編集長ヘッドライン日記 バックナンバー
2000.9月




9月28日(木) 捺印なんて意味がない

 Sさんと一緒に座っている。

 Sさんは毎日新聞の先輩で、今は夕刊フジで活躍している政治ライター。

 政界に顔が広く、ネタを取るのが上手な人だが、ちょっとお行儀が悪い(先輩、失 礼!)ので「尊敬している」とは言いかねる。だから、という訳ではないが、七、八年、 会ったことがない。

 そのSさんと一緒に座ってる。

 その隣に、K・Tさんが座っている。

 K・Tさんは、同じく毎日のOBで、こちらは極めて親しい。彼、サンデー毎日に 「世界を歩く」というコラムを書いているが、某女学院大教授でもある。

 その3人が一緒に座っている。

 何か、バスの車内ようなところで、3人、笑いながら話しているところに、バスの 車掌のような男が「ハンコを出してください」と現れる。

 ハンコ?

 何だ、これは。

 二人は用意したハンコを出して、書類のようなものに捺印している。

 「ハンコがないと駄目です」と車掌のような人が冷たく言い放つ。僕は愕然とする。

「大学教授の給料はハンコがなければ貰らえないのか」。困った。どうしたら良いの かーーー

 そこで、目が覚めた。

 変な夢である。

 大体、どうして、この顔ぶれが一緒に夢に登場するのか、分からない。

 前夜、日本記者クラブで懇談した例の朝日のOB氏が「定年になったらどうするん だ?」などと聞いてきたので、明日のことさえ分からない僕が「第二の人生」の事を思 わず考えてしまったのか。それが変な夢の引き金?

 それにしても妙な夢だ。

 ただ、一つだけ、思いつく事があった。

 ハンコである。

 日曜日、兵庫県立看護大学のセミナーに行ったとき「ハンコは?」と聞かれた。

 忘れてしまっていた。

 「官」の催しでは交通費をもらうにもハンコが必要だ。それを忘れていた。

 「では、お渡ししますが、この書類にハンコを押して返送ください」と言われた。

 これは、どこでも同じだから、文句のつけようはないが、ハンコより、本人がそこ にいるのだからサインでいいじゃないか、と思った。

 大体「印鑑証明のある判」と言うのなら分かる。しかし、三文判でいいというのな ら、厳密に言えば、本人を確定する証拠にはならない。

 なぜ、サインでいけないのか。

 事実、田中、鈴木、木村さんは事務方から「こちらに、判がありますので押してお きます」と言われる。「牧」の場合、三文判が用意されていないから、ハンコを押して 返送する手間がかかるだけだ。

 この制度、やめるべきだ。

 インターネットの時代だ。

 外国人にハンコを押してもらうのか。サインがグローバルスタンダードだ。

 妙な夢を見たからという訳ではないが、朝のテレビの「今日の占い」を見る。

 てんびん座は金運5つ星、健康運5つ星、ラブ運4つ星。今日は最高の運勢?

 と思ったら、昼飯を食べたころから、例の歯が痛み出し、歯医者に直行。

 占いが外れたのか、夢見が悪かったのか。

 夜、ジャーナリストの勉強会「赤坂夜塾」。

 少年犯罪の権威・朝倉喬司氏の話を聞くが、聴衆9人。これでは講演者に失礼、と いうものだ。

 主催者は、もっと工夫すべきだ。

 講演の内容は、全て納得、というものではないが、良く調べており、勉強になった が、体力がないので、10時ごろ、退散。最後までいなかった無礼、お許し下さい。

<なんだか分からない今日の名文句>

夢を見たら人に語るな





9月27日(水) 東京に帰ったドタバタ野郎

 俺って、馬鹿。

 東京へ帰る途中に「オリンピックメダル・クイズ」なるものを考え出した。

 掲示板を前にして、なかなか書き込みが出来ない中高年がいるのではないか、と思っ た。そこで「掲示板の使い方」の勉強を兼ねて「当てもの」をしたら、と思いついた。

 と言うのも、ある女性講談師から「私のホームページの広場に書き込みして」と頼 まれたが、やり方が判らず未だに実行していない。

 だから、まだ、僕のようにやり方が判らない人もいる、と邪推していた。だからク イズをすれば、その種の中高年がワーと応募してくれる、と思った。

 しかし、である。この日記を書いている27日午後9時には全くといっていいほど 反響なし。

 そればかりか、応募者にメール(のアドレス)を書いてもらうべきか、どうか、で一日中、悩む。  意見を言う人にはメールを書いてもらいたい。

 しかし、クイズの応募ならメールはいらないんじゃないか。

 しかし、メールがないと、当選した人に連絡を取ることが出来なくなる。

 どうしたら良いのか。

 悩む。

 悩んだ末、副編に一度作った「応募要領」を作り替えしてもらうことにした。

 ドタバタは他にもあった。

 昨日の日記に「男の風下」という表現を使った。

 読者の一人から「男の風上が正しい」と指摘を受けた。実は、ちょっとした勘違い で「男の風下」というような言い回しで、もっと「下の下」という感じを出そうとした。

考えてみると、これは国語を冒涜した行為になる。

 読者にはお詫びして「二代目・魁」ボランティアの有希に訂正をお願い。歯医者に 行った。

 その後、新橋と内幸町の2カ所で競馬関係者2組と面談。日本記者クラブでは、察 するところ粋筋とおぼしき女性と面談中の朝日新聞のK先輩と懇談、楽しかった。

 その最中に「オリンピックの応募要領が消えている」との電話通報あり。

 多分、副編が差し替えている最中と判断して、それほど、驚かなかった。

 家に帰って、パソコンを見る。

 と、驚くことが2つあった。

 掲示板に「斉藤明」と言う人の書き込み。

 毎日新聞の社長は「斉藤明」。彼なのだろうか。

 社長だとすれば、社員の言動を調査しているのか。

 しかも、僕の写真が良い男過ぎる、と指摘する。

 果たして、社長なのか。

 日本記者クラブのバーの止まり木で、一人、酒を飲んでいた朝日新聞社長を目撃し た直後だったので、もしかして、毎日新聞の社長も孤独に苛まれ、僕のHPを開いたの か。

 いずれにしても、これは驚き。

 そして、もう一つ、驚いたことは、有希が「風上」に直した昨日の日記が、全て 「風下」になっているのだ。

 これは怪談だ。

 有希に「本当に直したんだな」。

 これはどうしたことか。

 あとになって副編が「応募要項」を直すとき、前の編集長日記をそのまま、張りつ けたことが原因と判明する。

 それにしても、ドタバタの一日。

 お粗末な一日。

 重ねて言う。

 当てもの大賞「オリンピック・メダル・クイズ」に、せめて応募されたし!

 
<なんだか分からない今日の名文句>

気がつけば秋のドタバタ





9月26日(火) 風上にも置けぬ女性陣

 どこのテレビ局だか忘れたが、朝のワイドショー。

 お騒がせのデビ夫人が「男の風上にも置けぬ人」と盛んに、ある人物を批判している。

   花田憲子さんと親しかった例のM青年医師のこと。親しかった女性の悪口を、マスコミにしゃべりまくる藪医者クン。前から「怪しからん」と思っていたが、女性の口から「男の風上」という言葉が飛び出して、何となく嬉しくなった。

 亡くなったお袋は、小学生の僕に「婦女子をいじめる奴を“男の風上にも置けない”と言うの。こんな事を言われないように、弱い女の子を助けるんだよ」と教えてくれた。

 男の風上。良い言葉だと思っていた。

 ところが、最近「この言葉は女性を低く見る差別用語ではないか」と言われた。

 そう言えば、そうかも知れない。

 が、婦女子を助ける「行為」は立派なんだから使うべきではないか。

 差別する気持ちが全く存在しない言葉を「差別用語」として扱うのは疑問である。

 そこへ、女性(デビ夫人だって女性である)が「風上論」を展開してくれる。嬉しかった。

 M青年医師は風上にも置けない男なのだ。

 デビ夫人については、面相があまり僕の好みではないので関心がなく「新しいお騒がせタレント」ぐらいにしか認識していなかった。

 でも、日本古来の良い言葉を勇気を持って使っている。それだけで、嬉しいではないか。

 こんな使われ方なら女性も、この言葉の存在意味を認識してくれるかも知れない。

 しかし、である。

 「男の風上」という言葉が死語になりそうなほど、日本の女性は明るく、強くなった。

 オリンピックを見てみれば分かる。メダルは、圧倒的に女性軍である。しかも、勝っても、負けても笑っている。

 今、日本の女は生き生きしている。

 考え過ぎかも知れないが、昨今、日常的に日本男児は女性軍にコンプレックスを抱いているのではないか。

 夫が意味もなく妻に暴力をふるうのは、コンプレックスの裏返し。お袋は、そんなことを承知で「婦女子をいじめてはダメ」と教えたんだろう。

 男よ!

 いじけたら駄目!

 わが関西旅行は野暮用で某地方都市に1泊。(地名を書くと「企て」がわかるので秘密)

 夕方、一時豪雨。肌寒い。

 この日記が更新される27日午前11時ごろには、東京の仕事に戻っている。

<なんだか分からない今日の名文句>

気がつけば秋





9月25日(月) 答案紛失!

 青い空に、綿のような、小さな雲がかかる。

 まあ、晴天と言っていいのだろう。

 神戸のメリケン波止場のホテルを出て、芦屋夫人御用達?のレストラン「ベリーニ」 で昼食。友人は「いま評判の店だ」という。

ランチコース2500円。美味。多分、東京なら3500円はするだろう。

 「この辺りの奥さんは贅沢で」と友人は苦笑いしている。2500円クラスの昼飯 を一週に2回は食べる。

 うらやましい。これが芦屋夫人というものか。

 店内のガラスの花瓶にカサブランカ。「造花だろう」と聞けば本物。うらやましい。

 震災後、3度目の芦屋行き。その度に豪邸街がいち早く活気を取り戻しているのが 分かる。

 琵琶湖を見て、東京に戻ろうと思ったが、誘われて、もう一泊する。

 彼との話題。

 「○○○大で、前期試験の答案用紙がなくなったらしいな」と彼。関西にいても情 報通だ。

 「うん、僕のところにも手紙が来て、他の教職員の鞄に入ったのかもしれないので 調べてくれ、と言ってきたよ」と答える。

 某一流大学は7月に実施された試験答案を事務所に保管しているうちに紛失した、 と教職員に手紙で報告。「全先生の答案封筒に混入していることもあるので」と調査を 依頼しているらしい。

 答案の紛失は極めて珍しいと思うが、そんな時、担当教授が改めて、試験をすれば 良いように思うのだが。

 何も、半ば紛失事件を公にする形で、対応する某大の選択。

 どうも、フに落ちない。

 夜、パソコンを借り、掲示板を見ると、今日は書き込み、繁盛。うれしい。

<なんだか分からない今日の名文句>

沈黙は銀、雄弁は銅、発表は愚





9月24日(日) 高橋が勝った日、神戸は

シンポジウム出席と、若干の取材、若干の野暮用、若干の観光で神戸に滞在中。港も オリンピックムードでいっぱいだ。

 神戸市長田区の商店街では、昨日(24日)から「篠原選手・金メダルセール」が 一斉に始まった。

 男子柔道100キロ超級で金メダルを取ったハズの篠原は審判の誤審で涙を飲んだ。

でも、ふるさと長田の人は「篠原の銀は金」。真実の金?セールを勝手に始めた。

 と言うより、初めから、負けるハズがない彼のために「祝・金メダル」セールの赤 いチラシを作っていたのだ。

 そのチラシに、それぞれの店が目玉商品の値段を書く。例えば「サンマ100円引 きで200円」と言った案配。それが、アッと言う間に売れる。

 震災後、復興の拠点になっていたテナントビルは不況に苦しみながらも、この日だ けは景気がいい話が飛び交う。

 この日、堺屋経済企画庁長官を迎え、例のインパク(インターネット博覧会)記者 会見が行われたそうだ(神戸新聞で知る)。

 インパクの開幕イベントは、大晦日の夕方から元旦にかけて日本各地で行われるが、 東経135度の子午線が通る明石市で「開会のカウントダウン」が始まる。  復興を明確にするイベント。

 この時までに、日本経済も復興するのかしら。

 その明石市北王子町の兵庫県立看護大学講堂で第7回国際セミナー「病む人と癒す 人」のパネルディスカッションに出る。これが、今度の旅行の最大の仕事。

 「病む、癒す、癒される、癒えるーー21世紀における医療と人間」というテーマ はかなり難しい。

 僕は「医者、看護婦、宗教家……職業的に癒す立場の人は多いが、本当に癒すこと が出来るのは、弱い境遇を共有する者だけだろう」という持論を述べた。

 このパネルディスカッションの内容は、毎日新聞東京版の26日の夕刊「ここだけ の話」で報告したい。

 午後4時半、会場を出てタクシーに乗れば「マラソンの高橋、金メダル」の報。

 ホテルに帰りテレビを見れば、あっけらかんとレースの模様を話す高橋さんの笑顔 がさわやかだ。

 義務感に苛まれた選手が、勝っても負けても、涙を見せた五輪の昔は今いずこ。

 国のためではない。全体のためではない。

 自分のために走り、自分をほめ、ライバルをほめる。

 本来のスポーツに戻ったオリンピック。万歳! 

 個人のために、健闘する選手達に拍手喝采!

 個と全体の関係がより明確になったスポーツ界をみると、サラリーマンの世界に 「個人主義の明日」が見えるようでうれしい。

 個人主義の神戸の繁華街は、いつになく夕焼けに映えていた。

<なんだか分からない今日の名文句>

金銀財宝、ザックザク





9月21日(木) 花田憲子さんは悪者なのか

 早朝、警視庁交通管制センターを取材。

 昨日(20日)、都内で6人が交通事故で死亡。ことしに入ってからの累計死亡者 数は287人。去年と全く同じ数字になった。

 去年は一年間に398人死亡。これは少ないのか、多いのか。

 交通事故には十分、注意しなければならないが、実感から言えば、電車の人身事故、 つまり自殺者の方が多いように思えてならない。

 不況戦争で戦死者○○人、か。

 取材を早朝に片づけると、時間が余って、久しぶりに週刊誌を見ることが出来た。

 週刊誌を見ないと、何が起こっているか、分からないことがある。週刊誌漬け、テ レビ漬け。恥ずかしいかぎりだが、これも実感。

 何か、去年のサッチーVSミッチー熟女バトル、のような展開を見せているのが、 例の花田憲子さん不倫騒動である。

 編集部がタダで送ってくれる「週刊現代」までが「スクープ第2弾・渦中の青年医 師が核心を語った 憲子夫人は二人の嫁のオトコ遍歴までボクに打ち明けた」

 どう見ても、女性誌のような見出しである。

 その女性誌側も「最終スクープ」と打った翌週、今度は「病室スクープ」。つい吹 き出してしまう。どこまで続くヌカルミか?

 いつの間にか、賢女・憲子さんは悪者になっている。

 週刊誌の最大の宣伝媒体は、通勤電車にぶら下げる「中吊り広告」である。

 その中吊りの右の端に、この週の売り物の見出しを大きく載せる。これを「右大」 という。

 反対に左の端に載せるのが「左大」。

 この「右大」「左大」の出来次第で、週刊誌の売り上げが左右される。

 どんな見出しで客を引っ張るか。その辺が編集者の腕の見せ所である。

 では、どんな見出しなら読者は喜ぶか。

 最近の読者は「スター、実は“食わせ者”」ーーというのが、お気に入りらしい。

 二子山部屋を切り回していた憲子さんが、実は悪女……と言うのが、読者に歓迎さ れる。

 某週刊誌記者の話では「総理にしたい人物ナンバー1」の田中真紀子さんも、次な る標的になっているらしい。

 スーパースターに育て、しばらくするとスターの座から、たたき落とす。マスコミっ て恐ろしいじゃあないか。

 それにしても憲子さんと「一夜を共にした」と報道された青年医師が次々に「憲子 さんの素顔」を暴き立てるのには驚いた。

 憲子さんは「彼を泊めた」と言っているのに「それは嘘」と言い張り、彼女の言動 を次々に暴く。

 これ日本男児?

 これ医術を担うインテリ?

 こんな人に診察されたら……。気味悪くなる。

 同僚に「どっちが悪いの?」と聞くと「どっちもどっち」

 と、言うことになると「憲子さん寄りの文藝春秋社」「青年医師寄りの講談社」も、 どっちもどっち、と言うことになる。

 週末は関西方面に行く。

<なんだか分からない今日の名文句>

勘違い。政治部の見通し、経済部の数字
  社会部の正義感そして、週刊誌の悪者探し



【速報】 立ちション野郎、不起訴!

 1日深夜、東京・早稲田の路上で立ち小便をして公然わいせつ容疑で現行犯逮捕され た、毎日新聞記者に対し、東京地検は18日、嫌疑不十分で不起訴処分にした。 (事件の経緯は編集長ヘッドライン日記9月3日「勤め先の同僚、逮捕」9月4日「立ち小便で?拘留10日間延長」)

 この一件で「二代目魁」は、

1,毎日新聞は、何故、立ちション騒ぎを他紙に先駆けて報道したのか。

   立ちションのトラブルは日本列島、日常茶飯事で他の大事な情報を押しのけて報道する価値があったのか。

   何故、本人の言い分を聞くことなく、彼の勤め先は「遺憾」とコメットしたのか。

2,立ちションが世間に知られる前に「お詫び」した方が新聞社としてベターだ、と判断したとすれば「お詫び万能」の時流に流され、企業の対面だけを大切にし、社員個人の名誉と尊厳を傷つけるものにならないか。

3,本人は立ちションの事実、警察官に悪態をついた事実を認め、この点に関しては陳謝している。

   しかし、公然わいせつの犯意を否認した。

   立ちションは比較的軽微な犯罪で、容疑を否認したからと言え、警察は拘留延長する必要があったのか。

   −−などの疑問を提起していた。

 この件には賛否両論あり、また勤め先を批判する形になってしまった、僕の言動に対して心配してくれる友人も多かった。

 本人は酒の上の失敗を慎み、今後、迷惑をかけない、と猛省して、社内の処分に従った。

 毎日新聞は19日の朝刊で「本社編集委員不起訴に」を掲載した。名誉回復には、十分ではないが、他の大事な情報を掲載するには限度があるので、良しとしなければ ならない。

 今回の「二代目魁」のキャンペーンは、サラリーマン世界の「全体か、個人か」という新しく、古い議論を巻き起こし、それなりの意味があったと思う。

 不起訴処分決定と共に終えたい。

 最後に、この騒動を身内のトラブルと考えず、今でも存在する「報道による冤罪」を最小限にとどめる努力を我々は約束しなければならない。

 と、偉そうなことを書いてゴメンなさい。

 朝早くから「立ちション」なんて下品な表現でゴメンなさい。「それほど目くじらたてることもない」という大人のご意見も理解できます。心配かけてゴメン。

   これで、肩身の狭かった「社内の少数意見」にも、陽が指した思いです。

 でも、これは本音ではありません。

 社内的にも、応援してくれた仲間が何人もいたことを付け加えておきます。




9月20日(水)敏腕記者・広岩君、金沢へ

 朝、JR浅草橋近くの「180円コーヒー店」で、投げ入れの花瓶に色鮮やかな リンドウを見る。

 秋本番。

 紫色のリンドウは可憐で、その癖、芯の強さを感じさせる。

 46回の創立記念日式典を迎えたJRAは、朝から沸き上がっていた。

 柔道81キロ級で金メダルを取った滝本誠はJRA総合安全部に勤務する職員。毎 日、同僚とともに警備関係の仕事をこなし、午後3時から日大の道場で厳しい練習を繰 り返していた。

 同僚は「まさか金を取るとは思わなかった」。

 JRAは競馬場、WINSに「ご声援、ありがとうございます」の横断幕を吊るし、 滝本の強運をいただいて、売り上げアップに秋の大攻勢をかける。

 夜。東京・有楽町のイタリアンタバーン「メルカート」で広岩近広記者の送別会。

 彼は毎日新聞北陸総局長になって、10月1日、金沢に赴任する。

 「泣く子も黙る大阪社会部」から東京本社にやって来て10年。彼はすばらしい足 跡を残した。

 僕が彼と一緒に仕事をしたのはサンデー毎日時代の1987年から1991年。彼 はしゃにむに働いた。

 世界的スクープになった「宇野首相のスキャンダル」、多分、これも歴史的なキャ ンペーンとして伝えられるだろう「オウム真理教追及報道」。どちらも彼が中心になっ た仕事だった。

 1989年秋。世間がオウムの存在を知らない頃「この団体はおかしい。宗教とい う仮面をかぶった詐欺集団」と指摘した我々に、様々な圧力がかかっていた。

 アムステルダム→ボンと麻原を追った広岩君が、ボンで麻原を捕まえ、インタビュー した「あの日」を昨日のように思い出す。

 麻原は松本弁護士一家を拉致、殺害した直後だったが、平然と「わたしはやってい ない。殺すのだったら牧さんだ」とうそぶいた。

 異国の地で、単身の広岩に何かあったら……東京の僕は眠れなかった。

 ちょうど、ベルリンの壁が崩壊した頃で「ベルリンに行け!」と突然、指示したの は、オウムが広岩君を追跡するかも知れない、と判断したからである。

 もう一つ、彼に意味ある仕事があった。

 「法の番人の犯罪」。

 犯罪を犯している弁護士が堂々と法廷に出ている現状をレポートしたのは、当時の マスコミでは、彼が初めてだった、と思う。

 彼が指摘した悪徳弁護士はその後、全員、逮捕された。

 彼は、間違いなく日本を代表する辣腕記者の一人だ。

 僕が脳卒中で倒れる直前、彼から「グリコ森永事件の真相を突き止めたい」と提案 があった。説明を受けると、これはつぶさなければならないネタ、と確信した。

 大病で編集長をやめざるを得なくなり、僕はその報道に力を貸すことが出来なかっ た。残念だ。

 行く行く、サンデー毎日の編集長になるのが良いと思っていたが、彼は「金沢で仕 事をしたい」と我が儘を言い、やっと実現した。金沢は彼の大好きな街なのだ。

 サンデー毎日は、同人の努力にも関わらず、苦戦していると聞く。彼がサンデーを 離れてから、この傾向はさらに悪化しているらしい。これも歯ぎしりするほど残念だ。

 送別会の参加者はサンデーの同人。

 話題は彼のカラオケ。作曲家の「音」を無視した歌いぶりは、驚嘆に値する。

 ここだけの話。

 (もしかすると「こんな事を書いて」と彼から怒られそうだが)広岩君のもう一つ の顔は推理小説家・立原伸行。「事件記者が死んだ夜」(講談社)などの作品がある。

 興味がある向きは読んでもらいたい。

 二次会は三井アーバンホテル銀座のB1「cats&dogs」。

 外に出ると、肌寒く感じた。

<なんだか分からない今日の名文句>

リンドウ咲いて、恋を知る





9月19日(火) 朝日新聞は神様なのか

 立ちション野郎が不起訴になったので大喜び。朝一番で「速報」を書く。

 オリンピックの関係で、毎日夕刊の「ここだけの話」は休載になるものとタカをくくっていた。が、デスクから「普通通りでお願いします」。

 小さい頃からサボるのが得意の僕。一つでも仕事が減ると「やったー!」という気分になる。それが、目算が狂って、急遽、書く。

 そこで「ここだけの話」は身辺雑記で逃げた。シカゴの「大輔」さんから掲示板に知らせてくれた「宮崎のお父さんのHP」について書いた。(HPでは9月22日に掲載します)

 何とか、給料の20分の1,ぐらいはクリアしたか。

 それにしても(僕をのぞき)毎日新聞の記者は良く働く。多分、業界1ではないかと思う。

 記者の絶対数が少ないこともあるが、毎日新聞には、いつも他人と違う独自の記事を出稿したいという気概がある。

 もちろん“身びいき”で言っているのだから、他の新聞社の方から「ウソ言え!」と言われも仕方ない。が、少なくても朝日新聞の方より働き者がそろっているような気が してならない。(偏見なのかもしれないが、これは実感だから許してくれ)

 このあいだ、一緒に酒を飲んだ「朝日の一平」クンは「朝日新聞は神様のようなものだ」と言っていた。

 朝日新聞の主張を、信じていれば間違いない。

 朝日新聞に就職すれば生活は安定し、世間から尊敬される。

 「だから朝日は宗教なんだ」と「一平」君は言った。

 どこまで本気で言っているのか。分からない。

 でも、表情は真剣である。

 「その神様が、社員の面倒を見てくれなくなる。そんな気がするんだ」と彼は言った。少し酔っていた。

 「そんな宗教を信じていた僕が馬鹿だった」という風にも取れる。意味深なセリフである。

 そうか「朝日神話」をついに瓦解するのか?

 朝日には、好きなところと、嫌いなところがある。

 例えば「学歴偏重の世の中が悪い。受験勉強の弊害が日本を悪くする」ーー何〜て主張しながら「天声人語は大学受験に良く出題されます。朝日を読んで、良い学校に行こう!」と宣伝する。これ、インチキ宗教そのもの。だから、イヤだ。

 オツムが固い日本の教育関係者が、その二枚舌にだまされ「朝日は日本の良識」と勘違いしてから、朝日はいつの間にか神様になった。

 日本がダメになった一因に朝日神話がある、という人いる。そうかも知れないし、そうでないかも知れない。

 でも、これからは、そうも行かないだろう。

 大新聞が一方的にオピニオンを提示して、読者がついていく時代は終わった。これからは、一個人がインターネットという言論の武器を持つ。朝日が妙なことを言えば「おかしいぞ」とインターネットの狼煙が上がる。

 朝日はピンチである。

 それは、一つ、朝日だけではない。

 マスコミの全てがピンチである。もちろん、毎日だってピンチだ。

 マスコミの「神様性」は崩れる。崩したい。

 その点、毎日新聞の社員は「毎日は神様」なんて誤解していない。だから、黙々と働く。

 給料は以前から、世間並み以下だから経済的にもピンチに強い。

 何て、思いながら、次に出稿する、土曜夕刊「競馬はロマン」の取材に取りかかる。

 昼、暇を見つけて、優之介くんのお宮参り。

 小さな足をバタバタして、元気がいい。毛が黒々とした、僕に似た赤ちゃんーー何て 、今日は独断と偏見ばかりだ。

<なんだか分からない今日の名文句>

生まれたら走る、それが反貴族の掟



9月18日(月) オーディションの八百長?

 朝、JR浅草橋近くの「あすなろ整骨院」。

 左手首骨折の後遺症を直すため週に何度か、通っている。丁寧な治療で、この辺 りでは評判。横町の床屋に紹介された。

 院長は空手の名手。東海大学でスポーツ医学を教えているらしい。

 「オリンピック、見てます?」と聞けば「空手がないので……」

 韓国のテコンドウがオリンピック種目で、空手が外されたことに、怒っている。

 「世界には空手人口の方が多いのに……何か政治的な力が働いたんですかねえ」 と院長。

 僕は、この辺りのこと、不案内で答えようもない。

 事情を知る人、教えてくれ。

 昨日、遊びに来た芸能情報通?の話を続ける。

 「新人発掘オーディションは、ヤラセなんだ」と彼が教えてくれた。初めからグ ランプリ(優勝者)が決まっている、と言うのだ。

 どうして。

 金をかけてイベントを開くのだから、金の卵を見つけなくては意味がないじゃな いか。「芸能プロダクションは今売り出したい新人にハクをつけるために、わざわざ オーディションを開くんだ。『5000人の中から選ばれたシンデレラ』を作るんだ よ。だから初めからグランプリは決まっている」

 「それを知らずに応募する奴は可哀想じゃないか」

 参加料を払わせるケースもあるから、これは詐欺のようなものだ。

 「まあ、そうなんだが、応募者には、それなりの情報網があって、誰がグランプ リか、知ってるのだ。それでも応募するのは、オーディションにやってくる芸能プロやテ レビの人間の眼に止まるのを狙っているんだ」

 応募者の一部も”筋書き”を知っているオーディション。八百長ではないか。

 審査委員は特別賞とか、準○○を選ぶ。それでも、審査委員を引き受けるのに は、それなりの見返りがあるということだろうか。

 芸能界は恐ろしい。

 ある週刊誌の記者から聞いたことだが、話題にもならない昔のスターが、突然、 不倫の現場をキャッチされ、それなりの騒ぎになるのは八百長臭いという。

 本人の周辺が写真週刊誌に「××がおかしい。××の駐車場を張り込んだら」 なってタレ込む。

 某女性週刊誌の編集部には、この種の「ネタ」が張り出している、のだそうだ。

 今や、日本で八百長がないのは競馬、競輪だけ、なんてこと、笑い話ではなくな る?

<なんだか分からない今日の名文句>


平成に八百長あって、片八百長なし



9月17日(日) 演歌、引退の花道

 テレビ東京の演歌番組「演歌の花道」が9月24日(日)で幕を下ろす。

 22年間に1106回。

 歌手がマイクを前にして歌うスタイルを止め、波止場とか、バーの止まり木と か、演歌らしいセットを背景にマイクなしで歌う。22年前には画期的な番組だった。

 これで、とうとうテレビの「演歌だけ番組」は姿を消すことになる。

 横町のご隠居は、昭和30年代、浪曲番組が次々にラジオから姿を消したのを思 い出す、と感慨深けだ。

 遊びに来た芸能情報通?の説明。

 「この番組を一社で提供していた某製薬会社が『もう、亡くなった会長に義理立 てすることもないだろう』と判断したことが大きな理由なんだ」(会長は業界でも、政 界でも有名な”演歌大好き人間”だった)もう一つの理由。

 BSデジタル放送直前のテレビ東京が「アナログのイメージをぬぐい去るため」 に幕を下ろした。

 あの寂しげで、そのくせ突き放した口調。僕の大好きな来宮良子さんのナレー ションはもう聞けない。淋しい。

 でも、正直なところ、最近の演歌には名曲が少なかった。「××酒」とか「○○ 海峡 」とか「未練□□」とか、どこかで聞いたような詩で飯が食える、と誤解した作詞 家にも大きな責任がある。だから「演歌だけ番組」がつぶれても仕方ない。

 テレビ東京の前身、今にもつぶれそうだった東京12チャンネルの屋台骨を支え てきた長寿番組「演歌の花道」を静かに送りたい。

 今週は掲示板にアナログ人間が集合して「僕の、私の大好きな演歌、その理由」 をテーマに何か書いて欲しい心境。(もちろん、ほかのテーマも大歓迎です)

 台風の余波で、東京は雷、土砂降り、また雷、また土砂降り。気分が萎える。

 札幌競馬場8レース、愛馬・デリキット4着。これで19戦、良く走ってくれ る。無事こそ名馬?

 やっと夕方、雨があがる。

 親しい知人が北海道に転勤するので、隅田川沿いの仕事場で、ささやかに送別 会。

 田中角栄を尊敬する新潟・三条っ子の彼は、不況の馬産地で新しい任務につく。  浅草のバーでカラオケ。

 中央大学第三校歌、小林旭の「惜別の唄」をデュット。演歌で北に送った。

    
<なんだか分からない今日の名文句>


義理と人情を秤にかけりゃ

義理が重たいテレビの世界


9月14日(木) ごちそうさま

 親友の細君から手紙。(本人の許可なく転載)

 「今、12:30AM、我が家の旦那様、行方不明なのです。11:20PM、新○○駅からTEL。『ご主人のカバンが届いております。奥様が受け取りに来られるのでしたら、保険証をお持ちください』。駅にはカバンのみでパパの姿なし。どうなってるの」

 と、まあ、こんな書き出しで始まる。

 不安で不安で仕方なく、手紙を書いている、という。

 アイツ、酒に弱くなったからなあ。

 「昔は明け方『松本にいる』なんて電話があったのですが……」

 手紙は縷々、アイツがいかに酒に弱く、心配させられているが、家族思いの素晴らしい奴だから許す。が、でも、どこにいるのか分からない。不安だーーと言うことを綴っている。

 「オヤジ狩りとかに、あってないでしょうね……神様、仏様、家に帰して下さい。……この手紙が届く頃は、平常な生活に戻っていることを信じて、ペンをおきます」

 心配だが事が起こっているのは一昨日のことだ。もう決着はついていると思うが……。

  よく見ると、追伸あり。

 「今、1:40AM、最愛のだんな様、ご帰還」

 彼女、聞きただすと、アイツ、9:30PMごろ東京で友人と別れ、常磐線で取手行きに乗ったのだが、気がついてみると小田急線の経堂にいた、と言う訳。

 帰りのタクシー代は3万円。当然、口げんかになる。

 再び、アイツがだらしなさを彼女、一部始終、レポートする。その上で  「牧さんの親友の××君は、朝、フレンチトーストとトマトと梨と牛乳とコーヒーの朝食を済ませ、妻にはちっとも『悪かった』のそぶりも見せず、出勤していきました。めでたし、めでたし」

 何が「めでたし」だ! 心配させやがって。何を食べようと、あなたの食卓の勝手でしょ。

 大体、怒っているのか、微笑んでいるのか。

 毎度、毎度、ご馳走さま。

 相思相愛も良いけれど、もう何年も、何年も見せつけられては……。

 お前、幸せだな。良い女房で。

 それにしても良かった。

 オヤジ狩りは本当に恐ろしいんだ。殺される事だってあるんだぞ。酔っぱらい専門の窃盗集団だっているんだ。

 酔っての失態は、下手すると仕事をなくす。酒を飲ませて、酔い潰す「リストラ促進組」だったあるんだ。

 誰々君のように、立ちションで警察のやっかいになったりしたら、最愛の妻は半狂乱……なんてことはないよな。キミの最愛の妻は、愛のためなら世間を敵に回すのも厭わない。

 愛は地球を救うーーの夫婦だから。

 明日から、人によっては、この秋、最初の3連休。

 愛を確かめる名月の頃合い。晴れればいいのに。

<なんだか分からない今日の名文句>


初秋に秋桜、隣に「猫じゃらし」


9月13日(水) 人生を歩き続けるために

 朝、隅田川沿いの我が仕事場。庭のススキの穂が揺れている。

 秋だ。

 世界週報の原稿を片づけて、日本橋本町まで約40分歩いてから、タクシーで三田 の東京専売病院へ。月に一度の検診。体重70キロ。大山ドクターから「太りすぎ」を 指摘される。

 僕の秋は食欲からやって来る。

 帰りに東京駅大丸6階の「ドイツ式フットケアサロン」を覗く。

 足の裏を目一杯、強くもんでもらうのが気持ちい〜い。隠れた道楽。比較的美しい OLがお客さんである。

 今日も、もんでもらっているうちに眠ってしまった。

 最近は女性だけでなく、サラリーマンの愛好家が多い。それだけ、大都会は、人間 の足に取って厳しい環境なのだろう。

 15分間1500円。僕には、それほど高いとは思わない。(名前は「フットバラ ンス」TEL03−3212−4500)

 名古屋の豪雨を側聞するに、土なら雨を自然吸収するのに、コンクリートでは、そ れもままならない。

 人生を歩き続けるために、秋の紅葉を見るために、ストーカーから逃げだすために、 上司の命令から逃れるために……足を大事にしよう。

 掲示版に、暖かく、厳しい意見が次から次へ。にも関わらず、パソコン技術不確実 な僕は返事が出せず、悪銭苦闘。申し訳ない。

 一行目しか、表示されない悲しさに、パソコンの頭を叩いたりするが、改善されず 泣く。

 ああ、情けない。

 副編の小島は「面倒見切れない」という感じで、メールで当方を指導。なんとか、 夕方、打てるようになった。

 こ〜じま!

 逃げるなよ!

  
<なんだか分からない今日の名文句>


長月は逃げて去る


9月12日(火) ヘアヌードはどうなんだ!?

 「掲示板荒らし」というものがある、と聞かされていたのでビクビクしていたが、 我が掲示版は無事、スタートした。

 来訪者(と呼ぶのだろうか)は数少ないけれど、みんなウイットに富んでいる。あ りがとう。天に感謝する心境である。

 初日の掲示板でいろいろなことを学んだ。

 「立ちションがあるから、日本人には膀胱炎が少ない」というご指摘。なるほど。

 もっと前に教えてくれれば、僕の理論武装に役立ったのを。

 掲示板は予想通り「立ちション騒ぎ」に関するものが多かったので、騒動始末記を 簡単に。

 処分保留で釈放された「立ちション野郎」。彼は一ヶ月休職のあと、新しい職場に 移る。彼は新しい職場に意欲満々。まあ、結末は上々である。

 すれ違いに、我が同僚と交わしたやり取り。

 「もし、あの立ちション事件を我が社が報道しなければ週刊誌に何を書かれるか分 かったものじゃない。先手を取って報道したのが良かった。牧はそう思わないのか」

 「冗談じゃないよ。節度ある週刊誌がそんなこと書くわけがないだろう」

 「いやいや、ヘアヌードを売り物にする三流週刊誌だよ」

 「(ヘアヌードを掲載する週刊誌が三流なんて思っていないが)彼らのへアヌード と彼の立ちション、どちらが公然わいせつ?」

 「……そうか、あっちの方が罪深いか」

 「だから週刊誌は書かない」で爆笑になった。

 公然わいせつスレスレの写真で社業に貢献した人は、出世するのかしら。

 夜、朝日新聞近くの日本料理店でメール仲間になった「テレビにも出る文士」を中 心に、女性自身のキムタク、阿部定の研究者・ホリ、遺跡研究家の「朝日の一平」 と痛飲。(と、言っても僕だけはウーロン茶をガブガブ)。

 その折り、飛び出した意外な話は……迷惑をかけないように徐々に報告する。

 
<なんだか分からない今日の名文句>


品位はヌードにあり


9月11日(月) 怖い、とても怖いけど

 どんよりとした、何か、よからぬ事が起こりそうな暗雲。

 そのうちに猛烈な土砂降りに変わり……新幹線も止まった。

 これほどまでに落ち込ませる“空模様”。僕は曇天に弱いんだ。

 太陽のカケラもない東京の空を見ながら「二代目魁」ボランティアの「エコノミスト・こじ〜ま」と電話で相談。掲示板の設置を決める。

 この世界の先駆者、糸井先生が「ほぼ日刊イトイ新聞」の紙版で「切ないこと」の最たるものは掲示板の感情的な論争、と指摘しておられる。

 掲示板で論争したらクタクタになる。

 この文章の底に流れているトーン?「何も、切ないと知りつつ、やることはないじゃありませんか」という善意の忠告に従うべきなのか。

 いやいや「切ないこと、悲しいことに挑め」とイトイ先生は決起を促しているのか。

 分からない。どうしよう。

 悩む。一気に悩む。

 そんな時、僕は「助平心」で選択する。

 僕だって助平だ。怖いもの見たさ、という選択だってある。

 そんなことは断じてしたことはないけれど、他人の女房と親しくなるのが最高の恋と言うじゃないか。

 怖いもの見たさで行こう。だって助平なんだもん。

 「偉そうなことを書きやがって」なんて、恐ろしいお兄さんに、こんな適切なお言葉をいただくかも知れない。

 お前は馬鹿だ、子供たちに罵られたりすることは再三再四。と思った方がいい。

 怖い。とても怖い。

 でも、でも、僕には、誰にも負けない助平心があるじゃないか。

 とにかく、愉快な広場をめざし、掲示版は発車オーライ! 明るく〜、明るく〜生きるのよ。

 小島よ!!

 明るい明るい「東京のバスガイド」で行こうや。

 キミが怖がる僕の背中を押した。僕がキミの手を引っ張った。

 「任しておけ!」とキミが叫んだ(ように見えた)。

 我がHPはキミの双肩にかかっている。(な〜んて。もっとも、キミはこの「東京のバスガイド」という名曲を知らないだろう。二人はその世代の差を克服しているのだ)

 2000年9月12日。

 悪天を切りり開く、我ら双方向の船出だ。

 (ちょっとオーバーかな)

 善意の方、優しい方、余裕のある方、怒らない方、でも、仕方なく日本の現状に怒っている方、あまり上手くない競馬ファンの方、リハビリに頑張っている方、下町を愛する方、落語が好きな方、鰻、そば、すき焼きが好きな方、要するに「二代目魁」を愛する方。

 掲示板で、お待ちします。

<なんだか分からない今日の名文句>


僕に三日の晴れなし


9月10日(日) 厩舎情報、信ずべからず

 8日午後6時すぎ、立ちションで拘留されていた同僚が釈放されたので、ひとまず、安心。

 気分的に楽な週末を過ごした。

 勤め先の毎日新聞が本人の言い分を聞かず、紙面で「遺憾」とコメントしたことに憤慨したが、 社内には「既に報道されたことで彼は社会的制裁を受けた」という判断も あるようだ。

 立ちション、警察官への悪態は本人も認めているようだが、社内的な処分はどうな るか。バランスの良い処分であって欲しい。

 電話で話すと、本人は「二度と立ちションはしない」と約束。「一次情報の怖さを 知った。記者として貴重な経験をした」。カラ元気とは思うが、笑い声も出た。

 「原稿に書こう」と思っていながら、つい忘れてしまうことがある。今週は競馬の 原稿。

 「競馬はロマン・人」欄のインタビューに応えて元JRA騎手の東信二さんが「厩 舎情報は信ずるべからず」と言うような事をしゃべっている。

 これを書かねば、と思いながらすっかり忘れてしまい、9日付け毎日夕刊の「競馬 はロマン・人」欄では、この肝心な部分がすっかり抜けてしまった。  ドジ!!

 こんなおもしろい話を忘れるなんて。ドジ!

 彼は「1、2年の経験の浅い厩務員は馬の調子が分からない。ベテランは馬の調子 は分かるんだが、調子が悪くても、馬主の手前、報道陣に『調子が悪い』なんて言わな い。だから、彼らのコメントは当てにならないんですよ」と話してくれた。

 なるほど。

 政治家の選挙予測コメントのようなもので、厩舎情報は当てに出来ないのか?

 現役時代「代打の東」と言われ、サクラスターを何度も代打で優勝させた東クン。

それだけに説得力がある。

 現在は新進気鋭の競馬評論家。フジテレビの競馬中継では、なくなった「競馬の神様」 大川慶二郎さんの”代打”で解説をしている。が、まさか、テレビで「厩務員の話 は信頼出来ない」なんて言えないのだろう。

 だから、この発言は貴重だ。

 実は、某テレビでパドック解説をしている某新聞の某記者もこんな事を言っていた。

 「テレビのパドック解説を見た厩務員から抗議が来るんだ。馬主に『調子がいい』 と言っているのに、パドック解説であんたに『駄目だ』と言われたら立つ瀬がないじゃ ないか、と言うんだな。だから気の弱い予想屋は『どれも調子はまあまあ』になってし まう。俺は調子が悪いものは悪い、と話すから評判が悪い」

 そう言えば、いつもパドック解説を見ていると、何が勝ってもおかしくないような 気がしてしまう。

 こんな話を参考に久しぶりに日曜テレビ競馬観戦。

 頭をひねったが……その効果もなく、この日もオケラだった。

 気がつけば、我がHP、ヒット30000件を越えた。

 ありがとう。本当にありがとう。

<なんだか分からない今日の名文句>


人生はケース・バイ・ケース


9月8日(金)【日記速報】 立ちション野郎、釈放


 ご心配をかけておりました、例の立ちション野郎、8日午後6時過ぎ、目白警察署から処分保留で釈放されました。


9月7日(木) 怪物のお祝い会でナベツネが
        サンケイ新聞をヨイショ


 リハビリに行く途中、薄紫色の綺麗な花を見つけた。

 東京は蔵前橋通りと清洲橋通りが交差する辺り。昔は二長町と言われた下町だ。

 この辺りも今やビル、ビル、ビル。その谷間に、ひっそり建つ、しもうたや(仕舞屋)一軒。その庭に薄紫の花が咲き乱れている。

 その家の主人とおぼしき白髪交じりのおじさんに「何という花ですか?」と聞くと、

 「分かりませんが、一つあげましょう」とハサミで三、四本、切ってくれた。

 「家の庭に植えたら、開きますよ」と品の良いおじさんはニコニコしている。

 うれしい。

 下町ってうれしい。

 帰りの横町の天ぷら屋に「何という花?」と聞くと、博学の天ぷら屋夫婦「むくげ」だと言う。

 庭に秋が近づく。

 夜、赤プリで「中曽根康弘さんを祝う会」。

 5月27日に82歳を迎え、7月の総選挙で20回目の当選。「日本の国家戦略」という本も出版した。

 怪物だ。

 彼の意気軒昂な挨拶は多分、新聞に載るから省く。

 おもしろかったのは、乾杯の音頭を取った、読売新聞の渡邊恒雄さん。「中曽根さんと石原慎太郎の対談がサンケイ新聞に載っている。どうも、中曽根さんはサンケイがお気に入り」というような話をする。

 サンケイをヨイショしているようで……他に何か含むところがあるのかしら。

 2001年には大新聞の統廃合があるという噂がチラホラ。

 当の中曽根さんは、82歳にしてホームページ「中曽根康弘の世界」(http://www.yatchan.com/)を始めたらしい。

<なんだか分からない今日の名文句>


解語の花(言葉のわかる花=美人)


9月6日(水) 苦渋?の編集会議

 歯は相変わらず、しくしく痛む。

 朝方、メール数通来る。

 友人から「僕のところに来た反応です」と例の“小便小僧騒ぎ”に対する意見を 紹介してくれた。

 その中でも、毎日新聞の女性記者の感想が事態を正確に把握して、その上で僕を 批判してくれていたので、そのまま、載せたい。匿名の意見なので掲載を許してくれる だろう。

 牧さんのサイト、拝見しました。

 現段階で申し上げるのは、支局時代に逮捕原稿を書きながらいつも感じていたこ とですが「逮捕された段階で実名報道していたら、推定無罪とは言い難いもんがあるよ なあ」ということです。

 警察の捜査経過を見ると同時に、本人の言い分も会社として聞くべきだと思います。

 ただ、露出狂の被害に数回遭ったこともある、女の立場から言うと、アホな男は 少なからず、いるわけでして(もちろん、アホな女も大勢います)牧さんが述べておら れた「彼は酒癖悪いけど、外に出して見せたことはない」云々では何の説得力もありま せん。

 ちょっと冷めた見方かもしれませんが、やはり李下に冠を正さず、です。

 私だって、どうしようもなくトイレが近くなったことはもちろんあります。

 夜回り中なんて、ホントに悲惨でした。

 それでも、女は絶対に立ち小便なんか出来ないんですよ。

 おそらく、牧さんはそんな問題ではないとおっしゃるでしょうが、新聞記事を見 た感じた率直な感想はこんな感じです。

申し訳ない。

 軽々しく「立ち小便は軽微な犯罪」と決めつけたような表現になってしまって申 し訳ない。お詫びします。

実は、右半身マヒの僕は、いつも、トイレのことで悩んでいる。

 「大」を催した時、和風トイレでは役に立たない。そこで、洋風トイレがないと ころには行けない。

 だから、いつも非礼のないように気をつけて生活してるのに「立ちションぐらい は許される」なんて表現になったことは、言葉足らずだった。お詫びしたい。

 もう一つ「彼がそんなことをするはずがない」と僕が書いたのは、実感なのだ。

でも理解してくれ、と言っても……僕の観察力を信じてもらうしかない。

男の中にもアホがいる。女にもアホはいる。

 彼もアホかもしれないが、種類が違うアホである、と言いたかった。

 女性の前で、おチンチンを見せない「正常な男」が世の中、大多数である、とい う僕の意見はそれほど、説得力を持たないだろうか。

 夜、「二代目魁」のボランティア会議。

 手探りで始めた「二代目魁」は、創刊2ヶ月を迎えた。

 そこで、今後、紙面をどうするか。

 僕は10月ごろから、日本一の花柳界だった故郷・柳橋界隈を舞台にした「昭和 の時代劇」を書く、と宣言。

 実は身の上相談もの、競馬もの、等々、HPでやりたいものはいくつもあるが、時間 、 お金、人手の面で、なかなか実現が難しい。

 特に「掲示板」を作るかどうか、議論百出。

 どうしたらいいのか。

 読者の皆さんどう思うか。

 メールでご意見をいただきたい。

 
<なんだか分からない今日の名文句>


前急ぎは後急ぎ


9月5日(火) 歯痛た、た、た

 未明、左の小鼻のあたり、激痛。

 眠れなくなった。

 歯がはれているらしい。

 朝まで、眠れない。

 玄関で出会った女性管理人に「ほっぺたがふくれている」と見破られ、仕方なく、 大手町の歯医者へ行く。

 「よく我慢しましたね」と言われ、事態の重大さを認識した。

 歯医者は苦手だ。あのキーンという金属音を聞くと、それだけで、震えが来る。

 出来れば、歯医者を素通りして生きたかった。

 だから、少々の痛さでは歯医者に行かないようにするのだが、いつも結果的にさら に痛くなる。

 左上の糸切り歯にばい菌が入ったので、膿を出すのが一苦労だった。

 皆さんも、痛くなったら、すぐ歯医者。

 1日中、雨。

 例の「小便小僧」はこの日も牢の中である。

 僕の一文は「公然わいせつ男」の味方、と思われたのだろう。いろいろなご意見が やってきた。

 たとえば「HNあめあやめさん、1974年生まれの男性」

 彼がテレビニュースを聞いた時「ああ、ただ単に、酔っぱらて、立ちションしようと したんだなあ」というのが第一印象だったとか。正解!

 その上で、彼は「毎日新聞社が、その事件を軽く考えず、いち早く報道したのは正 しい。後からばれて週刊誌に叩かれたり、毎日新聞社全体の責任問題のような印象を受 けるようなワイドショー報道が行われるより良い」という趣旨のご意見。

 なるほど。それも一理ある。説得力のある意見だ、と思う。

 が、全面的に賛同することは出来ない。

 昨今、日本列島はイヤに「お詫び上手」になった。

 自分の保身のためだろう。先を争ってお詫び競争を展開する。

 これが情けないのだ。

 本当は謝る必要はないのに、謝っておいた方が得、と判断すると誰でも彼でも謝る。

 中には謝ったのか、謝っていないのか、分からない文句で「陳謝の形」を整える。

 「遺憾だ」なんて言葉、大嫌いだ。

 心のこもる言葉なら、まだ良い。心の欠片もない、お詫びにはヘドが出る。

 警察、病院、自動車、民主党……そろって報道陣の前で頭を下げれば、それでいい、 と思っている。

 報道陣も「何故、謝らないのか?」と詰め寄って陳謝させれば事足りる。お詫びに は「償い」がなければいけないのに、マスコミは「謝らせれば、報道の成果」と勘違い している。

 なにしろ、謝れば事足りる、という風潮。江戸っ子には我慢できない。

 少なくても愛する我が毎日新聞は「お詫び競争」に加担してはならない。

 大体、立ちションで迷惑をかけた人々がいれば「小便小僧」の中年オヤジの彼が謝 るのが筋。立ちションで、天下の?毎日新聞社が世間にお詫びすることは断じてない。

 週刊誌やテレビのワイドショーがまさかこんなな「軽微な個人犯罪」を毎日新聞の 責任、と報道するとは思わないが、もしそんなことになったら「お笑い草」だ。

 「あめあやめ」さんのご意見には一理あるが、江戸っ子には承伏出来ない。

 でも「あめあやめ」さん(名前が難しくて書くのに苦労した。もうすこし簡単な名 前にしてほしい)は率直で、明るい印象。父上は早稲田政経卒の新聞記者とか。

 友達になれそうな青年である。

 勤め先の仲間からは「上から睨まれゾ」と忠告をいただく。

 まあ、そうなったら、上手にお詫びすればいいや。

 それにしても、歯が痛い。

 
<なんだか分からない今日の名文句>


舌三寸に胸三寸


9月4日(月) 立ち小便で?拘留10日間延長

 昨日、この日記で書いた「公然わいせつ罪」で逮捕された同僚。あろうことか、彼 の拘留期間が10日間、延長された。

 意外である。

 それほどの大きな犯罪なのか。疑問だ。

 4日午後4時15分から約15分、目白警察署の接見室で、同僚3人が彼に面談した。

 これは彼の言い分。

 1日の夜、勤め先の毎日新聞の地下1階「百人亭」で同僚3人と酒を飲む。  (これには証言者があり、彼はビール3本と焼酎を飲んだ)

 西武線の高田馬場駅近くのバー、彼が「ガード下」と呼ぶ、行きつけでさらに飲む。

 一人は家が遠いので先に帰り、2人でさらに飲むが、相棒も、本人も酒の量につい ては記憶がない。

 日付けが変わる頃、店を出て、友人と別れて自宅に徒歩で向かった。

 途中、千代田平安閣という結婚式場の前に来たとき、尿意を催した。

 我慢できなかった。

 そこで初めはビル側の暗闇、と思ったが、結婚式場の玄関になっているので「まず い」と思い、車道側の植え込みの中に向かって、ファースナを下ろし、一物を取り出し た。

 車道には駐車している車が何台もあったが、いつもの経験から駐車中の車の中に人 がいるとは思わなかった。

 小用を始めた時、車の中に女性と目があった。「まずい」と彼は、急いで身体を1 80度変え、ビル側で用をたした。

 急に、小用を止めることは出来なかった。

 その時、二人の男性が現れ、一人が何事か叫びながら彼を羽交い締めにした。(接 見した仲間は羽交い締めの跡と思われる打撲のようなものを確認した)

 もう一人の男性は彼の前に回って、ポケットなどを探し始めた。

 彼は「パトカーを呼んでくれ!」と叫んだ。

 泥棒ではないかと思ったのである。

 たまたま目白警察のパトカーが通りがかった。(現場は戸塚警察の管内)

 すると、2人は女性の乗る車に同乗して車を走らせようとした。

 警察官がそれを止め、事情を聞くと、3人は「下半身を露出していた」と主張し、 彼は逮捕された。

 逮捕の際、彼は「俺を誰だと思う。毎日新聞の編集委員だ」と高圧的に話した、と いう証言があるが、彼は身分を明らかにして、逃亡の恐れがないことを証明したかっ たのだろう。

 僕はむしろ被害者だ。

 以上は全て彼の言い分である。

 彼の酒癖の悪さを知る僕は、すぐにさま信ずるわけには行かない。

 たとえば、警察官と激しくもみ合いになっただろし、かなり口汚く吠えた、ことは 用意に想像できる。

 2人の男性の怪訝な行為も、彼が「泥棒」と勘違いしたのかも知れない。

 しかし、全て彼の言い分通り、と言うこともあり得る。

 ただ、一つだけ信じられるのは、彼は痴漢ではないと言うことである。

 病的にチンチンを露出することは今まで一度もない。

 それは信じて欲しい。

 そして「10日間の拘留延長」の原因は?

 彼は立小便をした軽犯罪は認めたが「公然わいせつ」については、ガンとして認め ない。

 だから、拘留延長になった。

 不特定多数の人間がいるところで立小便をすれば確かに法的には「公然わいせつ」。
しかし、事実上、立小便に「公然わいせつ罪」が適用されることはまずない。

 警察は痴漢行為と見ているのか。

 彼は痴漢のような扱いをされるのが、許せないのだろう。

 むしろ、公務執行妨害だったら「その通り」と認めるかもしれない。

 僕の推測だが、逮捕にあたって、警察官と彼の間に感情的な「しこり」が生まれ、 異常な拘留延長になったも知れない。

 また、3人の証言と彼の言い分にあまりに大きな隔たりがあるから、調べを進めな ければならないのだろう。

 時間をかけて真相を明らかにしてもらうしかない。

 それにしても、彼の言い分を聞かずに「遺憾」とコメントした、彼の勤め先・毎日 新聞は冷たくないのか。

 そしてもう一つ、何人かを殺した少年は匿名で、立小便で「公然わいせつ」と疑わ れた人間が実名報道される不可思議。

 公然わいせつ男にも、子供はいる。(たまたま、彼には子供がいない)

 親が「公然わいせつ」と新聞に書かれたら、子供はどうなるのか。

 立小便の延長上の「公然わいせつ」は匿名にするのが人間というものだ。

 
<なんだか分からない今日の名文句>


事実は小説より奇なり


9月3日(土) 勤め先の同僚、逮捕

 勤め先の毎日新聞社の同僚、1967年入社の同期生が公然わいせつ容疑で9月1 日現行犯逮捕された。

 この一件で、そぞろな気分の週末となってしまった。

 1日付けの毎日新聞夕刊によると、午前0時40分ごろ、新宿区高田馬場2の路上 で駐車中の乗用車に近づき、助手席の女性の前で下半身を露出した疑い。

 何、それ!?

 実は、この人物、大好きな同僚の一人である。

 確かに酒癖は決して良い方ではなく、若い頃、彼に殴られかかったこともあった。 でも何となく恨めない人物である。

 何事につけて率直に話し、当方のいい加減な仕事を見つけるとケチをつけ、たまに 良い原稿を出すと「すばらしい。俺には書けない」と評価してくれる。

 警視庁の七社会に所属した事件記者の時代、彼は公安記者として辣腕を振るい、外 信部に移ってはローマ特派員。スター記者の一人だ。

 どちらかと言うと反権力で出世争いとは無縁。気分のいい男だ。

 僕が周囲から聞いたところでは、酒に酔って小用をしようとしたところをたまたま 目撃した女性が「キャー」と大声を出した。

 女性を驚かせるとは何者だ! しかも立ちションをするなんて、馬鹿者!である。

 ここへ警察官が通りかかり、もみ合いになったらしい。彼は深酒をしていた。

 僕の推測だが、彼のことだ、警察官に悪態をつけ、怒号をあげて警察官と渡り合った のだろう。

 そこで、ご用となった。

 当然である。

 怪我をさせたのではないか、と心配するが、幸いにもこんな事はなかったようだ。

 酩酊のうえの立ち回り劇で豚箱入り。馬鹿、馬鹿!

 罪名は「公然わいせつ罪」。ああ恥ずかしい。でも彼が露出狂だったと聞いたこと もないから、あえていえば公務執行妨害というあたりだったのかもしれない。

 新聞に「公然わいせつ罪」と書かれると、気の毒な気もする。

 彼が暑い夏の一夜、立ちションを試みたことは確かに恥ずかしい。でも僕が驚いた のは、全国紙がこのぐらいの事件?を、しかも実名入りで報道したことである。

 報道したのは読売新聞と我が毎日新聞。この時点では、朝日、サンケイ、東京、日経には載ってい ない。

 それぞれ、紙面作成には独自の判断があって当然だが、僕の判断では、社会面には 報道するべきことが他にも幾つもあった。

 この種の”不祥事ネタ”を書かないと「身内に甘い報道ぶり」と批判されるのが怖 くて、本来、報道すべき価値のない記事を書いた、ということなら恥ずかしい。

 泥酔して一晩、警察のやっかいになる事件をいちいち報道しなければならないなら 「今日の豚箱入り」というコーナーを作らなければならない。

 彼の行為は、夕刊を見る限り、人を肉体的に傷をつけたわけではない。

 ものを盗んだ訳ではない。

 盗作したわけでも、賄賂をもらったわけでもない。

 単に「汚いチンチン」を見せ、警察官に乱暴を働いただけだ。

 警察官が酔っぱらいと殴り合うのは、繁華街の警察官の日常的な仕事である。プロ の警察官は、酔っぱらいを一晩、留置所に泊め、こっぴどくお小言を言う。それがプロ の仕事。警察はその仕事を忠実に果たしてくれただけだ。

 そういう意味では、社会的に見て「軽微な犯罪」である。

 娑婆に出てきた彼が、勤め先の新聞に「公然わいせつ罪で逮捕」の記事が載ってい たことを知ったら、どう、思うか。

 本人が悪い。が「公然わいせつ罪」と勤め先の新聞に書かれ、社の見解として「極 めて遺憾」などと書かれたら、どう、思うだろう。

 念のため、申しておけば、僕は「善意の人間の酒の上の失敗」を批判したり、記事 にしたことはない。

 それは他人のことでも、身内のことでも書かない。

 一度だけ、政治家・河本敏夫さんが若い時、銀座でタクシーの運転手を殴って警察 のやっかいになったことを「若き日の武勇伝」として書いたことがある。

 河本さんが中曽根さんと総裁選を闘った時のことで、河本さんからは「いらぬこと を書いたな。でも、君は中曽根君の悪口も書いているから、このスクープも、バランス 感覚なんだろう」と言われた。

 一国の総理になる人の「人となり」を書く上で必要と感じたから書いたので、ごく ごく普通の人の武勇伝なら、僕は書かない。

 重ねて言う。

 チンチンを見せてしまった行為、警官に乱暴した行為は犯罪かも知れない。しかし、 新聞社が社員の行為を「極めて遺憾です。事実関係を調べた上で厳正に対処します」 というコメントを出すのには違和感を感じる。

 コメントが出るまで事件発生から10時間あまり。普通なら「事実関係を調べた上 で、事実であれば、必要な処置を取りたい」とすべきである。

 僕も若い時、上司を殴って、新潟の雪を鮮血で染めたこともある。その時、多くの 人にえらく怒られ、その後、同僚、先輩に暖かく見守られた。

 週末、彼の家に電話しようか、どうか、迷いながら、ことのあまりの意外な展開に 凡人の僕は為すすべもなく、結局、電話をしなかった。

 おい、容疑者!公然わいせつ野郎!

 お詫びが済んだら、一日も早く職場復帰しろ!

<なんだか分からない今日の名文句>


  顔回というというものあり、
 学を好み、怒りを遷さず、過ちをふたたびせず
    【論語・顔回は孔子の弟子】


8月31日(木) 森さんに引導を渡すのは?

 朝、メール整理。

 家を数日留守にしたので、読者のご意見を読み、片っ端から返信。一時間以上かかった。それでも全て返信、という訳には行かなかった。

 毎日新聞夕刊コラム「ここだけの話」で書いた「電子政府を拒むもの」について読者の反応は様々だ。

 「IT問題も、まずITありきと言った議論が多すぎる」というお叱りもあり、逆に自らの経験を例に取り「役所は本気でITを導入するつもりなのか?」と怒りを露にするメールもある。

 ITの限界は承知しているが、便利なものは使うべきだ、というのが僕の意見。

 意見が分かれた「電子政府を拒むもの」は1日更新で、このホームページでも読める。 毎日新聞を読んでいない方、ぜひ読んでほしい。

 「たいとう診療所」でリハビリをしてから出社。

 昼飯は神田駅北口の「きくかわ」で鰻にした。東京1大きい鰻を出す店である。

 長さ約20センチ。重箱からあふれ、尻尾のところを折り返す。

 この店では(い)が並で2500円、(ろ)が3000円、(は)3500円。

(い)でも食べ切れないほどのボリューム。値段は高いが、満足感、保証する。

 大きさで、ここと勝負になるのは新潟の瓢亭ぐらいだ。(うまい、まずい、の判断では、大森の「野田岩」、日テレ近くの「秋本」……とうまいところは、数えたらきりがない)

 疲れた時は鰻。夏の終わりは鰻だ。

 勤め先で来客をさばいて「うま小屋」(夕刊の「馬うまランド」の編集部)に顔を出すと、テレビでは競輪の「ふるさとダービー・IN福井」の中継。

 「ふるさと」のネーミングが好きで、必ず車券を買うのだが、鰻を食べたこともあって、小遣い、ままならず、600円だけ投資する。

 最終レース。神山が出ない。吉岡が絶不調。となれば渡辺晴智で頭は固い、と見て、ささやかな600円博打。

 300円賭けた「枠復2−6」が1300円の中穴で鰻代が出た。鰻はカンを働かせる。

 夕方、日本記者クラブ記者研修会の懇親会。

 約70人の若手一線記者が、この日、韓国大使館を訪ね、南北会話の裏側を”研修”した。どちらかと言うと、地方紙の記者が多いから、外交の舞台を取材する機会は少ないから勉強になったろう。

 先輩記者として懇親会に参加した当方だが、逆に彼らから韓国事情を取材する。

 韓国の新聞は署名入り。署名の後にEメールが必ず印刷される、と聞き、唖然とする。

 議論が好きなお国柄だから想像できるが、もし日本でそうなったら、どうしよう。気が弱い人間は記者になれなくなる。

 若手記者に昨今の永田町の話を聞くと「少し前まで、野中広務さんがキングメーカーのような感じだったが、今や、森さんに『止めてもらう』と言えるのは神崎武法さんだけですよ」と本音を言ってくれた。

 なるほど、なるほど。

 これは理屈ではなく、実感なのだろう。

 選挙に負けた公明党が新しい首相を選ぶとしたら……。

 日本は妙な国になった。

<なんだか分からない今日の名文句>


家に鼠、国に盗人、自民に友党