を交換しあうと……政府はイラクの本当の状況を把握していないという気がする 。それは行く行く、書くつもり。

<何だか分からない今日の名文句>

ライバル、いなけりゃ記者じゃない

12月17日(水) 竹さんの挑戦

 午前中、東京駅近くの「パリミキ」で、注文していた眼鏡を受け取る。菊花賞の儲け で作った眼鏡。少しは若く見えるようになるか。忍び寄る「老い」にささやかな抵抗。

 午後、船の科学館で「二式大型飛行艇譲渡式」。船の科学館に展示されていた世界に 冠たる「最強の飛行艇」が、海上自衛隊に戻されることになった。その譲渡式。

 日本財団の曾野綾子さんから石波防衛庁長官に目録が渡される。その後、記者会見。 おもしろい話、幾つも。行く行く、記事にするか。

 夕方、国際文化会館で「SPN」の発足セミナー。「竹さん」の新しい仕事だ。

 大物演歌歌手Kさんが「暴力団のパーティに出席した」と報じられたのは、20年ぐ らい前のことである。暴力団の幹部の前で熱唱するKさんのビデオを静岡県警が入手し た、という記事。

 この一面トップのスクープ記事を読んで、違和感を感じた。暴力団と芸能人の間柄は みんな知っている。演歌の歌手の大半は、暴力団の庇護がなければ地方興行は出来ない 時代だった。今でも、その温床は残っている。

 暴力団が反社会的な存在であることは十分、知りつつ、彼らと、それなりのお付き合 いををしなければ、演歌は喰っていけない。

 暴力団と対立すれば身に危険が生じる。鶴田浩二は山口組に顔面を切られた。ヤクザ との付き合いは彼らに取って「正当防衛」でもある。

 新聞記者は正義ぶって「ヤクザと芸能人の腐れ縁」と書く。でも、これは正確に時代 をデッサンしていない。喜ぶのはお手柄の警察、というより暴力団の逆宣伝になること さえある。

 本当のことを言えば、政治家の方が、密かに、上手にヤクザの力を借りている。僕は 「暴力団と政治家の腐れ縁」を告発する記事を書いた。芸能人とヤクザの関係は詳 しく書いたが、通り一遍の批判記事にはしなかった。

 だから、このスクープ記事には違和感を感じてならないのだ。困ったことに、実は、 この記事は僕の所属する毎日新聞の一面トップだった。静岡支局の若手記者のスクープ 。良くやった!と誉めてやりたいのだが……ここまで書けば、この騒ぎを思いだす人も いるかも知れない。「Kさん」なんて匿名にしても仕方ない。Kさんは北島三郎さんで ある。

 年の暮れだった。NHKの紅白、レコード大賞の季節だった。彼がレコ大の最優秀歌 唱賞の有力候補になっていた。何か、意図的なリークを感じないわけでもない。何故、 一面トップの大スクープなのか。理屈を言うようだが、ヤクザは演歌を聴いてはいけな いのか。僕だったら書かない。僕がデスクなら、そんな扱いはしない、と思った。

 実はサブちゃんとは面識があった。親しい、というほどではないが、彼の弟さんとは 親しい部類だろう。だから「気の毒だ」と思ったのかも知れない。

 いずれにしても、記事にいちゃもんをつけるつもりもないし、まあ、こんなこともあ る、と思ったが、複雑な思いだった。

 年が明けた。僕と同じような感想を持った人間が何人かいた。新聞は一方的に批判記 事を書いて、あとを知らん顔。何か、嫌な感じだ。「せめて、サブちゃんを励まそう」 ということになった。

 もちろん、音頭を取ったのは毎日新聞のメンバーだった。会場は向島の料亭に決まっ た。知り合いの「さぶちゃんファン」に声をかけ、10数人が集まった。サラリーマン 、会社の社長、スポーツ新聞の記者、先生、広告マン……予想以上に集まった。

 その時、この企てに賛同して、走り回ってくれたのが当時、某大会社の役員だった「 竹さん」だった。サブちゃん、大好き人間。それ以上に情に熱い人だった。

 楽しい宴だった。サブちゃんと「竹さん」と僕は「兄弟仁義」を合唱した。

 芸能人には芸能人の筋がある。記者には記者の筋がある。刑事には刑事の正義がある 。ヤクザにはヤクザの義がある。そんな思いで「兄弟仁義」を歌ったのを覚えている。

 この料亭は「竹さん」の紹介だったように記憶している。多分、会費ではまかなえな い部分を「竹さん」が負担したのではないか、と思ったが、これは「竹さん」の道楽、 と勝手に理解して甘えた。

 その「竹さん」が始めた仕事が「シニア・プロフェッショナル・ネットワーク(SP N)」である。はせ参じなければ、男が廃る。

 この「SPN」は、中高年の知恵、経験を眠らせておいてはもったいない、という「 竹さん」の思いから出発した。

 中高年のスキルを相互に利用するネットワークを構築する。会員は、自分の専門分野 を登録しておくと「力を貸してくれ」という依頼がくる。その逆もある。

 110人の会員が集まった。「竹さん」は「百獣の王」と洒落た。もちろん、僕も会 員なった。

 初セミナーは清家篤・慶応大学教授の講演だった。「定年は会社や社会か決めるので はない。自分で決まるのが引退時期」という先生の持論。おもしろかった。

 さて「竹さん」が始めた、斬新な挑戦は、どんな風に形になるんだろう。

 夜、突然の野暮用が入り、約束していた「南らんぼうさんのコンサート」には欠席。 らんぼうさん、お許しを。

<何だか分からない今日の名文句>

自信と共に若く 恐怖と共に老いる

12月16日(火) 浅草橋の年の瀬

 朝、気温8℃。北風8メートル。朝飯を食べようと蔵前のデニーズに向かう途中、江 戸通りで三回も飛ばされそうになる。北風、吹き抜く。

 山は雪なぁだべぇ。

 浅草橋のおもちゃ問屋からジングルベル。羽子板もある。ことしは松井の羽子板が人 気だ。

 近くの興産信用金庫が年金受給者に荒巻鮭をプレゼントする季節になった。あまり良 質とは思えないが、季節感たっぷり。町を行く老人が、決まったように荒巻鮭を抱えて いる。

 魚屋のよっちゃんが、頼まれて鮭を切ってやる。浅草橋のいつもの年の瀬。例の駅 前のジャンボ宝くじ売場は一段と列が長くなった。

 午前中、野暮用1件。「おけら街道」を書き上げ、本屋で「オレンジページクッキン グ・ラクラク献立」を購入する。

 夕方、神楽坂で馬小屋(毎日新聞夕刊競馬班)の忘年会があったのだが、一年ぶりに 友人Mが仕事場に遊びに来るので、申し訳ないが忘年会をキャンセル。Mと鍋をやるこ とにする。(その他、2件、忘年会を断った。関係者の諸君、ごめんなさい)

 「ラクラク献立」で「鳥つくねと水菜の味噌鍋」を参考にした。

 つくねは鰯に変えた。だし汁はすましにする。厚揚げを入れるところを真似ることに する。「三越」に買い出し。

 Mは若返っていた。去年の今頃、選択定年で退職。4月から指圧の専門学校の生徒に なった。月〜土まで通学。「勉強がおもしろくて」と言う。外資系の会社にいたから退 職金ががばっと出たらしく、悠々自適の学生生活。楽しそうだ。

 ここ数年、会う度におじん臭くなっていたが、見違えるほどだ。「倅が、芸能プロを 退社して、環境の会社に移った。安心した。ホッとした」と杯を上げる。

 二学期はあと3日で終わる。「休みに入ったら、カンボジアに行く」。彼に青春が戻 った。

 鍋を囲んでいる間に電話が2件。後輩記者が「人事の相談」。「やれ!と言われたら やるしかない。応援するよ」と応える。

 もう一件は「イカを届けたい」という知人から。今年の暮れは千客万来というほどで はないが、日程が詰まっていて、来週にして貰う。

 Mが帰った頃、夜、深々。テレビは相変わらずイラク。

<何だか分からない今日の名文句>

定年は自分が決める

12月15日(月) 吉永小百合の111作目

 新聞休刊日の朝、テレビはフセイン元大統領拘束のニュースばかり。髭もじゃもじゃ のフセインの写真が、どうしても脳裏に焼きつく。生け捕りにして「独裁者の変わり果 てた末路」を印象づける作戦。それでイラクが「親米」になり、治安安定となるかどう か。

 あの昭和天皇とマッカーサーの記念写真。わざわざ小柄な天皇にネクタイを不細工に 緩めに絞めさせて撮影した、あの演出を思い出す。この写真で「天皇は神ではない」と キャンペーンしたアメリカ。これは成功した。もちろん、マッカーサーの人徳もあった 。

 フセインなきイラク国民は「弾圧」から、一時、逃れるかも知れない。が、その後、 帝国アメリカの傀儡政権と他の部族の内戦になるのではないのか……アメリカがイラク 人民のために努力しているなんて……信じているのは小泉さんぐらいだ。

 その小泉さん、国会で「日米同盟を否定して政権がとれるのか?」と話している。ブ ッシュがいるから「小泉安泰」と言うなんて、脳力不足。

 それにしても、フセインの居場所を通報したのは誰なんだろう。第二夫人説が流れて いるが、ひょっとして、フセイン自身ではないのか、と想像したりする。

 大量破壊兵器はどうなったのか。誰かが密告しなければ、フセインを探しあてること は出来ないかった。が、逆に大統領の居場所を密告する人間がいるとすれば、大量破壊 兵器のありかを密告するハズなんだが。本当に大量破壊兵器はあったのか?

 どちらにしても、イラク解放の記念すべき日ではあるが、イラクがベトナム以上に泥 沼になる日であるような気もする。

 12月23日が祝日で夕刊が休み。「ここだけの話」は16日の紙面で今年は終わり 。「正義の出来心」と題して、何が「正義」なのか、を書いてみた。読んでくれ。

 夕方、JRA六本木事務所で競馬記者会の忘年会。ビンゴ大会で、たまちゃんはジャ ンボ宝くじ10枚をゲット。僕は電動耳掻き。

 会場でニース2つ。JRAの某理事の話。吉永小百合の新作「北の零年」が話題にな っている。111作目。監督は2001年「GO」で監督賞を総なめにした行定監督で ある。

 四国・稲田藩の武士だった夫とともに北の大地に移住してきた妻・小松原志乃。厳し い自然の中で繰り広げる開拓者生活。行方知らずの夫を探しに馬で疾走する場面がある。 小百合の疾走。想像するだけでワクワクする。

 「JRAも、映画を応援したい」という某理事。僕らは同世代のサユリスト? 「も ちろん、応援しろよ」と応える。

 もう一つは日刊スポーツの名物記者から聞いた話。この先輩記者、実は日本柔道連盟 の広報委員長という要職にあるのだ。

 「実は早稲田の柔道部から日刊に入り、柔道記者を続けていたんだが、ある時、ギ ャンブル記者に飛ばされた。みんなが『奴、社を辞めるのではないか』と思ったようだ が、辞めなかった。また、いつか柔道に戻れる、と信じてたから。でも、やってみると競 馬も柔道と同じようにおもしろい」

 いつの間にか、ターフの名勝負を記録する名物記者になった、という訳である。

 この柔道連盟広報委員長兼競馬記者が話すニュース。

 「パリでオリックスの谷佳知選手と結婚した、やわらちゃん(田村亮子)に柔道連盟 は『田村姓を名乗ったら』とアドバイスしたんだけれど、どうしても『私は谷亮子です 』と頑として譲らないんだ。『愛する人の姓を名乗るのが真実です』と言うのだ。立派な もんだよな」

 この話から始まって、やわらちゃんの青春時代をあれこれ聞く。ここでは書けないプ ライバシーもあるが、ともかく、精神的に強い強い女性らしい。興味津々。

 終わって親しい友人と浅草の「M」。一年ぶりに顔を出すと「牧太郎が来た店ではな いか?」という飛び込みの客が現れた、と聞く。どうやら、掲示板の常連の某氏らしい 。彼、ただ一人の僕の「追っかけ」。

 明日は寒いようだ。

<何だか分からない今日の名文句>

独裁の次は傀儡

12月14日(日) 何故、生け捕り?

 14日午後8時ころ、フセイン元大統領拘束のニュース。249日ぶり。何も新聞休 刊日を前に捕まらなくてもいいものを。同僚記者の大忙しの取材にも関わらず、テレビの一 人舞台になる。

 とにかく、フセインが捕まって良かった。何人もの人間が死んだだけで、このまま終 わったら、みんな犬死になってしまう。

 これでイラクの戦争状態は「米国対アルカイダ」とい言う図式になる。テロは続くだ ろうが、図式が分かりやすくなる。

 それにしても「生け捕り」は意外だった。米兵への命令は「拘束か、射殺」。今後の ことを考えれば、米国にすれば、射殺の方がやりやすかったような気もする。裁判をイ ラクに任すか、国際司法裁判所に移すか。結構、難しい。

 それでも、拘束を選んだのは、フセインの変わり果てた姿を全世界に見せたかったの だろう。これで、テロがなくなるか。そんなに簡単ではないのだが……。

 いずれにしても、これで「米国撤退→国連主導」の道筋が出来ることになる。イラク は米国出ていけ!となるだろう。果たしてブッシュはどうするか。

 愛馬・レースウイングは名古屋で惨敗。ハルウララ、高知で9着、100連敗。

 野暮用が重なって、日記を書く余裕なく深夜を迎えた。

<何だか分からない今日の名文句>

独裁者に勝った独裁国(候補)

12月11日(木) もうすぐ大記録

 愛馬・レースウィングが14日の中京・香嵐渓特別に登録した。(香嵐渓は愛知県足 助町にある紅葉の名所らしい)

 ところが、出走頭数16頭のところに50頭近くが登録。これでは除外間違いない、 と思ったが、なんと抽選に当たった。何という強運。「1000万円下」は昇級初戦だ が、何とか、上位に食い込んで貰いたいのだが……持病の喉鳴りが心配ではある。

 それにしても11ヶ月の休養開けで2連勝。もし、勝ったら、我が家の大記録?

 馬券の方もJC、スポニチ杯。阪神Jと3連勝。これも万馬券で、眼鏡、コート、セ ーター購入の資金になった。もし、今週も勝ったら、これも記録だ。

 秋のG1シリーズ。「二代目魁」の十番勝負は熾烈だ。上位10数人は2800円以 上で並んでいる。しかし、3000円〜4000円の大穴が出たら……参加者全員にチ ャンスがある。(僕はリンカーンをはじめ、連の軸は当たっているのだが、まだ、1レ ースも単勝を当てていない。最下位。恥ずかしい。でも、一度、当たったはずなのに記録 がなく「外れ」と認定された。どうしたことか、Jrに抗議したが、詮無きこと。投票 の仕方を間違えたようだ)

 でも、大穴がでれば、僕でも優勝可能。大逆転を祈る。

 今週の朝日杯、そして有馬記念。何が起こるか、分からない。全員、参加せよ!

 実は、本当の大記録が控えている。ノーザンテーストが記録した産駒JRA通算最多 勝1749勝。ものすごい記録が書き換えられる。サンデーサイレンスがあと28勝で 新記録。ひょっとして、競馬記者の中に、お忘れの方もいらっしゃるのでは……と書い てみた。

 週末はイラクを忘れるぞ!

 13日は仲間と中山に、14日は……競馬三昧の週末 で楽しく行こう。

<何だか分からない今日の名文句>

平和でなけりゃ競馬も出来ない

12月10日(水) 朝日「素粒子」読売「寸評」

 朝、月刊「働く人の安全と健康」という雑誌の取材を受ける。テーマは「私の快適空 間」。「快適空間? 僕の場合は街歩き。歩いているところが、快適空間かな」と訳の 分からない話をする。

 本当のところ、日本に「快適空間」なんてなくなってしまうかも知れないのだが。

 午後、若干の取材。3時歯科。5時JRA。7時から9時まで仕事場近くの本屋で立 ち読み。

 仕事場に帰って、イラク自衛隊派遣に関する新聞の論調を点検する。まさに国論二分 だ。

 夕刊一面のコラムを見れば、一目同然。

 朝日「素粒子」は「憲法の朗読までして、自衛隊イラク派遣について説く首相。理屈 と膏薬と憲法はどこでもつくか」と皮肉たっぷり。

 対して「よみうり寸評」。「国際社会の一員として『一国平和主義』は通用しない。 『金は出すが、人は出さない』ではすまない」と小泉礼賛。

 第二次世界大戦では「最後まで戦争に反対だった朝日が豹変したことで、戦争が回避 できなかった」という説もある。さて、どうだろう。

 朝日贔屓の加藤紘一さんは「派遣反対」を言い出している。永田町スズメの話では「 反小泉で、再び、天下を狙う」そうだ。YKKは終わったのか。僕、紳士的な(慇 懃無礼な)朝日も、加藤さんも嫌い。渡辺恒雄さんの言いなりの読売はもっと嫌い。( 新聞記者の渡辺さんは大好きだけど。耄碌した渡辺さんは嫌い)

 では、毎日新聞はどうだろう。身内の論評は目がかすむ。読者の見方が的を得ている だろう。

 深夜、東京新聞の元気の良さを確認して、全紙読み終えると、寒い寒い。この冬一番 の寒気のようだ。

 読者の皆さん、風邪を引かないように、頼みます。

<何だか分からない今日の名文句>

盟友、豹変す

12月9日(火) 一国平和主義が何故、悪い!

 朝、たいとう診療所。月に2回のリハビリだが、次の「第四火曜日」が天皇誕生日な ので、事実上、ことし最後のリハビリ。今年も、厄介になった。月曜日朝、路上で転が った。理学療法士にその旨を話して、身体を捩ってもらったが、どこも痛くない。セー フ。柔道の受け身が上手になったのだろう。

 夜、プレスセンターで知人の古希の祝い。尊敬する先輩のお祝いなので、ネクタイを 締めていく。実は、片手しか動かないでの、ネクタイがなかなか上手に締められない。 締めることが出来ても、時間が掛かる。だから、ついついセーター姿になってしまう。 10分かけて、今日は正装。

 良い会だった。小柄だが、いつも大言壮語している先輩が、壇上で奥さんに感謝の言 葉を発した。びっくりした。奥さんもびっくりしていた。

 会場では、ちょっと前にテレビで発表された「自衛隊派遣基本計画」が話題になった 。テレビで見る限り、小泉さんは憔悴して、冴えがない。彼の発言には全く説得力がな い。以前、外務大臣政務秘書官を勤めた人物が「自衛隊はやられる。そして自民党は 参院選で負ける」と話しかけてきた。そうだろう。

 東大教授が「誰一人、派遣すべきだ、なんて言っていない。少なくとも、俺の家の近 くの飲み屋では、全員、反対だ。それにしても、残念だ。牧さんがバリバリの政治記者 だったら、こんなことにならなかった」と言う。

 どういう意味か。お世辞のようで、そうでもない。察するに、権力が勝手なことを言 って、ただ「ご無理ごもっとも」とメモを取る記者。記者会見の“体たらく”に腹が立 っているんだろう。

 でも、誤解されては困る。確かに、新聞社の中枢にいないことは確かだが、僕は現役 だ。書くべきモノは書いている。

 もし「牧は何もしていない」と思われたとすれば、「活字」に影響力が少なくなった 、ということだろう。テレビに出ないと、影響力を持たない、ということなのか。

 言い訳は止めた。「新聞がだらしない」と言われれば、返す言葉もないのだから。

 影響力が少ないと知りつつ「日米同盟強化」の嘘について書きたい。

 第一の疑問。同盟国・アメリカに誤りはなかったか。アメリカは断固、間違っている 。アメリカは他国からの脅威が及ぶ恐れを感じると、躊躇なく武力を行使し「国益」を 守る。「ブッシュ・ドクトリン」。この「先制攻撃」は国際法上、誤っている。

 国連憲章は武力行使を否定していないが、それは「他国から武力行使があった時、国 連が対応するまでの間の自衛力行使」だけである。先制攻撃を国際法が許すわけはない 。

 明らかにアメリカは誤っている。ローマ帝国以来の帝国、アメリカは自らの価値観で 地球を支配しているとしか思えない。

 この誤った同盟国と与し、憲法の精神を踏みにじっていいのか。

 第二の疑問。日米同盟は片務条約だ、という議論。片務状態から脱却するために国際 貢献する、という議論は本当か。

 これも間違っている。日米安保は断じて片務条約ではない。アメリカは自国の世界戦 略の一環として、極東の根拠地として日本に基地を置いている。

 他国の軍隊を自国の領土に置くことは大変なことだ。日本国民は精神的、物質的、経 済的負担を負っている。

 そのかわり、日本が他国の攻撃を受けたら、アメリカが助ける。それが日米同盟関係 だ。それが日米安保だ。アメリカはそれ以上の要求は出来ない。

 アメリカにこれ以上、協力することが、日本の国益に繋がるのか。冷静に考えなけれ ばならない。

 基地の存在を忘れ「応分の負担」を主張する政治家、評論家は、バカの壁を乗り越え ることが出来ない。

 第三の疑問。イラクに非戦闘地帯があるのか。言いまでもなくNO!

   第四の議論。イラク人は、日本の自衛隊を歓迎しているのか。どうやらNO!

 第五の……この辺りで止めよう。

 ただ言えることは、小泉さんが、日本を奈落の底に落とそうとしていることだ。

<何だか分からない今日の名文句>

変人よ、軍人になるな

12月8日(月) 自衛隊は人を殺せるか?

 午後、読売新聞から申し出のあったオウムに関する取材。それを終え、馬小屋(たま ちゃんは「日曜競馬情報室」と名付けているが)を覗くと、たまちゃん、嫌に深刻であ る。「自衛隊に人を殺すことが出来るんでしょうか?」と真剣に聞く。どうだろうか 。

 「自衛隊に人を殺した人はいませんよ。戦後、自衛隊は人を殺さない軍隊で通ってき たんですよ。人を殺すことを訓練している奴らの前に行ったら、多分、躊躇して、自衛 隊の方が殺されてしまいますよ」と言う。

 確かに、自衛隊は災害救助隊の色彩が強いから、イメージとして「人を殺す場面」が 想像出来ない。たまちゃんの言う通りかも知れない。

 学生たちは、東京でテロが起こったら何処だろう? と冗談半分に話しているが、それ も心配だ。政府は日本にテロリストはいない、と脳天気なことを言っているが、日本は 無防備で「隠れテロ」を把握していないだけではないのか。オウムの地下鉄サリンを思 い出す。

 小泉さんは戦場に重武装部隊を送る、と決めた。当然、自衛隊が人を殺すことを予想 している、と思うのだが、緊張感は伝わってこない。戦場に行くと言うことは、たまち ゃんが言うとおり、人を殺すことを覚悟することだ。派遣される自衛隊の心の内を考え ると……。

 僕は、日本は専守防衛の一国平和主義で押し通すべきだ。戦場に行くべきではない。

 第一、任務と能力を越えた派遣が役に立つのか。自衛隊が復興支援出来る状態ではな い。

 アリバイ支援なら、止めるべきだ。

 明日(9日)基本計画。テロに屈するな、という威勢のいい掛け声が、日本を泥沼に 追い込む。基本計画発表の後が正念場だ。

<何だか分からない今日の名文句>

法に使われるな、法を使え

12月7日(日) 護憲政党は今

 無罪判決は、必ずしも「無実」ではない。無罪は有罪の証明が出来なかったと言うこ とだ。無罪=無実ではない。

 イラクが大量破壊兵器を持っていたかどうか、それが証明されていない。でも、持っ ていた可能性は十分、ある。

 でも、発見出来ないと、イラクは取りあえず「無罪」ということになる。無実ではな いが無罪。

 ロンドンのサンデー・テレグラム誌は元イラク軍中佐の「イラクは戦争前、前線部隊 に大量破壊兵器を配備した」という証言を掲載した。新たな状況証拠であるが「有罪の 証拠」になるかどうか。これも、なかなか難しい。イラク戦争の大義が証明されるかど か、これも微妙だ。

 自衛隊派遣に関しても、この「イラク戦争の大義」が議論になっている。が、僕は、 これはあまり大筋に関係ないと思う。この議論は、詰まるところ、大国は大量破壊兵器 をもって良いのか、という議論になってしまう。そこまで議論するには時間がなさ過ぎ る。

 むしろ、戦争は終結しているのかどうかーーその方が議論の中核ではないのか。

 イラクの戦後統治は進んではいるが、局部的には戦争はゲリラ化して、その火種はか なり広い部分で「市民の反乱」の動きになっている。この事実はもう隠せない。

 戦時に、戦場に、武装した自衛隊が行くことは憲法違反だと思う。慌てて作った派遣 法制にも違反している。

 それは戦時に戦場に軍隊と見られる集団を派遣することを止める、というのが平和国 日本の大切なルールだ。これは、情緒的な問題ではない。「遺志を継ぐ」話とは次元が 違う。冷静に法が判断する問題だ。

 僕が、もし護憲政党のリーダーだったら、法の専門家を動員して、自衛隊派遣を法的 な場所に持ち込む。何もしないで「憲法を守る」なんてチャンチャラおかしい。

 JCから運が回って来たのか、土曜日のスポニチ杯は3連復的中。日曜日の阪神ジュ ベナイルFはヤマニンアルシオンが逃げ残って、馬復19700円ゲット。たまちゃん から「開眼したようですね」と祝福される。

 JC以降の3連勝でゲットした分で、眼鏡と洒落たコートを買う。

 肩に力を入れて仕事をすると?時間がなくなり、競馬の検討がおざなりになる。これ が好結果を生んでいる。皮肉なものだ。

<何だか分からない今日の名文句>

法に使われるな、法を使え

12月4日(木) あの時、小泉さんは

 2人の外交官の遺体が戻ってきた。ご冥福を心からお祈りする。

 11年前にも、同じようなことが起こった。カンボジアで日本のPKOのため派遣さ れた文民警察官・高田警部補が襲撃され死亡した。

 今日(5日付け4日発売)の夕刊フジ「鈴木棟一の風雲…永田町」が、この時の閣議 (平成5年5月7日)の模様を詳しく書いている。

 小泉郵政相は「国会の議論では血を流してまで派遣するということではなかったはず 。自民党の中には、この程度の犠牲は当然、という考えがあるのはとんでもないことだ 。撤収する場面では勇気を持って撤退すべきだ」と主張している。

 掲示板にも、この「11年目の小泉発言」を指摘する常連もいる。政治家は立場が変 わると180度変わる。

 昼、野暮用1件。午後3時、歯科。4時床屋。前に来たとき、店員の娘が「おじいさ んがガンで死にそう。昨日、実家に帰ったら、スルメのように痩せていた」と話してい た。が、その娘がいない。聞けば、昨日、おじいさんが亡くなって、葬式に向かってい るという。

 北海道別海町。一日に飛行機が1便の過疎地に22歳の「おじいちゃん思いの娘」が 一人向かっている。どんな顔をしているんだろう。多分、ぐちょぐちょに泣いている んだろう。

 でも、この間、帰った時、仕事道具を持って行って、動けない、骨と皮だけのおじい ちゃんの散髪をしたらしい。おじいちゃん孝行が出来て良かった。

 夜、歌舞伎座前のビルで、アカデミー賞候補の「シービスケット」の試写会。「金を 払って見なければ映画の良さは分からない」というのが持論だが、競馬仲間が「感涙モ ノだ」と言うので、早く見たくなった。

 良い作品だった。泣けた。「おけら街道」で、その感涙を書いてみたい。

 仕事場に戻るとメール数通。「牧さんの文章は気負いすぎ。イラクなんて大部分が無 関心」という指摘を受ける。

 そうかも知らない。気をつけねば……でも、この無関心が恐ろしいのだ。もう少し、 気負わせてくれ。

<何だか分からない今日の名文句>

君子でなくても豹変す

12月3日(水) 「アリバイ」で死ぬのか

 新聞は「空自本隊1月派遣」と書いている。何やら、昭和10年代の新聞のような紙 面ではないか。

 サマワという所は、空爆の少ないところで、それほど被害がある訳でもない。もとも とインフラがないところだから、人によっては「戦後復興が必要な地域」ではない、と 言う人さえいる。

 何故、そんなところ選んだと言えば「安全なところ」だからだ。行っても安心、と判 断したのだろう。

 要するに「アリバイ人道支援」と言えば言えそうな選択。「安全なところだから、戦 闘地域ではない」を抗弁して派遣しようとする。

 冗談じゃない。こんなことを考えるのはド素人。サマワは日本が参戦する事によって 「危険な場所」になる。

 アメリカ軍の下につく同盟軍をやり玉に挙げることで、混乱を起こそうとする敵は、 サマワに潜り込むだろう。自衛隊は標的になる可能性は大きい。

 「人道支援」という美名のもとの「アリバイ作戦」。そのいい加減な判断で、日本人 が亡くなっていいのか。

 明日(4日)発売の「週刊文春」に「奥克彦参事官の絶筆」なるものが掲載されてい るらしい。そこには「軍のあらゆる分野での関与」を指摘している。暫定のCPA以上 に、軍がコミットしている。コソボでも、アフガニスタンでも見なかった、と彼は書い ていたらしい。

 それが良いのか、悪いのか。ひょっとすると、アメリカ戦後統治について、奥参事官 は疑問を持っていたかも知れない。また、全く逆に軍の力がなければ「復興」なんて出 来ない、と考えていたかも知れない。

 その真意は分からない。しかし、少なくても「彼らの遺志を継ぐ自衛隊派遣キャンペ ーンを展開するのは、あまりにも無理がある。

 この「遺志を継ぐキャンペーン」は第二次大戦では「一億玉砕」に結びついた。この 事実を覚えて置かなければならない。

 朝、東京専売病院で定期検診。血圧127−70。減量が良い結果を生んでいる。

 JRAを覗いて出社。2月のオウム・麻原裁判の紙面について打ち合わせ。

 夜、まったく予定なく、知り合いに「飲もう!」と誘うが「嫌、家に帰る」とつれな い返事。仕事場に戻ると、結構な焼酎を届けてくれる御仁あり。ありがたくいただき、 一人でチビリ。

 しかし、しかし、派遣される自衛隊員の家族のことを思えば、こんなに、悠長なこと をしてはいけない、と思うのだが。

<何だか分からない今日の名文句>

あなた、政治家のために死ねますか

12月2日(火) 第三次世界大戦

 小泉さんは「危ないところだから行けない、なんて言えるもんか」といった調子で、 自衛隊派遣を断固、強行する構えだ。

 冗談じゃない。「危ないから行かない」と言うのではない。自衛隊派遣に大義がない から反対しているのだ。

 国際貢献と言うけれど「アメリカ支配」に協力するのが国際貢献なのか。アメリカ帝 国主義に追随するのが国際貢献なのか。ブッシュ大統領が言うように、戦争は終わった のか。

 アメリカの情報は役に立たない。アメリカ兵すら、どこから小型ミサイルが飛んでく るか、分からない。敵が何者なのか、分からない。アルカイダなのか、フセインの残党 なのか、アメリカの占領に不満を持つ市民なのか。それすら分からない。アメリカ兵は 無防備状態にある。

 こんなところに自衛隊を派遣するなんて、狂気の沙汰だ。国民の安全を守るのが政治 家だ。「大義がないから行かない」と言えば良いのだ。「危ないところに国民を出すこ とは出来ない」というべきだ。小泉さんのメンツで殺されたらたまらない。

 ローマ帝国のように、アメリカは肥大している。領土ではなく、価値観を押しつける ことで拡大を計る。当然、反発を招く。それが「第三次世界大戦」を起こしかねない様 相になりつつある。

 午前「おけら街道」を書き、昼は新宿で取材と買い物。夜、仕事場に同僚3人、来訪 。この前、九州で買って来た芋焼酎「木挽」を2本あける。

 東京では発売されていないそうだが、極めて好評だった。

 イラクで亡くなった外交官2人の遺体を撮影した写真が、流れているらしい。外国の 通信社が配信しているそうだが、この写真、公表されるのか。「誰も見たくない写真だ から、俺なら載せない」と話したが、外国には、遺体を撮影するプロのカメラマンがい るし、平気で遺体写真を紙面に出すメディアがある。「インターネットで、早晩、流れ る。いや、流れているのでは」というのが同僚の見通し。嫌な時代だ。

 それでなくても、2人の遺体が米国兵に「モノ」のようにトラックに積まれた映像を 見て、涙が出るほどだった。指導者は、人間の命をあまりに軽く思っていないか。

 第三次世界大戦を絶対に阻止しなければならない。

 2チャンネルを見ることがないので、何とも言えないが「若者」を装って中年右翼? が盛んに「参戦」を呼びかけている、と同僚の話。インターネットの世論操作も分析し なければなるまい。

<何だか分からない今日の名文句>

地球より重いもの

12月1日(月) 中井外信部長の一文

 12月2日付毎日新聞朝刊一面「『立ちすくむ』勇気を」(外信部長・中井良則)を 読んで欲しい。

 この一文を載せる毎日新聞の勇気。これはごくごく「普通の勇気」だが、今となって は「かなりの勇気」だと思う。言論に対する「見える圧力」「見えない圧力」を感じて ならない。

 「外信部長」という肩書きを明記して(社説ではないが、単なる記者個人の主張では ない)この一文を載せた毎日新聞編集局を誇りに思う。

 是非、読んで貰いたい。新聞は、イラク問題で2分される。その瞬間を見て欲しい。

 掲示板の仲間に「イラク派遣」について意見を求めたら、嬉しいぐらいに集まった。 素晴らしい論理構成のものばかり。勉強になる。みんな、ここも読んでくれ。そして 、投稿してくれ。

 1日は強い雨。昼間、眠くて眠くて2時間、寝る。イラクのこともあって寝不足なの か。

 今週の「ここだけの話」はイラクとは関係ない、政治向きと無関係なものにした。ち ょっと、強い風が吹いたら、別に風に向かって歩かなくても良いじゃないか、というの が江戸っ子流。風がなくなるまで、閑ダネでお茶を濁す。そこで、今週は「宝くじ」。 是非、読んでくれ、というものではない。

 夜「久原」で、たまちゃんたちと鍋。競馬と世間話。ストレス解消。

 帰ると、メールに「頑張れ!」という激励が4通。うれしいことだ。

<何だか分からない今日の名文句>

「遺志」を勝手に継ぐな

11月30日(日) イラク派遣で議論しよう!

 日本人外交官の二人が殺害された事件をマスコミが知ったのは、日本時間30日午前 2時頃だったと思う。インターネットで情報が流れ、外務省が会見したのは6時15分 。大分、遅れた。

 ついに犠牲者が出た、というのが実感である。多くの人が予想していたが、イラク情 報最前線の人物が狙われるなんて。事実上、今後(当面)、日本のイラク情報は皆無に 近くなるだろう。

 自衛隊派遣の議論はともかくとして、独自の、国家としての情報を持たないで、自衛 隊を戦争地帯に送ることは「国民の安全を守る約束」を放棄するものだ。

 アメリカなら分かる。戦争当事国だから分かる。しかし、日本は専守防衛。これは国 是だ。

 口を開くと「国際貢献のために」と言うが、イラク民は、中東諸国は「アメリカの戦 後統治」を国際貢献と思っているのだろうか? 疑問だ。

 8時からのTBSラジオでは、そんな疑問を投げてみた。

 番組の終わりで「ジャパンカップの予想」を聞かれ、困った。全然、分からない。

 シンボリクリスエスは「10年に1頭」の逸材だが、このレースは一番人気があまり 勝つことはない。と話したが、これも自信がないが……。ローテーションではタップタ ンブシチーが一番良い、と話すが、これも自信なし。外国馬では、デノンが雨に強い、 と話すが、それも聞きかじりだ。

 しかし、そのいい加減な予想が当たった。1000円買った枠連1−5、500円買 った馬単1−10、300円買った3連服1−5−10、すべて的中。

 万歳!と叫びたいところだが、イラクで朝早く飛び起き、若干の情報収集に動いたの で、眠くて元気がない。

 皮肉にも、自信がない、元気がない、のが馬券的中の条件か?!

 テレビを見ると、小泉さんは、はじめは「仰天発言」だったが、気を取り直したのか 「自衛隊であれ、文民であれ、やるべきことは、やらなきゃならないこと、しっかりや ります、と表明している」と話す。

 どこも国民に言っているのか。言葉だけの、無責任男をこのままにして良いのか。中 曽根さんは「小泉にあるのは気力だけ」と言っているそうだが、困ったことだ。

 夜、例の「十番勝負」に投票していないことに気づく。イラク事件で、すっかり忘 れていた。折角の一勝だったのに……。

 でも、正直言って、競馬どころではない。日本混迷。掲示板の皆さん、自衛隊イラ ク派遣について議論しようじゃないか。常連さんの意見は、かなり鮮明だが「声なき声 」を聞きたい。

<何だか分からない今日の名文句>

勇気は「言葉」ではない