編集長ヘッドライン日記 バックナンバー
2003.3月

3月30日(日) パチンコ店の広告
        医療費3割負担の国の2兆円

 18℃で汗が滲むこともあれば、朝が7℃。花冷えの週末。

 友人から電話で「パチンコ店の新聞広告」に関する情報。「サラ金の広告は長いこと 新聞に出なかったが、いつの間にか、堂々と一流紙に登場した。パチンコ店の新聞広告 も、同じようなもの。事実上、違法な博打行為を広告する訳にはいかない、という大義 名分があった。ところが広告不況で、背に腹が変えられないというか、解禁しようとす る動きが出てきた」。

 良いことか、悪いことか、すぐ判断できないが、電通が例によって陰で動いているら しい。民主党の秘書グループの中心人物・Mが動いている。Mさんは利権に敏感な人。 彼が出てくると……マスコミも貧すら鈍する?

 29日は市川にセガレたちが集まった。近況報告会?セガレ二人も、僕も不況産業? に勤めているから、不景気風に吹き飛ばされそうだが「何とかやっているから心配す るな」。全員、健康が何より。

 「何故、親父は非戦なのか」をちょっと話す。孫が大きくなったら「非戦」について 、話して置かないといけないと思う。

 30日は、看護婦さんを対象にする例の「牧太郎の街角スケッチ」の執筆。

 アメリカは議会に戦時補正予算747億ドル(約7兆円)を要求した。戦費が626 億ドル、イラクに対する人道支援、戦後復興、周辺友好国への支援が78・5億ドル。 テロからアメリカ本土を防衛する費用が42・5億ドル。

 日本は国連分担金の2割を支払っている。それを目安に考えれば、日本は1・4兆円 から2兆円程度の分担が求められる。それが、高いのか、安いのか。

 医療費3割負担が4月から始まる。そんな戦争処理の2兆円がなければ、もっと裕福 な医療が実現するのに……と言ったことを書く。

 まごまごすると「医療費4割自己負担」なんてことまで考えなければならない。

 今週から、戦争はヤマ場。また、何人も死ぬ。

<何だか分からない今日の名文句>

カネを出さない非戦

3月27日(木) トマホークを持つべきか

 出社すると、メールボックスに「ジャーナリスト・マスコミ界OBからのアピール・戦 争の記憶の証人として、メディアの現場に働く人びと、ジャーナリストに訴える」とい う手紙が届いていた。

 「戦争を起こさせてはならない。戦争を起こすものに加担してはならない」

 呼びかけ人は26人。その中に何人か知人がいる。アイウエオ順の先頭は石川文洋さ ん。朝日のカメラマン。彼の倅・文太君が次男坊の利明と市川・真間小学校の同級生だ ったので知り合いになった。それぞれ、仕事とは直接関係ない縁で知り合いになった内 橋克人さん、増田れいこさん、吉永春子さん……尊敬する諸先輩が「反戦」を呼びかけ ている。

 「もしも全国の新聞社が真に一体となって不当な侵略戦争に反抗することが できたなら、太平洋戦争などは起こり得なかったろう」という伊藤正徳氏「新聞50年 史」の一文を引用して「反戦に立ち上がれ!」と訴えている。

 我々は歴史の重大な分岐点で、重大な過誤を重ねてきた、という反省に立っての呼び かけである。

 確かに、今、満州事変が起こった時と同じような雰囲気がある。言論統制が起こり兼 ねない空気さえある。

 歴史を遡ると、毎日新聞、朝日新聞が方向を転換して軍部側についた辺りから、日本 の新聞は大本営発表メディアになり下がった。

 今、読売、産経はイラク戦争を支持、毎日、朝日は批判的であるが……どこまで毎日 新聞が踏みとどまることが出来るか。(経験上、あくまで個人的な感想だが、朝日新聞 には期待していない)

 僕が毎日新聞を就職先に選んだのは、大森実率いる毎日新聞外信部が「泥と炎のイン ドシナ」のキャンペーンを敢行、その反戦報道に共感したからだった。毎日は反戦新聞 である。普段、進歩的な顔をしていながら、実はことが起こると権力に寄り添う大新聞 とは違う。毎日が「戦争やむを得ず」的な論調に変わるのが、何よりも心配だ。

 同時に反戦主義は「絶対的平和主義」を標榜するだけで良いのか、という問題も残る 。

 紛争が自国民を傷つけることになっても、自衛権を放棄していて良いのか。その辺 りのコンセンサスが求められる。

 米国が今、行っているのは、間違いなく無差別戦争主義である。主権国家には戦争を 行う権利がある、という立場だ。イラク人民の解放という大義があるかどうか、は別に しても、ごく普通に考えれば「侵略戦争」と位置づけられるべきだ。

 それを支持していいのか。絶対的平和主義で批判していれば良いのか。

 絶対的平和主義か、限定戦争主義か、無差別戦争主義かーーを整理して、徐々に国民 的コンセンサスを作る好機かも知れない。そのためにも、コンセンサスがない米国の( 結果としての)侵略戦争にNO!と言うべきだ。

 毎日が「防衛庁、トマホーク導入を検討」の記事を28日の朝刊に出すらしい。巡航 ミサイル「トマホーク」は射程1700キロ。これは専守防衛政策の変更である。

 戦後復興で幾らカネを出すか。永田町では、これが関心事になっている。全体の2割 を日本が分担する。これは高いのか、安いのか、そんな議論が先行している。情けない 。

 夜、昔から友人らと外苑西通りのレストランで夕食。昔話で楽しかった。が、ここで も「下手をすると、競馬の寺銭がイラク復興資金に回さるのでは……」なんて不安が披 露されたり、時節柄の「不安要因」の話もチラホラ。

 深夜のテレビ、この夜も爆撃しきりなし。

<何だか分からない今日の名文句>

歴史に学べ、歴史を創れ

3月26日(水) 「第二のベトナム」になったら

 朝の散歩中、自転車に乗った高柳良夫・台東区議にばったり。「今回も同じ事務所で すから」。何のことかと思ったら選挙事務所設置のお話。そう言えば地方選挙だ。

 「よろしく」と言われ、彼の日頃のエネルギッシュな地元サービス、平たい人柄を知 る当方「大丈夫ですよ。間違いなく当選ですよ」と応えたが、いつもと目の色が違う。 精神的に臨戦体制?

 区議会自民党幹事長をしているので、当然「自民公認」。地方選挙では「党公認」が 必ずしも有利ではない。

 渡されたビラには「もう一期頑張らせて下さい」と印刷されていた。2期、3期でも 、続けるべきだ。

 JR浅草橋駅のエスカレーター設置は彼の悲願。出来れば、僕のように手足が不自由 な者には便利だ。その他、循環バス、福井中学跡地問題、彼に期待することは多い。が んばれ!

 社内ではイラク情勢の分析ばかり。たまちゃんがテレビの砂嵐を見て「月面で戦争を しているみたいだ」と話す。なるほど。人類初の月面着陸を思い出す。兵隊さんが化学 兵器に備えて重装備をすれば、あんな格好になる。加えて砂嵐。進軍ままならぬ訳だ。

 たまちゃんの話によるとヨルダンからバグダットに戻る市民が出国手続きに列を作っ ているらしい。ヨルダンにイラクから難民が大量にやって来るというので、政府はテン トを送るようだが、現時点では、若干、状況は違う。宗教戦争の色彩が鮮明になってい る。

 社会部の幹部は「ベトナムの二の舞いではないのか」と心配している。砂嵐がゴール デンウイークまで続き、その後は50℃を越す猛暑。アメリカに有利な条件なんてまる でない。決着を急ぐと、米国が大量兵器を使うことになる。

 誤爆か、バグダットの市場が炎上して15人死んだ、という。これまで制止カメラだ ったが、中継が可能になっている。イラクが「誤爆」を演じて、テレビで世界に悲劇を 流していることまで疑えることすら出来る。

 ベトナムの情報戦争が思い出させる。ブッシュの面子で「第二のベトナム」になった らどうするのか。

 一昨日(3月24日)の日記で「米軍が化学兵器工場を発見」と報道されたのは、ど うもおかしいぞ!と書いた。あまりに意図的なプロパガンダ、と思って「本当?」と笑 ってみたが、さすがにパウエルは今日(現地時間25日)「調査したら、兵器工場では ない」と否定した。当たり前だ。

 「化学兵器工場発見!」と大々的に報道して新聞、テレビはどう報道するのか。あま りに不確実な報道が多すぎる。

 フセイン独裁は許せない。許せないが、この時期に人間の命をそれほどそまつに、多 く犠牲を出し、世界経済を泥沼にしてまで「正義」の戦いをするべきなのか。

 僕は反対だ。(掲示板のご意見も隅から隅まで読んでいる。僕の意見に反対の方の意 見にも「なるほど」と思うところも多々ある。難しい選択だが、僕はイラク戦争に反対 だ。僕は、いわゆる「人権派」ではない。「人権派」とは恒に対峙している。僕は、言 ってみれば人間力を信じる「人間派」だ)

 「正義」は一つではない。だから、神の名において、権力者は「ただ一つの正義」を 作り上げる。神の名において「世界の警察」を勤めているアメリカ。同じように神の名 に於いて、フセインも「神の庇護」を叫び、ゲリラ戦に死ね、と号令する。(フセイン が生きているかどうかも、証明するものはない)

 毎日新聞も「スパイ衛星打ち上げ」のニュースを書いた。打ち上げ時間を発表したら しい。テロを恐れない姿勢を示したかったのだろう。

 スパイ衛星が稼働すれば、北朝鮮の拉致被害者のグループの居場所もある程度、分か る。何度か書いたが、アメリカのスパイ衛星はこれまでも、拉致家族の動向を捉えてい た。打ち上げの28日「北」は何かするつもりなのか。

 夜、久しぶりにカレーライス。ビールも飲まず、質素にした。

<何だか分からない今日の名文句>

「正義」のバランス

3月25日(火) 「悪の枢軸」のトリック?
          戦争が3ヶ月以上続くと

 2002年1月の米大統領一般教書でブッシュはイラク、イラン、北朝鮮の3国を「 悪の枢軸」と非難した。その時、イラク戦争は始まっていた気がする。

 「悪の枢軸」の文句を作ったのはブッシュではない。ホワイトハウスのスピーチライ ターのディビット・フラムである。

 2001年12月、彼は上司に呼ばれ「イラクを追いつめ理由を1行か2行にまとめ てくれ」と指示される。この注文は「対イラク戦争を正当化する名文句」とフラムは理 解した。

 難しい仕事だった、とフラムは自らの著書で書いている。フセインがテロリストを支 援している証拠はない。テロに対抗する戦いと位置づけるとすれば「テロ支援国家イラ クとの戦い」と表現しなければならない。そう書くには「証拠」がなかった。

 そこで、彼は「テロ支援国家とテロ組織はともに、米国に対する『憎しみの枢軸』を 形成する」という言葉を使った。イラクを名指しせずに「テロ支援国家」の存在がある としたら「米国は先手を取って戦う」という意思表明である。

トリックである。イラクはテロ支援国家である証明はないのにも関わらず「悪の枢軸 」という言葉を使うことで「攻撃されるべき存在」をまず印象づけた。この時にはすで に「憎しみの枢軸」は「もっと宗教的な表現で」と主張する上司の手で「悪の枢軸」と 書き直されていた。

 「憎しみの枢軸」=「悪の枢軸」=イラク、イラン、北朝鮮のキャンペーンが始まっ た。だから戦争目的の第一はテロ支援粉砕だった。しかしテロ支援は証明出来ず、次は 大量兵器。これも査察では証明出来ず、最後は「民主化」になった。

 言ってみれば、アメリカはフセイン政権打破、人民解放の「本当の目的」に戻った。 ブッシュの目的は元々「アメリカ的な民主国家確立」だった。

 世界をアメリカ的に民主化することには無理がある。日本はむしろ特別である。すべ てをアメリカ的民主主義国家にするとなると、21世紀は戦争に次ぐ戦争になってしま う。だから、この戦争は、どうしても止めさせなければならない。

 「元々、国連なんて頼りにならないものだった」と自民党の外交族が口をそろえてい る。それでは、他に国際協調の場が存在出来るか。

 反国連主義が日本に台頭するのに、僕は危機を感じる。

 25日午前中は築地本願寺で社会部の先輩・岩崎繁夫さんの告別式。約束した取材が あり、どうしても、参列できなかった。江戸っ子気質の洒脱な人だった。

 これも約束だった例の松戸愛輪会。みんなの顔が見たかったが、これも欠席せざるを 得ない。最終レースだけ、携帯で買ってもらうが、大はずれ。

 テレビは戦争はヤマ場を迎えた、と言う。夜中2時、3時、4時にNHKがニュース を入れるので、寝ながら見る。イラクの抵抗は予想以上である。

 一般的には4〜6週間が短期、3ヶ月以上が長期。長期となれば金融市場が動揺し、 アメリカは戦争に勝ったとしても、実質的には「経済的敗北」になるだろう。

<何だか分からない今日の名文句>

軍事的勝利×長期化=経済的敗北
世論的勝利×長期化=国家的威信低下
経済的敗北÷日本支援=アメリカ威信回復

3月24日(月) 本当に化学兵器工場?

 「イラクの自由作戦」5日目。情報戦が激しい。

 その典型は「イラク南部で化学兵器工場を発見」というニュース。国連の査察では、 この地方で化学兵器製造はなかったとされたのに……化学兵器工場の確たる証拠を得ら れたのか。疑問だ。アメリカは「戦争の大義」を早く作りたいのだろう。

 当然のことながら戦況は複雑。少なくても「空爆1週間・地上戦1週間」というアメ リカが日本に話した見通しは外れるのではないか。

 やれ短期だ、やれ長期だ、と不確実な情報で株価が乱高下する。ちょっとばかり株価 が上がっても日本経済の危機はまったく変わらない。小泉さんは「フセインは狼だ」と ばかり言って、国民の目をイラクに集中させる狙いだろうが、経済危機を放置するのも 狼だ。

 朝、仕事場の近く出会った知り合いは「同業者が3軒も潰れた」とため息をつ く。彼が言う「大変なこと」はイラクではなく仲間の夜逃げである。

 「ここだけの話」は結局、絶対的平和主義か、限定戦争主義か、戦争無差別主義か、 その選択で、小泉さんは誤っている、という主張ものにした。実に稚拙な文章で恥ずか しかしいが、ブッシュ的帝国主義にはっきり反対したかった。読んでくれ!

 夕方、会社にたまちゃんのご子息、来訪。「明日、早稲田の卒業式。4月に朝日新聞 大分支局に赴任します」と晴れ晴れと報告。地下一階の「大作」でお祝いをすることに した。

 36年前、毎日新聞に入社した時、大先輩から砂時計を貰った。「これからは早飯、 早糞、早支度」とアドバイスしてくれた。もらった砂時計を立てて、砂がすべて下に溜 まる3分の間に「15字×10行」の原稿を書く猛練習をした。だから、原稿のスピー ドについて言えば一時「社会部一位」だった。(脳卒中で倒れてからは最下位だが)

 情報を早く、出来るだけ正確に発信するのが、我々の仕事、と話し、彼に3分砂時計 を贈った。

 たまちゃんは倅が朝日新聞社に入ったことに複雑な思いらしく、大作の女将に「これ は内緒だよ」。しかし、これは仕方がないことで、毎日の試験で落ちたから仕方ない。

 たまちゃんの競馬の予想はG1に限っては九州地区でも掲載されるので「読むよ」と 倅。「早く全国版の記事を書け!」とたまちゃんと二人で激励した。

 夜、送られてきたサンデー毎日のイラク特集を読破する。読み手がある。流石だ。広 瀬編集長流の反戦。スタンスがはっきりしているのが好きだ。

 後ろのグラビアに「浅草芸者・乃り江」の艶姿が載っていた。彼女は、早稲田の学生 時代、僕が家庭教師をした「豚笛」の倅の娘らしい。教え子の倅は行方不明?と聞くが 、彼女は笛の名手だったおばあちゃんの後を継いだ。一度、会いたいが、お座敷遊びは 10万はかかるらしく実現しない。

 イラクはこの夜も猛爆。

<何だか分からない今日の名文句>

「大本営発表」に似たり

3月23日(日) 中曽根さんが糸をひく

 「イラクの自由作戦」が始まって4日目。空爆、地上戦、それに情報戦、激しさを増 す。

 日曜日(23日)の朝は例のTBSラジオ「牧太郎のザ・コラム」。「戦後日本が一 度だけアメリカ追随外交をやめた事件」を話した。

 30年前の第4次中東戦争。田中角栄首相は原油を確保するためにアメリカに楯を突 き、湾岸6ヶ国を支持した。

 「日本の経済が崩壊すれば日米安保も崩壊する。日本が経済的に潰れれば、自由主義 国家群が沈没する」と言うのが田中の主張。中曽根通産相も全く同じ意見だった。どう どうとキッシンジャーと渡り合った。

 それから3年後、田中憎しのアメリカがロッキード事件の謀略を仕掛ける。田中逮捕 。彼がフランス、ドイツ、ソ連と組んだ独自のエネルギー戦略は挫折する。この時、 中曽根さんも逮捕直前でピンチだった。

 その中曽根さんが5年間の長期政権を実現したのは、「アメリカ寄り」に徹したから だ。

 中曽根さんは今回のイラク戦争では「国連より日米同盟だ」と出張し、小泉さんが同 調した。もともと旧福田派はアメリカ寄りで、多角外交の角栄とは肌が合わなかったか ら、中曽根さんの意見に同調出来た。

 ラジオでは、時間がなくて「イラク戦争への中曽根の存在」まで話すことが出来なか った。

 終わってから「ここだけの話」の執筆に5時間かけた。イラク戦争に関しては新聞紙 上では沈黙していたが、熱心な読者から「牧さんの意見はどうなんだ?」という手紙が 来る。はっきりしなければならないが、タイミングが今ひとつ、判断出来なかった。

 どうしても、どう書いても、小泉批判になってしまう。「決意表明」だけが得意な小 泉さん「日米同盟が大切」と決意表明するが、あまりに外交を単純化していないか。少 なくとも、中曽根さんは、もっと上手にする。

 本当は我々、ジャーナリズムに責任があるのだが、それをどう表現するか。下手くそ で、下手くそで……。

 一度、書いたモノをボツにして、また3時間かけたが……うまく行かない。

 深夜から未明まではテレビ。激しい戦闘を報じる。長期戦の様相。少なくても、今週 いっぱいはかかる。

 朝一番で産経新聞を読む。29ページに「日本初”偵察衛星”28日打ち上げ」の特 集。この記事には載っていないが、聞くところによると、このスパイ衛星はアメリカの 意向で「トラックの移動はキャッチするが、運転士の顔までは写らない」そうだ。

 スパイ衛星の技術では、まだまだアメリカの傘の下。いつまでアメリカ追随が続くの か。

<何だか分からない今日の名文句>

切っても切れない赤い糸

3月20日(木) 韓国と日本で通告時刻が違う?

 朝、すぐにアメリカの爆撃がないことを確認してから外出。「この日は客がいないは ず」と見当を付け、東麻布の例の美容院へ。

 案の定、午前11時、お客さんゼロ。戦争や災害が起こると、女性はテレビにかじり 付いて外出しない。

 「9・11の後はガラガラで困った」と主人が笑う。

 まして「猶予期限まで○○時間○○分」なんてテロップに出ると、何となく「ショッ キングな場面」を期待するのか、テレビに釘付け。結構、女性は残酷なのかも知れない 。

 仲間うちの情報では「20日10時の時点で、アメリカから戦闘開始の通告はまだな い」と聞いていたので、ゆっくりとしていたのだが、頭を切ってもらっている最中、1 1時40分頃、突如、攻撃開始。湾岸戦争と比べると限定攻撃で散発的な花火だった。

 いつ、日本政府に連絡があったのか? 気になって、取材したら11時30分、外務 次官と官邸の外務省出身の秘書官の携帯にアメリカから連絡があった、という。(これ も確定的な情報ではないが)ギリギリの事前通告。アメリカも舐めたことをしてくれる 。

 報道によると、韓国には午前8時30分にアメリカから「3時間後に爆撃」の通報が あったらしい。

 この時間の差に何を感じる。どうも、一番先に支持を明確にした小泉日本は舐められ ている。

 戦闘開始の新聞は五十歩百歩の内容。大体、テレビで知ったことばかり読まされるが 、朝刊の座談会では各紙の個性が出る。社説のようなもの。

 毎日新聞は朝比奈編集局長の出席者選びで、他紙を圧倒した顔ぶれになった。

 読売新聞の顔ぶれと比較して貰えば、新聞社のスタンスがわかるというものだ。

 「世界週報」の原稿を書き上げ、夜はテレビに釘付け。日記を書く時間もない。

 戦争犠牲者を出さないように祈るしかない。

<何だか分からない今日の名文句>

地に落ちた「大国の仁義」

3月19日(水) 北朝鮮はどう動くのか。

 終日取材。

 「イラクの自由作戦」が秒読みである。「イラクで生まれ、イラクに死す」と胸を張 るフセイン側が亡命するとも思えない。日本時間20日午前10時の時間切れが近づい ている。

 「本当は亡命したい」と言った顔付きの副首相が「亡命した」と報道され、わざわざ 記者会見をして自らの亡命を否定した。イラク軍の一部が投降したという情報もある。 情報戦は終盤戦だ。

 短期戦になるのか。

 イラクは核を持っていない。しかし、生物・化学兵器は確実に持っている。フランス は「生物・化学兵器を使えばアメリカ側につく」とけん制したが、使えば、イラクはお 終いである。イラク政権は生き残るために露骨には生物・化学兵器は使えない。

 しかし、テロ組織を使って、いろいろな場所で、生物・化学剤を風に乗せることは出 来る。アフガンのようなアルカイダの残党がいるところはもちろんだが、アメリカ本土だ って危ない。

 精油所にイラクは火をつけるかも知れない。原油価格は下がっているが、そうなると 微妙だ。

 日本の指導者の大多数が「短期的に終わる」と見通しをたてている。が、まだ不確実 要素は残っている。

 そして、一番心配なのは北朝鮮の挑発だ。彼らは、何らかのメッセージを出す。アメ リカよ、イラクだけではないぞ!北朝鮮を忘れるな!という軍事的アピール?をしても おかしくない。

 自民党筋は「ブッシュのタイムスケジュールは3月イラク開戦、4月に戦後処理、8 月北朝鮮爆撃、だろう」と予想していた。幾分、遅れたが、ブッシュはイラク開戦にこ ぎ着けた。イラクが処理できれば「北」もやりたいのだろう。

 もちろん、それまでに「北」に対する外交努力は行われるが戦争慣れしたアメリカは 突進するかも知れない。

 大変なことだ。

 民主化が必要なのはイラクより北朝鮮の方ではないか、というアメリカ世論だって存 在する。

 その時、日本はどうするのか。その日、その日の、雰囲気でイラク攻撃支持を明言し た日本は北朝鮮攻撃に反対するのか。その判断はさらに狭くなった。

 北朝鮮だって、このくらいの情報分析はしているだろう。だがら……何とか、アメリ カとテーブルにつきたい。そうすると、皮肉なことだが、また「軍事訓練」の形で、ア メリカにて過激なメッセージを送ることになる。

 メッセージに過剰反応すると、まずいことになる。これが怖いのだ。

 僕が戦争に反対する最大の理由は「思わぬこと」が重なり合って「思わぬ結末」を迎 えるのが戦争だからだ。

 戦争の結果に、正義も不正義もない。戦争を始めた途端に、人類はあっと言う間に正 義・不正義の世界から、結果だけの世界に鞍替えする。場合によっては、我々の「滅亡 」を覚悟しなければならないのだ。

 小泉さんに「狂気の指導者」になって貰いたくない。

 どんな時代でも戦争とワイロはなくならない、と言われる。そうだろう。しかし、2 1世紀の戦争は大量殺人を覚悟し、滅亡を覚悟しなければならない選択なのだ。

 株価を無視する首相、と言われた小泉さんだが、森内閣を引き継いだだ時から株価が 約50%ダウン。これはあまりにも無策過ぎる。

 この経済的失政を隠すために「戦争」に逃げ込もうとしている。

 夕方、近くの会社の社長と「ご意見番」が仕事場来訪。「創立30年のお祝いの記念 品」と評判の「電波クロック」をプレゼントしてくれた。

 10万年に一秒の誤差という優れモノ。ありがとう。

 「創立30年」と言えば長い年月だ。礎を築いた人のなかでも、すでになくなった人 もいる。

 地道な努力がここまで来た。感無量だろう。

 そんな努力も戦争ということになると、無惨に踏みつぶされる。10万年で誤差1秒 の技術も破壊される。

 こんな真っ当な意見も、開戦と同時に姿をけすのか。

 歴史はこうして奈落に落ちる。

<何だか分からない今日の名文句>

赤い猫でも白い猫でもネズミを取れば良い猫
でも、正義の猫も戦争すれば悪い猫

3月18日(火) NYクタイムズ対Wポスト
          読売・産経VS毎日

 ニューヨークタイムズ紙とワシントンポスト紙が18日の社説で真っ向から対立する 社説を掲載している。

 Wポストは、戦争肯定派。NYタイムズは否定派。特にNYタイムズはブッシュ大統 領になってから、京都議定書事件をはじめとする一連の「我が儘」で、アメリカが国際的 に孤立している、と手厳しい。

 その通りだと思う。ブッシュは軍事力を過信して「裸の王様」になっている。

 誰が考えても「もう一人の裸の王様」フセインは悪だ。多分、現在も化学兵器を持っ ているだろう。彼の政権は打倒されてしかるべきだ。

 しかし、そのやり方でアメリカは同盟諸国を説得することが出来ず、世界的に孤立し ている。NYタイムズの判断は正しい、と思う。「裸のブッシュ」に付いていけない、 と嘆いている。

 小泉さんは「日米同盟を大事にする。問答無用だ」と言った調子だ。問題は「同盟す る国の民は何を望んでいるのか」にある。アメリカの世論は真二つであることを肝に銘 じなければならない。

 小泉さんは「冷静さに欠けるブッシュ」が好きなのだ。威勢の良いブッシュが好きな のだ。どこか波長が合うのだ。それに外務省(アメリカの言いなり、中国の言いなりの 外務省)から「戦争が始まればアメリカの世論は戦争肯定に傾く」と報告を受けている のだろう。勇んでブッシュ支持を表明した。

 僕も国連より同盟国・アメリカが大事なことは良く分かる。日米安保条約の意味は十 二分に理解できる。

 しかし「ブッシュのアメリカ」は今、同盟するに値する相手なのか。疑問だ。

 日本の新聞も主張が鮮明になって来ている。読み比べて欲しい。18日付けの社説で は、読売、産経がかなり明確にブッシュ支持。毎日は逆にかなり批判的だ。

 朝日は、いつも寝返るから、その真意は分からない。

 とにかく、新聞が立場をはっきりするのは良いことだ。

 朝「たいとう診療所」のリハビリをすませてから出社。編集局幹部と雑談。

 夕刊の売り物に大リーグ・サッカー面を充実させたいという話。結構ではないか。彼 には色々な工夫がある。だから紙面に活気がでる。

 このところの朝日新聞の部数減は「大学生は朝日」という宣伝が効かなくなったため だ、というのが彼の分析。おもしろかった。学生の新聞離れは甚だしいが、毎日支持派 の学生は、けして多くはないが定着している。

 夜「競馬はロマン」を書き上げ、そうそうに寝る。すこし気分的にイラク疲れ?

<何だか分からない今日の名文句>

楽観仲間の戦争ごっこ

3月17日(月) 日本はフランスを読み違えた

 予想された通り、米英は単独で開戦へ突き進むことになった。日本はどうするのか。

 聞くところによると、外務省は当初「フランスは折れる」という見通しを首相官邸に 上げていた。この報告を前提に、小泉さんは「新しい決議案」を評価し、決議案可決の 「お墨付き」を取って開戦。日本は堂々と国際的責任(戦後の経済支援)を果たす、と いうシナリオだった。

 しかし、フランスは下りなかった。

 何故、フランスが同盟国アメリカに「NO!」と言えるか。大まかに言えばフランス に「ソ連の脅威」がなくなったからだろう。冷戦下のソ連は「親しいロシア」に変身し た。そうなれば超大国アメリカに対抗できる「新しい同盟」の可能性さえあるじゃない か。その時代感覚が我が外務省には欠落している。

 500万人のイスラム教徒を抱えるフランスは、軽々しく米国積極支持は出来ない。 戦後処理の段取りを考え、石油利権も考え、時間を稼いだ。そして、拒否権をちらつか せた。

 安保理事会で9票の賛成を取れなかったから、決議案を引っ込めた、と解説する人も いるが、本当のところはフランスの去就がすべてだった。

 米英単独開戦。アメリカにも誤算。イギリスにも誤算。イラクにも誤算。だったら「 我々か、フセインか」とアメリカに最後の選択を迫られたフランスにも誤算。

 誤算が重なって、戦争は始まるものだ。

 日本はどうだろう。小泉さんは「親米」と言うより「親ブッシュ」。初めから「開戦 」だった。国連より日米同盟だった。はじめから「誰よりも早く米国支持」だった。

 だが、外務省の報告で、いかにも「米支持は決議案可決が前提」というようなフリを した。だから苦しい。

 今となっては、フセインに亡命してもらうしかない。ブッシュの宣戦布告演説を聞 いた後、18日午後、小泉さんは日本の立場を明確にするが、かなり、苦しい言い訳に になるだろう。

 経済界。戦争が短期か、長期か、で見通しが分かれる。とりあえず、ニューヨーク株 式は強気に値をあげたが……。

 「ここだけの話」を書き上げる。戦争ものを書きたいと思ったが、まだ、戦争の本当 の狙いが分からないのでやめた。代わりに入試ミスが何故、起こるのか。その裏に「ミ ス発見ビジネス」があるという裏話を書く。

 夜、柳橋界隈を散歩していたら、最近、親しくなった「競馬好きの若者」とばったり 。「小料理・都」で一緒に夕飯。

 彼の100分の1の愛馬・ミスティーマリアが日曜日の7レースで惜しくも3位。挟 まれる不利があったらしい。今度は勝負になりそう。

 当方も自慢話。日曜日は中山で最終レースの3連復9680円を取った、と話すと「 中山にいたんですか。会いたかったですね」。

 28歳の若者と話が合うのも、趣味が一緒だからだろう。競馬場で連絡が付くように 、お互いの携帯の電話番号を教えあう。

 競馬談義には「都」の女将さんと彼女の息子も加わって、大分、遅くなった。

<何だか分からない今日の名文句>

誰もが誤算、誰でも大損

3月16日(日) 山本祐司・執念の鮮烈書!
      「田中角栄は米の謀略に填った」

 15日夜、宇都宮の「取材兼お遊び」(これはスポニチ「おけら街道」で書くつもり )から帰ると、山本祐司先輩から、最近発売された「アメリカの正義に惑わされるな」 (大野彩子との共著・河出書房刊)が送られてきていた。

 一気に読んだ。腰巻きにある「私たちは<正義>という名に隠れされた大国のエゴイ ズムに振り回されはいないだろうか?」という呼びかけに興味を持ち、一気に読んだ。

 16日朝方、読了。凄い本だ。

 アメリカの野望のために繰り広げられる謀略の歴史。山本先輩自身の渾身取材と、膨 大な資料の解析で、アメリカの野望を白日のモノにさらしている。

 下山事件、三鷹事件、松川事件……戦後の混乱期、国鉄の大量首切りに反対する運動 が世論の支持を受けようとした瞬間、次々に起こった鉄道怪事件。三鷹事件、松川事件 の犯人は共産党員とされたが、何年か経って、無実と分かる。下山事件は自殺、他殺が 判断出来ずに何故か捜査は終結した。

 これ、すべてアメリカの謀略だった、と山本さんは分析する。「大男」「歌劇団メン バー」と謀略に関係したと思われる犯人像に近づく。

 毎日新聞ロッキード事件の取材班キャップだった山本先輩は、東京地検が田中角栄前 首相を逮捕した1976年7月27日の朝刊で「検察・重大決意」の大スクープを放っ た。これは歴史的な特ダネだった。

 そのスクープの裏話も披露している。彼はある日、地検の建物に忍び込んで、置いて あった書類を盗み出し、その書類をつなぎ合わせると、事件の標的は「田中角栄」とい う意外なチャートが浮かび上がった。彼はいつか田中は逮捕される、と判断して「重大 決意の日」を待った。

 この話は実におもしろい。が、山本先輩の言いたいのは別にある。何故、田中角栄は ロッキード事件で逮捕されたのか。

 田中首相は1973年11月22日、アメリカと対立する新中東政策を発表した。日 本はアメリカ、イスラエルに対し「武力での領土獲得、占領に反対する」などの4原則 を突きつけた。当時、日本の石油の90%は輸入。その80%は中東原油であり、もし 、石油輸入がストップすれば日本経済は崩壊する。田中は国益の外交を展開した。そし てアメリカと対立した。そのあたりのことは、僕も、当時、通産相だった中曽根さんに 聞いたことがある。

 アメリカは憎い田中を葬り去る謀略に走る。1976年の夏、ワシントンの米国上院 外交委員会多国籍小委員会に一つ小包が配達される。その小包にロッキード社の極秘資 料が入っていた。そして、そこには、田中の名前が……。

 この小包は誤配されたものと後に説明がされた。実は、それが事件の発端だった。

 誤って捜査当局に、自分の会社の極秘資料を送りつける者がいるだろうか。ロッキー ド事件は謀略だった、というのが山本説である。

 僕もロッキード事件を一緒に取材したが、まったく同じような印象だった。ロッキー ド事件が起こって以来、自民党の政治家はアメリカに刃向かうものはいなくなった、と 僕は感じている。

 イラク侵攻が起こる今、山本先輩の鮮烈本は実にグッドタイミングである。

 前にも、簡単に山本先輩のことを日記で書いたが、彼は、僕が新潟支局に勤務してい たころ「反戦自衛官事件」の取材をやって知り合った。東京に帰って、山本先輩は「新 潟に良い記者いる」と吹聴してくれた。数日後、当時の名物社会部長がわざわざ飛行機 で新潟に来て「他の部に行くな」と言ってくれた。(畑山部長は飛行機が趣味だった) 。山本さんのお陰だった。

 だから、山本先輩にはご恩がある。三木首相偽電話事件を一緒に取材したおり、鬼頭 判事補単独インタビューのスクープをして、ホンの少しだが恩を返した。

 そんな兄弟弟子の関係だったが、その後、山本先輩がまず脳卒中に倒れ、僕も続いて 倒れた。因縁を感じる。

 入院中の僕に手紙を書いてくれ、不自由な足で見舞いに来てくれた。

 送ってくれた本を開くと、メモ帳を持った山本先輩の漫画イラストが書いてあった。

 左手しか動かないのに、器用に漫画の自画像を描く先輩。どこから、この余裕が出て くるのか。凄い。

 これも歴史に残る名著「アメリカの正義に惑わせれるな」を是非是非、読んでもらい たい。

<何だか分からない今日の名文句>

今も昔も石油戦争

3月13日(木) 嫌に地震が多い
売れるNewsweek
ビンラディンの包囲網


 朝一番で市川市役所へ。野暮用の証明書を貰う。300円。職員の愛想、すこぶる良 好。一分で終わった。

 午前10時前。腹が減り、食べ物屋を探すが、適当な店がない。仕方なく、JR本八 幡駅構内で「ミニカレー」の立ち食い。女性店員の愛想???

 一概に「官が不愛想、民が愛想いい」とは言えない。お客を独り占めに出来る、この 時間の「そば、うどん、カレー、いなり」の立ち食いは強気なのだ。

 「何?そば?」と不愛想に聞く女性従業員。とても商売人の顔ではない。立ち食いそ ばの官僚化?

 柳橋の仕事場に帰った途端、地震。7階なのでかなり揺れた。夜には西日本でも地震 。ボラ騒ぎ、たまちゃん現象……などを見ると異常の春。どうもヘンな感じ。

 またNewsweek日本版が売れている。湾岸戦争で爆発的に売れた日本語版。ま たイラクで売れ出した。戦争は部数増に繋がる。

 「戦争のシナリオ」の特集が気になって購入。「フセインの捨て身の反撃へ」は読み でがある。「対空砲は病院、学校に配備されていて、米軍の爆撃がいかに正確でもテレ ビには残虐な場面が映し出される。それがフセインの戦略」と分析している。

 そのくらいの戦略ではないだろう。Newsweekも「どの時点かわからない」と している生物兵器をバラまくタイミング。フセインは、その計算を必死に続けているの だろう。

 国連安保理事会。話し合い難航。「戦争NO」の国民世論を無視出来なくなったイギ リスはかなり苦しい状態に追い込まれている。

 あまり日本では報道されていないが、今、英国王室はチャーチル皇太子のスキャンダ ルで大騒ぎになっている。それも、ブレアの悩みの種?

 ニューヨークでも反戦デモ。ますます、ブッシュは孤立しているように見える。フセ インは時間稼ぎをして戦争準備を着々と進めている、というのだが……(一方で、フセ インは一族の逃避策を練っているという分析も)

 この事態を打開する道がある。それはビンライン捕獲である。アルカイダの有力幹部 が次ぎ次ぎに逮捕され、包囲網がやっと狭まっている。

 ビンラディンが捕まれれば、事態は変わる。アメリカが主張する「アルカイダとフセ インは同盟」と言う図式が嘘か、本当か、ある程度、分かる。少なくても、イギリス人 はブッシュを信ずるか、信じないか、決断出来る。

 それよりも何よりも、アメリカの第一の目標はビンラディンの捕獲だった。アメリカ 世論も変わるハズ。

 株価は8000円台を行ったり来たり。来週は色々な意味で「分かれ道」になるのだ ろう。

<何だか分からない今日の名文句>

ブッシュ立てれば、世界が立たず

3月12日(水) 社会保険事務所の繁盛
          公的資金→銀行国有化?


   東京専売病院で検診。順調。その後、終日、野暮用。

 各地の社会保険事務所が繁盛しているらしい。ほとんど年金相談。「年金、もらえま すか?」。「私が貰う年金はいくら?」。3月には、この一年間に支給年齢に達する人 が殺到する。

 去年までは「60歳になったけれど65歳から支給された方が得」と言った人が多か ったが、ことしは「早く貰わないと、年金制度がなくなるのでは?」と心配する向きが 多くなった。

 朝から、彼らは殺到して11時前に午前中の受付が締め切り。後は午後に回す。午後 はもっと長蛇の列。2,3時間待つのは当たり前だそうだ。

 列の中に、何年ぶりに小学校の同級生を見つけた、なんて場面も。60歳代に事務所 は占拠されている。

 消息筋によると、午後3時ごろになって、支給申し込みの事務は異常にスピードアッ プされる。コンピューターが閉じる前にデータを入力しなければならないので、これま で「ああでもない」「こうでもない」とイチャモンを付け、支給出来ないかのように脅 す?職員が、極めて事務的に処理するようになる。

 「この時間帯を狙うには午後1時半ぐらいに行くのが良い」と消息筋は言うが、それ にしても3時間は待たされる。

 12日に再上場した「みずほファナンシャルグループ」の株価が10万2000円を つけた。銀行の株価は高い、と誤解している向きが多いが、旧商法の50円額面換算で は102円である。一般企業の株価が100円を切ると、かなり業績が悪いと言われる 。

 「みずほ」は102円なのだ。

 銀行を巡る打開策は、公的資金導入→国有化の壮大な議論に発展するのか。今週末の 株価、注目。

 野暮用の関連もあり、この日は市川に一泊した。

<何だか分からない今日の名文句>

年金同窓会

3月11日(火) JRAから抗議を受けた
         定期預金は解約?
         税務署のゴミあさり


 朝、親しいJRAの理事から電話。「昨日会えると思ったので、その時、話そうと思 ったんだが会えなくて……で、例の電話投票の件」

 電話投票の件とは、3月5日付けのスポニチ「おけら街道」で書いた「ファンサービ スに敏感なJRA」に関する話だった。

 このコラムの中で、僕はこう書いた。

 「先週の土曜日。たまちゃんが電話投票で馬券を買ってくれた。たまちゃんの電話投 票歴は並のモノではない。多分、電話投票史に残るほど、誰よりも早く会員になった。 これが自慢。ところが、この日、話し中で掛からない。たまちゃん、真っ青な顔をして 掛け続ける。締め切り寸前、やっと繋がった。

 『最近、こんなことが多くて……回線が足りない。でも、自分で馬券を買わない JRA職員は、それに気づかない。友人が何人もコレで競馬をやめた』

 IPATなどの新方式には力を入れるが、昔からの電話投票 ファンに十分なサービスが行き届かない鈍感。何故か、この日、特別3レースすべて的 中した小生に『もし間に合わなかったら僕がノンだことになるんですか』とたまちゃん 、不安気だった」。理事さんは「このコラムには誤解があり、見当違いの指摘だ」と言 うのだ。

 回線は十分であり、たまたま、たまちゃんが掛けた番号が掛からなかっただけだ。フ ァンサービスは行き届いていると言うのだ。確かに「鈍感なJRA」と書かれては腹が 立つだろう。

 率直にモノを書く方だが、トラブルは極めて少ない。人間関係が崩れるようなことに はまずならないが、遊び仲間でもある彼といがみ合うのはまずい。「分かりました」と 答えてから再取材する。

 ARS方式・投票先電話番号一覧【ARS会員限定】を入手して、問題の番号を特定 した。

 東京地区には以下の投票先がある。

   (投票先A)0570ー060ー130

         0570ー060−330

   (投票先B)03−5844ー8111

   (投票先C)03−5844ー9111

   (投票先D)03−3438−7777

 その内、たまちゃんが電話したのは(投票先D)03−3438−7777だった。

 調べてみると、確かに他の電話は話し中になることはほとんどない。

 しかし、投票先Dは、たまちゃんが慌てたように、電話は殺到することは結構あるの だ。これまでに「積み残し」の電話があったことは、JRAの職員も認めている。

 その原因は、この番号にある。あまりに良い番号だ。新築マンションは7階から売れ て行く、と聞いたことがあるが「ラッキー7」は縁起がいい。「7777」はあまりに 縁起がいい。

 北は札幌から南は宮崎まで12地区にそれぞれの投票先が用意されているが、わざわ ざ遠い北海道から「7777」に電話するファンもいるのだ。そこで、渋滞が起こる。

 当方が反省すべきは、そこまで取材せず、JRAの回線不足と決めつけたのは、中途 半端な指摘だった。

 「鈍感」と書いたのは行き過ぎだったかも知れない。

 しかし、現実に「電話が掛からない」と投票をあきらめた人も多い。何故、込んでい るのかを告知しなかったのか、という思いは変わらない。

 僕のコラムを読んだJRAの職員は、たまちゃんに「電話投票会員向けのご案内に、 今後『03−3438ー7777は込み合うこともありますので、他の電話番号をご利 用ください』と書く」と約束してくれた。

 僕は誰よりも競馬を愛している。たまちゃんも同じだ。競馬ファンは皆、同じだ。

 「鈍感」と書きたいようなコトを、競馬ファンは幾つも経験している。競馬ジャーナ リズムがJRAに遠慮して、その怒りをフォローしない面もあるのではないか。だから 、僕は率直に書き続ける。

 たいとう診療所でリハビリを終えてから、銀行に行ってなけなしの定期預金を解約す る。

 日経平均が8000円を割ったら、大手銀行は含み損で破産寸前になる、と日記など で書いていた。この持論に則れば、定期預金をそのままにするのはあまりに矛盾する。 普通預金なら保護されるが、定期は保証されない。

 現時点で今すぐ、大銀行が破産するとは思えないが、やっと資本を増強して「3月危 機」を回避したかに見えた銀行が、この株安で、消えたはずの「3月危機」に突入しか ねない様相だ。

 昭和恐慌の時、日本人は流行のダンスにうつつを抜かし、まったく恐慌が来るとは思 わなかった。その二の舞は避けなければならない。家庭の主婦でも、株価動向を見てい なければならない。

 出社後、編集局の幹部と立ち話。幹部が言うには「ブッシュは狂っているとしか思え ない」。

 共和党の原理主義グループの言いなりだという。アメリカは孤立していることに気づ かない。

 経済の話になると、さらに気が重い。我が社は株を大量に持っていないから、含み損 は軽微だが、広告収入に陰りが出るのは致し方ない。

 夜、親しい人と銀座で夕食。おもしろいことを聞いた。繁盛している飲食店のゴミ箱 あさりが始まっている。ゴミ箱から、使った割り箸をもって帰って、脱税の証拠にする マル査。

 思わず、笑ってしまった。

<何だか分からない今日の名文句>

歳入欠陥が人間性欠如を生む

3月10日(月) 株価が7000円台の理由
        「ぢ」の大看板が!
        赤報隊事件の時効1


 日経平均が一時、8000円を切った。誰がなんと言おうと危機。このままでは世界 同時恐慌の兆しなのかも知れない。

 昨日の日記(3月9日)で「開戦となれば一時であれ、世界の経済は落ち込み、日本 では株価が落ち込む」と書いたが、市場ではすでに「開戦」と認識しているのだろうか 。

 しかし、この日本株の暴落には、まったく違うところに原因があると思う。このヒン トは週刊文春の「竹中平蔵・三井住友・外資極秘3者会談」のスクープに隠されている 。

 三井住友ファイナンシャルグループ(SMFG)が5000億円の優先株発行による 資本増強を強行し、外資に全く有利な配当を約束した。邦銀を外資に売り渡したかの政 策。これを竹中さんが3者会談で認めた、という記事である。この推移を見た「はげた かヘッジファンド」が株を売り浴びせている。これが銀行株暴落の原因の一つと思える 。

 イラク侵攻より、もっと病的なものが日本経済に内在する。

 「ここだけの話」を書く。馬鹿げた新聞販売の乱戦をチクリと皮肉って書いたつもり だが……社の内外の反応はどうだろう。昔「新聞はインテリが書き、ヤクザが売る」な んて書いて、総スカンを受けたことがある。だから、穏やかに、皮肉を書いたつもりだ が。

 続いて「おけら街道」執筆。個人馬主の激減を書く。これも、押さえた押さえて書い たつもり。

 夕方、御徒町のデリーに歩いて行く。カシミールカレーのルーを買う。主治医の大山 ドクターが「辛いカレーが好きだ」と言っていたので、今度の診察の時、持っていくつ もり。

 途中、清洲橋通りと春日通りの交差する四つ角で異変発見。太明朝体「ぢ」の大看板 が高い塀に隠れてしまったのだ。

 ここは由緒ある「ぢ・ヒサヤ大国堂」。「痔」は「じ」なのに、ここの主人は「ぢ」 と書いた。多分、日本で一番知られた痔の薬屋である。

 その「ヒサヤ大黒堂」の由緒ある日本建築が壊され、マンションになるらしい。これ は大ニュースだ。

 人類が「ぢ」に悩んだのは、紀元前である。旧約聖書のサムエル記とかいうところに 「主はペリシテ人に腫れ物ができるようにした」と書いてある。と聞いたことがあるが 、確かではない……それ以来、人類は痔に悩み続けた。要するに簡単に見えて、かな り複雑な病気なのだ。「ヒサヤ大黒堂」は、これに敢然と立ち向かった。

 「大黒堂物語」でも書きたいな、と思っていたから、どんな理由で今般、マンション になるのか。教えて貰いたい。

 寒いので、夕食はおでん。松坂屋地下の紀文では、1000円で20近いおでんがパ ックされていて、お買い得。

 日付けが今、11日午前0時を迎えた。赤報隊事件がすべて時効になった。

<何だか分からない今日の名文句>

報道に時効なし

3月9日(日) フセイン親族は次々に脱出
        不細工な顔
        伊東競輪で完勝?

 イラク攻撃はいつになるのか。

 7日夕、編集委員部屋で同僚たちと意見交換。安保理で、武力行使容認修正決議案が 採決されるのか。最後通告にイラクが応えて武装解除するのか。

 「そんなことより、戦いの中身を現時点で分析するのが正しいんじゃないか」と言う 仲間が多い。

 アメリカの侵攻を正当化する儀式が行われているだけで、今や戦争は不可避ーーとい うのが、彼らの意見。フランスの拒否権発動など、まだ不確実なところはあるが「3月 下旬、4月イラク新政権樹立」の可能性は相変わらず高いようだ。

 「アメリカ軍がやって来て、フセインが敗走すれば、イラク国民は『アメリカ万歳! 』と歓迎するだろう」という意見。「戦いは2,3日で終わる。石油の値段は心配する ほど高騰しない」という意見。

 確かにフセインの親族は、次々にイラクを脱出している、という情報もある。

 しかし、一度、火を噴いた戦いが、そう簡単に収まるものか。楽観的すぎないか。

 開戦となれば一時であれ、世界の経済は落ち込み、日本では株価が落ち込む。銀行は またぞろ自己資金不足に陥る。我々に取っては経済戦争だ。

 9日の朝刊8ページに「朝日新聞事件を考える・言論へのテロ どう考え、どう防ぐ 」の特集に僕のインタビュー記事が載った。友人から「お前の顔写真、別人のようだ」 という電話。眼鏡を取ったところを写されたので、確かにイメージが違う。

 それにしても不細工な顔。「こんな不細工な顔ではない」と抗議したいが、俺の写真 であることは間違いないから抗議するわけにも行かない。顔つきも自己責任。

 9日の中山。浅草橋のイトウさんの愛馬・ザッツザプレンティが出走する弥生賞。「 相手探し」と判断して、逃げ馬のスズノマーチを選んだ。2−4の一点。

 ところが、逃げるハズのスズノマーチが中団を追走している。駄目だ!と思ったら、 ゴール前、2着に飛び込んできた。やった!

 ところが、である。肝心のイトウさんの馬が馬群にしずんだまま。無念。お祝いの電 話をするつもりだったが……残念。

 でも、伊東温泉競輪の6レースで1800円台を2点でゲット。まあまあ、儲かった 週末だった。

<何だか分からない今日の名文句>

人民、豹変す

3月6日(木) 富沢がついに「社長」に
        イトウさんの弥生賞
        副編さんがいなくなったら?

 朝、うれしい手紙。富沢英機がついに社長になった。

 富沢は早稲田政経「吉村正ゼミ」の仲間。吉村先生、早稲田の最後の教え子「昭和4 2年卒」は半数がマスコミに進んだ。日経新聞には3人。3人の中でもっとも権力志向 が強い?と評判の富沢が、日経常務を経て、6月にテレビ大阪の社長になる。その挨拶 状。

 日経本社の社長ではないから、ご本人は不満かも知れないが、ただひたすら出世街道 をよじ登ることだけを考えた(と推測される)彼。とりあえず、目標の「社長」になっ たのは幸甚。良かった。

 新聞記者としての力量、品格には様々な意見があるようだが、こうと決めたら、まっ しぐらの出世人生。これも爽やかではないか。おめでとう。

 朝の散歩のついでに、浅草橋のイトウさん宅を訪問する。9日(日曜日)は弥生賞。 彼の愛馬が一番人気になりそうな気配だ。

 イトウさんも社台の会員。バブルガムフェローの愛馬仲間だったことで知り合った。 電話で情報を交換する仲だ。

 名馬・バブル以降、彼の馬主運は芳しくなかった。が、突然、イトウさんに運が回っ て来た。

 年賀状に「昨年は3歳が不振でがっかりしていたら、2歳馬が4頭デビューし、4頭 とも新馬勝ち」とあった。これは奇跡に近い。

 その1頭、ザッツザプレンティが弥生賞に出走する。しかも、武豊が乗って人気にな りそうな気配なのだ。

 もし、勝ったら……1着賞金が5400万円だから、イトウさんには……40分に1 の権利だから、100万円ぐらい入るかも知れない。

 羨ましい。昭和23年生まれの独身。賞金は全部一人で使える。羨ましい。  しかも、彼は馬券を買ったことはないから、馬券で損するなんてこともない。羨まし い。

 彼から「情報らしき話」もあって……このレースはどうも固いようだ。当方、せめて 馬券で儲けよう。

 ところが、不景気の話になると「稼業のおもちゃ業界が火が消えたようで」とイトウ さん、深刻そうである。浅草橋、蔵前で店を閉めるおもちゃ屋も多い。

 「そんなに良いことばかりないよ」と慰めるが……ともかく、愛馬の健闘を祈るしか ない。

 車券は買わなかったが、花月園で滝沢センセイ、また2着と健闘。うれしい。一着に なったら……って夢を見る。

 午後4時、TBSで野暮用。続いてJRAで打ち合わせ。菅原文太の9年ぶりの主演 映画「わたしのグランパ」の完成披露試写会に誘われたが、多忙の副編に時間が空いた ので、映画鑑賞を取りやめ、パソコンの様々なご伝授を受ける。

 「今年はじめてですね」と言われ、ビックリする。何か、毎日あっているような気が するのだが……。

 4月下旬、副編、勤め先の人事異動で東京を離れるとのこと。パソコン仲間には地理 的距離感は皆無だから……と思いながらも、誰にパソコン設定を頼んだらいいか、ちょ っと悩む。

 雨、強し。

<何だか分からない今日の名文句>

遠くて近しはパソコンの仲

3月5日(水) 明珍さんが委員長?
       坂井議員を紹介した男
       三井記念病院のトイレ

 出社したら、メールボックスに「われら」が入っていた。「われら」は毎日新聞労働 組合本部機関誌。トップ記事に「労連委員長に明珍さん」とある。驚いた。

 明珍美紀さんは北海道報道部を経て東京社会部で活躍した女性記者。01年4月に生 活家庭部に移って健康問題などを担当しているが、戦後補償、人権などのテーマで健筆 を振るっている。

 僕とは、必ずしも意見が合ういう訳ではないが、彼女の書くものは出来るだけ目を通 す。(健康の記事は読んでいないが……)新しい価値観を発見でき、勉強になる。

 それにしても、彼女が新聞労連の委員長になるとは予想もしなかった。

 多分「毎日」から委員長を出す順番になって、どうしても候補が出せず、ウルトラC で彼女が選ばれたのだろう。労連委員長は難しい役職。正直なところ、一女性記者の将 来を考えると、どうだろうか。

 労連の組織は弱体化しているという評判。頑張れ!と言うしかない。

 例の坂井議員に逮捕状が請求される。国会開催中なので、6日に逮捕許諾請求、とい う段取りだ。

 予算案の衆議院通過と同時に、東京地検特捜部が強制捜査に入ったのは、93年3月 の金丸信事件以来。これは奥の深い事件になる。

 坂井議員を日本マンパワーという職業訓練会社を紹介した「大物政治家」がターゲッ トだ。

 午前中にやっと「街角スケッチ」を書き上げ、午後は「競馬はロマン」。その後、寒 さの中を浅草橋から秋葉原まで散歩する。途中、便意をもよおし、三井記念病院でトイ レを借りたが、1階のトイレはあまりに狭すぎて唖然。大便用のスペースに入ると身動 きが出来ない。往生した。

 女性のトイレも同じなのか。出てきた女性患者に「狭いですか?」と質問すると「狭 すぎますよ。でも、患者は文句が言えないから」。

 医療レベルの極めて高い三井記念病院が、最悪のトイレ環境を放置するなんて。ああ 、情けない。

 夜、仕事場の近くで年老いたホームレスを発見した。雨が降ると、JR総武線のガー ド下に避難するのだろう。手が悴んで、あまりに寒そうである。失礼かと思ったが、お むすびと日本茶をプレゼント。消え入るような声で「ありがとう」と言ってくれた。

 滝沢センセイが花月園の最終レースで2着に入ったお陰で、懐がちょっぴり暖かい。 あす(6日)から伊東開設記念。頑張るぞ!儲けるぞ!

<何だか分からない今日の名文句>

患者は人質ではない!

3月4日(火) 「坂井疑惑」の大スクープ!
         浅沼さん、ご苦労様でした

 寒い。めちゃくちゃ寒い。

 朝刊で毎日新聞が自民党の坂井隆憲衆院議員(佐賀一区)の政策秘書による不正経理 をスクープした。

 東京地検が捜査に乗り出すという記事だが、今日中に決着がつきそうだ。

 社会部長の話では「朝日新聞も先行取材していたようだが、土壇場で毎日が”裏取り 取材”で勝った」。どうも、このところ朝日に往年の力が失せている感じ。

 朝日新聞社会部の調査取材の柱はT君だろう。実は業界1の調査敏腕記者T君はもと もと毎日新聞の記者だった。朝日は「Tが毎日にいたら負けてばかりだ」と思ったのだ ろう。朝日はT君を引き抜いた。

 だから一時、朝日の調査報道に見るべきものがあった。が、徐々に力関係は変わって いった。柱を失ったハズの毎日にむしろ底力がついた。ここ数年、また「毎日の時代」 にもどった。「給料なんて安くても」の毎日魂。不思議なモノだ。いつも毎日が勝って いるとは言えないが、三年連続新聞協会賞も「毎日の時代」の表れの一つだろう。(し かし、給料は業界最低)

 午前、たいとう診療所。療法士の吉良さんから「右手の指が柔らかくなった」と言わ れる。右半身麻痺になって1年半ぐらいで手が動かないと、その後、指はドンドン固く なる。それが常識だそうだが「10年以上経って柔らかくなるのは不思議だ」という。 柔らかくなっても「役にたつ指」にはほど遠い。が、奇跡を信じて、毎日、指を動かそ う。

 日本橋・三越の食堂で「讃岐うどんフェアー」をしていると聞いたので、診療所の帰 りに「ざるうどん」(650円)を食べに行く。コシがあって美味。だが、値段が高い 。500円以下じゃなければ「讃岐のうどん」と言えない。

 エレベーターで「ゴロちゃん」にばったり。「ゴロちゃん」と言っては失礼である。 農水省の事務次官を勤めた「五郎さん」。もっとも尊敬する官僚の一人だが、生まれが 「日本橋浜町」なので、江戸っ子の先輩後輩の仲と心得ている。つい「ゴロちゃん」と 言ってしまう。

 ごろちゃんは洒脱な言い回し。官僚肌とは縁がない。奥さんにはじめてお会いしたが 、慎ましい方だ。

 それにしても「三越で買い物、昼飯」は江戸っ子の習い。なんとなく「同郷の連帯」 を感じる。

 隣の三井本館が高層ビルになるとのことで、取材みたいなことをしていると、日本看 護協会の阿部ちゃんから「まだですか?」と携帯。「何が?」「街角スケッチの締め切 り、昨日ですよ」。すっかり忘れていた。

 仕事場に取って帰り、一心不乱。途中まで書いたところに、知り合いの女性が来訪。

 体調を崩して仕事を休んでいたが、回復したので、仕事探しを始めたとのこと。良か った良かった。ほっぺたが赤いので「どうした?」と聞くと、酒を飲み過ぎて階段で転 んだ、とのこと。馬鹿じゃないか。

 妹のような彼女「私、アルコール依存症でしょうか?」と質問する。「実は底なしな んです」は冗談だろうが……どうなんだろう。「慎めよ」と言い残して出社。

 丁度、坂井議員の秘書逮捕の報。毎日のスクープ完了。同僚に特ダネ裏話を聞く。お もしろい。が書けない。

 うま・馬ランドの編集長の浅沼先輩が定年退職。午後6時半から、評判の飲み放題「 鮨の家」で送別会。主幹の北村さん以下12人参加。社のインフォメーションの案内嬢 2人も特別参加した。

 浅沼さんと北村さんは東大時代から仲。女性陣の2人は浅沼さんのファン?

 白髪の学者肌。浅沼さんは、これほど温厚な人はいないと思われる高潔な人物だが「 整理記者」として多くの伝説が残っている。

 浅沼さんの挨拶。「38年前、大阪本社で入社研修を受けた時、朝日に入った友人に こんな話をしたのを覚えている。朝日の研修では幹部が毎日の社旗を指さし『アレを撃 ち落とせ!』と言ったというんだ。そんな時代だった」

 昭和40年。朝日VS毎日の大戦争が繰り広げられていた。400万部にどちらが先 に到達するか、そんな戦争だった。

 その後、朝日は読売と1000万部の部数合戦を展開し、販売合戦に遅れを取った毎 日は「紙面が命」で別の路線を進んだ。

 景品をつけない毎日の部数は伸びず、今でも400万部弱。部数では朝日、読売の天 下だが、このところ、新聞は軒並み、部数が減っている。

 浅沼さんは定年後、趣味の山登りをするそうだ。が、競馬場にも来て欲しい、という 願いを込めて、参加者全員からニコンの望遠鏡が贈られた。

 二次会を断念して、9時過ぎに仕事場に帰り、深夜まで「街角スケッチ」の原稿の後 半を書く。

 明日(5日)の朝は氷点下になるという噂。おお、寒い。

<何だか分からない今日の名文句>

勝った負けたは時の運

3月3日(月) さようなら!足利競馬
         清水健太郎は太り過ぎ

 東京に春一番。17℃。4月のはじめの陽気だ。

 朝、神田橋の「デニーズ」で朝飯を食べた後、突風の中の散歩。額に汗が出る。

 午前中は野暮用。途中で「1枚100円」のTシャツの安売りを見つけ、5枚買う。

 仕事場に戻ると、郵便物がドッサと。何冊か献本があるが、その中で木村剛氏の「竹 中プランのすべて」を読む。

 政治家のサブタージュを克明に書いてはいるが……。

 実は、この日記でも何度か書いた足利競馬。ついに最後の日を迎えた。行きたかった 。53年の歴史に幕を下ろす瞬間を見たかったのだが、予定がつかなかった。2000 人以上のお客があったようだが、それにしても寂しい最後の日。1000人が馬場を歩 いた、という連絡が来る。

 夕方、浅草演芸場に権太楼が主任で出るというので、見に行ったのだが、昼と夜の部 を間違えて、すでに彼の高座は終わっていた。仕方なく、浅草東映の地下で「首領への 道 劇場版」を見る。ヤクザ映画を見るのは、何年ぶりだろう。

 主演の清水健太郎。あの「失恋レストラン」でレコード大賞新人賞を取った歌い手。 薬を使って逮捕されたこともあるが、Vシネマの役者として活躍している様子。

 それにしても、太っている。身長175センチで、B114、W98、H110。大 柄と言えば、それまでだが太り過ぎだ。養生しなければ?ちょっと尋常でない肥満を 感じる。

 客席は30人足らず。中高年ばかり。若い頃、高倉健に心酔したヤツばかり。

 雷門の天ぷら屋で650円の天丼をテイクアウト。雨の中、仕事場に戻り「おけら街 道」を書き上げ、11時就寝。

<何だか分からない今日の名文句>

馬場の変身 歌手も変身

 大臣も、やがて変心?

3月2日(日) 「赤報隊」の時効が迫る

 28日は月末に金曜日。都内の主要道路は渋滞が目立つ。午前中は確定申告の作業。 税金って高い。

 「赤報隊事件」の時効が迫っている。

 1987年から翌年の88年にかけ「朝日新聞襲撃事件」(警察庁指定116号)が 起こった。

 87年1月24日、朝日新聞東京本社に散弾が2発打ち込まれ、5月3日、朝日新聞 阪神支局に目出し帽をかぶった男が押し入り、散弾銃を発砲して、記者2人が殺傷され た。その後も朝日新聞に対する攻撃は続き、166号に指定された事件は計8件。それ ぞれの事件の直後に「赤報隊」と名乗る者から「内外の反日分子を一掃せよ」という趣 旨の犯行声明がマスコミに送られた。

 朝日の論調に反発する勢力の犯行ーーと推理されたが延べ47万人の捜査員を投入し ても、犯人の正体を追いつめることが出来ないままだ。

 昨年5月3日、阪神支局事件が時効を迎えた。

 最後の事件、静岡支局爆破未遂事件は88年3月11日。これが時効を迎える。「赤 報隊」の事件はこれですべて時効になる。

 この最後の3・11事件には、他の事件とは違う「特徴」があった。同じ日、「赤報 隊」は中曽根前首相、竹下首相(当時)に脅迫状を送りつけていた。この中で、犯人は 、阪神支局襲撃より前の87年2月27日、全生庵で座禅中の中曽根さんを狙った、と 明らかにしている。

 この脅迫状以降、何故か、事件は全く起きなかった。これが、事件最大の謎。

 裏で何が起こったのか。

 毎日新聞社会部が時効を想定した紙面を作るので、インタビューに答えて欲しい、と 言われ、午後4時から一時間「僕の推測」を話した。

 3月1日の土曜日は冬の嵐。午後から強い雨。夕方「くりくり少年軟式野球連合会」 の総会で講演。少年野球の指導者がお客さんなのでレベルが高く、若干、緊張したが、 まずまずの出来。イラクより北朝鮮に関心があるようだった。

 講演が入ったので、テレビ中継を見ることが出来なかったが、何と、中山競馬は3レ ースすべて的中。うれしいじゃないか。

 晴れわたった2日の日曜日は強風。富士山が都心からクッキリ見えた。

 明日は03年3日3日の3並び。何か良いことありそうな。

<何だか分からない今日の名文句>

こりゃあ春から縁起が良い